「深層崩壊に挑む」2015/08/03 10:07


土木學會誌第百巻第八号
土木學會誌第百巻第八号の特集です。表紙の背景は,熊本県の三角西港です。世界遺産「日本の産業革命遺産」の一つとなっています。


 地頭薗 隆・鹿児島大学農学部教授:深層崩壊とは?
 *深層崩壊の定義,特徴,形態,発生メカニズムなどについて九州の例を中心に述べています。

 千木良雅弘・京都大学防災研究所教授:深層崩壊の発生の場の予測
 *降雨による深層崩壊は,重力変形を被っている斜面で発生していることが明らかになり,発生場の予測が可能になってきています。地震による深層崩壊はやや複雑ですが,やはり重力変形を被っている斜面で発生しやすい傾向にあります。

 水野秀明・土木研究所火山・土石流チーム上席研究員:深層崩壊の発生の可能性のある領域の抽出
 *深層崩壊推定頻度マップなど,深層崩壊の危険度を探るために作成された図の手法についての説明です。今後はより狭い領域,つまり斜面レベルでの危険度評価を行うことを考えています。

 そのほかに,深層崩壊対策など7本の記事が載せられています。
 最後に,『「深層崩壊」についてより深く知るために』として書籍やウェブサイトが紹介されています。



厚沢部アスリートクラブ(厚沢部AC)2015/08/03 18:52

 北海道南西部の渡島半島西海岸,江差町の北隣に厚沢部町があります。人口4,000人ちょっとの町で,ジャガイモのメークィーン発祥の地であり,ヒバの北限,トドマツの南限です。

 この町に,小学生の陸上競技クラブ,厚沢部アスリートクラブがあります。7月25日(土)と26日(日)に千歳市青葉陸上競技場で行われた全道小学生陸上競技大会で,5年女子が400mリレーで圧勝しました。タイムは56秒94で,2位に2秒近い差をつけての優勝でした。

 この大会での厚沢部ACの成績は,下のようなものでした。

 5年女子 400mリレー:優勝 56秒94(去年の4年の時に続いて2連覇)
 5年女子 走り高飛び:8位 1m15
 3年女子 100m:3位 15秒91
 5年男子 走り幅跳び:3位 5m35


厚沢部アスリートクラブ
全道大会の報告をするメンバー
 練習の途中で,全道大会の報告を行いました。立って話をしているのは,5年女子400mリレーのアンカーを務めた笹木佑良さんです。

 このクラブの練習を見る機会がありました。
 びっくりしたのは,運動部特有の人を罵倒するような声が全くないことでした。次々と練習メニューをこなし,30分ごとに休憩を入れて,約1時間半の練習でした。

 もう一つ共感できたのは,全員が身体を動かす練習だったことです。2年生で区切っているように思いましたが,低学年は別のコーチが別メニューの練習を指導していました。

 少年野球が典型的ですが,レギュラー級は練習するけども低学年やレギュラーになれない子供は,練習を見学しているというのをよく目にします。

 自分の身体を動かして,だんだんと進歩していくのを実感することは,特に小さい子供にとっては大切なことだと思います。自分が上達しているのを実感できれば,練習も楽しくなります。

 こんなクラブが増えていけば,陸上競技も人気スポーツになるだろうと思いました。
 なお,厚沢部ACは,下のウェブサイトで紹介されています。
 ( http://www.nhk.or.jp/hakodate/kids/ )



国道274号沿いの露頭(その1)2015/08/10 20:14

 国道274号は,札幌市の北を東西に通る札幌新道と創成川道路の交点を起点として,釧網本線の標茶駅付近で国道391号と交差する道路である。
 途中,士幌町と本別町の間,茶路川と阿寒川の間が未完成である。延長は約366kmで北海道では最も長い国道であり,全国でも11位の長さである(以上,ウィキペディアと地理院地図による)。

 札幌新道の脇を通っている道は,札幌南インターチェンジの手前で東南東へ向かう。この付近からは,支笏火砕流堆積物の台地の上を走る。直線道路が続く。
 北広島市西の里の住宅街を過ぎた辺りから中期更新世野幌層群の野幌砂礫層の分布域となる。野幌丘陵の南端付近である。

 多少カーブしながら千歳川,旧夕張川の低地へと降りていく。千歳川を渡った辺りから長沼町「マオイの丘公園」のやや先まで,約13kmの直線道路となる。一部泥炭地を含む「沖積層」の分布域である。

 マオイの丘公園付近は中期更新世の広島砂礫層で,馬追丘陵は背斜構造となっているので,東に行くにしたがって古い地層が分布している。丘陵の中心部は,前期中新世の川端層である。


