13歳からの夏目漱石2017/04/09 17:27


13歳からの夏目漱石
           小森陽一,13歳からの夏目漱石。2017年3月,かもがわ出版。

 漱石の作品を時代背景とともに語ったものです。帯にあるように「そうだったんだ!」と唸ってしまう内容です。

 1905(明治三十八)年に発表された「吾輩は猫である」について述べているところは感心することしきりです。
 主人公の猫に名前がないこと,友達の猫の名前が,軍人の家で飼われている「白君」,となりの「三毛君」,車屋の「黒君」となっていることが意味しているものは何か。その他,時代背景を頭に入れて考えると,この小説が単なるユーモア小説でないことが浮かび上がってくるという趣向です。

 以下,それぞれの作品の時代背景から作品を読み解いていきます。そこまで読むか,と思うところもありますが, 実践的な活動と並行して漱石を読み直したという著者の到達点が示されていると思います。

 『二〇〇五年から、あらためて百年という歴史的な距離を意識しながら、漱石夏目金之助のすべての小説を読み直すことが、私の日課になっていった。「九条の会」の憲法講演と漱石小説の読み直しは私にとって不可分の実践になった。その営みを一二年近く持続する中で、百年後の今だからこそしっかりと受けとめることのできる漱石の言葉と出会い直すことができると確信していった。』(同書,21ページ)

 この本の基本的内容は,2016年8月に長野市で中学生や高校生を聞き手として行った授業だそうです(本書,2ページ)。巻末には生徒達の感想が載せられています。
 
 74歳の私が読んでも面白い本です。


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