北海道長沼町泉郷断層
写真1 馬追丘陵の泉郷断層
 中央の深鉢を伏せたような丘の右側を泉郷断層が通っている。丘の麓には鉱泉がある。この場所は,国道274号から南に下がった国道337号沿いである。

 坂を下って夕張川流域に入る。JR室蘭線の跨線橋を渡り,夕張川を渡ると川端層の分布域となる。ここでは,千鳥ヶ滝の露頭が見ものである。滝の上公園の信号を左に曲がって駐車場に入り,少し歩くと吊り橋から露頭を見ることができる。

 滝の上公園は,よく整備された公園で,園内を散策すると気持ちが落ち着く。
 なお,滝の上公園の手前に「夕張市農協銘産センター」の駐車場があるが,ここのトイレは使用できない状態となっている。


千鳥ヶ滝
写真2 千鳥ヶ滝の川端層
 砂岩泥岩互層で,地層の底面には流れの痕跡であるソールマークが見られる。現在は,露頭に近づくことはできない。


滝の上公園
写真3 滝の上公園の散策路
 散策路には夕張川を跨ぐ二つの橋がある。この林床は,苔が一面に生えている。


滝之上発電所
写真4 滝之上発電所
 滝の上公園入口付近にある発電所で,1924(大正14)年に北海道炭礦汽船株式会社の自家発電所として建設された。現在は,北海道企業局が運営・管理している。

 千鳥ヶ滝を過ぎた辺りから,「紅葉山図幅」の範囲になる。この付近は新第三紀中新世最下部の滝の上層とされている。そして,道東自動車道・夕張IC付近から古第三紀層となり,紅葉山層,幌内層,石狩層群が出てくる。夕張IC のやや先で夕張川の対岸に見える崖は,滝の上層あるいは紅葉山層である。

 登川トンネルを過ぎて,むかわ町に入る。この付近から稲里トンネル付近までは後期白亜紀の砂岩泥岩互層(上部蝦夷層群)が広く分布していて,地すべりの宝庫となっている。道路は地すべり地を縫うように通っているが,『地理院地図』で「サヌシュベ川」と書かれた付近の,東に凸の緩いカーブは,地すべりの押え盛土工によってできたカーブである。道路沿いに目立った露頭はない。

 稲里トンネルは長さ約1.4kmで,西側から上部蝦夷層群の泥岩類,前期中新世滝の上層の泥岩・砂岩,神居古潭変成帯の泥質片岩(ハッタオマナイ層)と蛇紋岩が分布している。このトンネルは,1979(昭和54)年に導坑でNATM工法の試験施工を行い,その後,本格的なトンネル掘削を行った。

 穂別福山で鵡川を渡る。この先,占冠へ向かう道々占冠穂別線の交点付近まで,神居古潭変成帯で泥質片岩と蛇紋岩が広く分布している。
 国道から外れるが,穂別福山から鵡川沿いに南へ延びる道々占冠穂別線の「八幡の大崩れ」は一見の価値がある。
( http://www.geosites-hokkaido.org/geosites/site0402.html 参照)。
 道々は「大崩れ」のすぐ先で通行止めとなっている。
 遠望するだけであれば,274号の最初のヘアピンカーブの手前から見ることができる。


八幡の大崩れ
写真5 八幡の大崩れ遠望
 左端の尾根の先端に崩壊地が見える。国道274号福山大橋先のヘアピンカーブ手前から見たものである。この崩壊地は,蛇紋岩体の中心付近に位置する。一番右の尖った山頂は,坊主山で蛇紋岩体中の緑色岩である。


夕張岳遠望
写真6 オコタン橋手前から見た夕張岳
 オコタン橋手前に小さな駐車帯がある。ここに車を駐めて,やや札幌側に戻って北を見ると夕張岳が見える。夕張岳の山頂は蛇紋岩メランジュ中の高圧変成岩のブロックである。

 穂高トンネルを過ぎ,ヘアピンカーブを曲がった先に道々占冠穂別線がある。この道々の赤岩橋からの赤岩青巌峡の眺めもよい。赤岩橋を渡ったトンネル入口のすぐ右に小さな露頭がある。おそらくハッタオマナイ層中の凝灰岩のブロックと考えられる。非常に硬質で赤岩トンネル掘削時には,赤岩青巌峡崖面の落石を懸念して割岩(かつがん)工法で施工した。


赤岩青巌峡
写真7 赤岩青巌峡
 勝手に解釈すれば,赤岩というのは赤色チャートのブロックで,青巌というのは緑色岩類のブロックである。南に流れてきた鵡川が赤岩橋のところで西に流路を変える。赤岩青巌峡の南側にはチャートの転石が多く,北側は緑色岩のブロックが多い。赤岩橋から下流を見る。


粘土状蛇紋岩
写真8 粘土状蛇紋岩
 赤岩橋の上流側左岸の崩壊状況である。道東自動車道の穂別トンネル,占冠トンネル,道々占冠穂別線の赤岩トンネルなどは難工事であった。これらのトンネルと違い,この粘土状蛇紋岩の地山を掘削したのが,タンネナイトンネルである。一時は,トンネルが掘れるのかという声も出たと聞いているが,無事貫通した。

 日高町の手前の最後のトンネルが,日高トンネルである。このトンネルの完成は1974(昭和49)年である。おそらく樹海ロードで最初に完成したトンネルである。断面が小さく走行には注意が必要である。

 日高町の道の駅「樹海ロード日高」には,日高山脈博物館がある。地質を専門とする学芸員がいるし,登山情報を得ることができるので立ち寄ってみるのがよい。
( http://www.town.hidaka.hokkaido.jp/hmc/ )

(その2へ続く)


国道274号沿いの露頭(その2)2015/08/12 15:38

 日高町の「道の駅」の前の信号を直角に曲がり沙流川を遡る。しばらく直線道路である。この付近は,西から中新世のニニウ層,上部〜下部蝦夷層群が分布している。

 キロ程125.5km付近に右に入る道路がある。これを行くと,すぐ沙流川に架かる岩石橋を渡る。この橋から上流を見ると右岸(左側)に露頭が見える。これが,「岩石橋の“下部蝦夷層群”タービダイト」の露頭である。
( http://www.geosites-hokkaido.org/geosites/site0487.html )


岩石橋の下部蝦夷層群
写真9 岩石橋の下部蝦夷層群
 蝦夷前弧海盆に運ばれた最初期のタービダイトである。砂岩層が非常に厚いのが特徴である。ごつごつしているのは,砂岩の間に泥岩類が挟在しているためである。沙流川を渡る手前に頭首工へ行く道路があり,河床へ降りることができる。


下部蝦夷層群タービダイト
写真10 ダービダイトの状況
 最大厚さ1mほどの砂岩層と10cmほどの泥岩層が互層している。走向・傾斜は,N60°W,80°NE である。層理面の底が見える箇所では,ソールマークが観察できる。

 千呂露川を渡りパンケヌーシ林道入口の対岸に岩脈状の露頭がある。よく見ると,対岸の斜面や尾根付近にも同様の露頭があるのが分かる。
 これは,ジュラ紀末頃に形成された玄武岩で,付加体堆積物中のブロックとされている。「千呂露図幅」では,輝緑岩質岩としている。この露頭の上流側には中部蝦夷層群の頁岩類の露頭が見える。


イドンナップ帯玄武岩
写真11 ジュラ紀末頃の玄武岩露頭
 この玄武岩露頭付近から東側は,「千呂露図幅」で日高累層群としている地質が分布している。イドンナップ帯である。ウェンザル林道入口の二ノ沢(国道の滝の沢トンネル)付近までがイドンナップ帯で,嶺雲大橋付近にポロシリオフィオライトの北のしっぽ(角閃岩とされている)が分布している。

 パンケヌーシ川にかかる占瀬橋を過ぎた付近から両岸が迫ってくる。キロ程135.5kmの対岸にも岩峰状の露頭が見える。「千呂露図幅」から読み取ると,針のように尖った露頭は,ジュラ紀末の玄武岩類(輝緑岩質岩)で,上流側の丸い尾根の露頭はチャートであろう。


玄武岩とチャート
写真12 ジュラ紀末頃の玄武岩とチャートの露頭
 左の尖った岩峰は玄武岩で,右の丸い尾根はチャートと考えられる。双岩橋手前の135.5km付近に林道があるので,そこに車を駐めるとゆっくり観察できる。

 滝の沢トンネルを過ぎた辺りから両岸が開けてくる。日高変成帯の分布域になる。国道沿いには,ミグマタイト質岩,斑れい岩質岩,花こう閃緑岩,泥質片岩などが,ほぼ南北の伸びを持って分布している。ただし,道路改良に伴い切土のり面工が行われたため,道路沿いでは露頭はほとんど見られない。

 日勝トンネルを過ぎ,しばらく行った最初のヘアピンカーブを過ぎたところで,突然「日勝第一展望台」が現れる。駐車場に車を止めて,階段を上って尾根まで行くと展望台がある。現在,展望台は使用できない状態である。
 しかし,尾根上には花こう岩の露頭がある。古第三紀末に形成された花こう岩で,尾根の先端部で風化に絶えて残った岩塊であろう。


日勝第一展望台花こう岩
写真13 日勝第一展望台の尾根に残る花こう岩
 やせ尾根の先端にある花こう岩で,風化により脆弱部が流失しコアストーンが残ったものと考えられる。

 ヘアピンカーブを二つ通過すると緩い傾斜の直線道路となる。この付近の平均傾斜は約1.5° と非常に緩やかである。
 地理院地図で見ると良く分かるが,緩やかな斜面が尾根状になっていて,両側に沢がある。この地形が,最終氷期に形成された山麓緩斜面に特徴的なものである。寒冷期の凍結融解により土砂が移動したために緩い斜面が形成され,その後の温暖期に沢が発達して形成されたものと考えられる。


十勝清水の山麓緩斜面
写真14 十勝清水IC手前の緩斜面
 十勝清水IC手前,約4km付近の緩斜面である。この緩斜面の写真を上手く取るのは難しい。

 清水町で国道38号と交差し,十勝川を渡って台地に登って行く。この台地の基盤となっているのは,熊牛層と呼ばれる中期更新世の地層で,シルト岩を主体として溶結凝灰岩が挟在している。台地そのものは,中期更新世の高位段丘である。


池田層上部
写真15 然別川右岸の露頭
 比高50mほどの段丘崖に見られる堆積物。「中士幌図幅」では池田層群最上部の地層と第1段丘堆積物となっている。

 鹿追町に入ると段丘堆積物の上位に後期更新世の然別火山の火砕流堆積物が分布している。
 士幌町で,帯広と弟子屈を結ぶ国道241号と交差して,その先は一時途切れる。

(とりあえず,これで終了)



デジタル一眼レフカメラ2015/08/26 16:41

 遅ればせながら,デジタル一眼レフカメラの難しさを実感しています。

 最初に買った一眼レフカメラは,ペンタックスSPでした。踏査で沢に落ちレンズをダメにしたり,ぬかるんだ現場で転んで首にかけていたSPで肋骨を折ったりしました。最後はシャッター膜が動かなくなり,泣く泣くペンタックスMZ-3 に変えました。これは,現在も使用できる状態です。デジタル一眼に比べるとその軽さにびっくりします。

 フィルムカメラの一番良いところは,電池がなくても撮れると言うことでしょう。目で見た明るさにあわせて絞りとシャッター速度を設定すれば,それほど失敗しないで撮ることはできます。

 2010年10月までMZ-3 を使っていましたが,便利さと現像代の高さに負けてペンタックスのK-7 を買いました。この時,すでにK-5 が出ていましたが,費用のこともありK-7 にしました。負け惜しみの理由としては,「K-7の方が,ペンタックスブルーがきれいに出る」というネット上での評価でした。

 仕事の時はあまり考えないで,失敗の少ない「P」(ペンタックスではハイバープログラムと言います)で撮っていて,それほど失敗はありませんでした。ペンタックスには,このほかに「グリーン」というフルオート設定があります。
 ただし,藪漕ぎをしたり崖をよじ登ったりするときにカメラの背面のボタンを押してしまい,気がついたら真っ暗な写真だったり,真っ白に近い写真だったりと失敗もしました。


アンダーな写真
いつの間にかアンダーに設定されてしまった写真。
 アンダーなら,まだ救われますが,オーバーになった写真はどうしようもない感じです。

 少し良い写真を撮ろうと勉強しはじめたら,絞り優先で撮るのが良いと書いてありました。それで,やってみると結構難しいものだと言うことが分かりました。
 設定することが多すぎるというのが正直な感想です。

 基本的なことを頭に入れた上で,RAWの加工までマスターしたいと思うこの頃です。

 余談ですが,白籏史朗氏の「白旗史郎の山岳写真テクニック」(1977,山と渓谷社)は,フィルムカメラ時代の本ですが,山岳写真の基本を学ぶには非常に優れた本です。
 1999年に「白籏史朗の山岳写真撮影テクニック」(山と渓谷社)も出ています。


 デジタル一眼レフカメラでの写真の撮り方の基本は,中井精也(Nikon College 監修)の「世界一わかりやすい デジタル一眼レフカメラと写真の教科書 改訂版」(2014,インプレス)が,たしかに分かりやすいです。DVDが付いています。