国道274号沿いの露頭(その2)2015/08/12 15:38

 日高町の「道の駅」の前の信号を直角に曲がり沙流川を遡る。しばらく直線道路である。この付近は,西から中新世のニニウ層,上部〜下部蝦夷層群が分布している。

 キロ程125.5km付近に右に入る道路がある。これを行くと,すぐ沙流川に架かる岩石橋を渡る。この橋から上流を見ると右岸(左側)に露頭が見える。これが,「岩石橋の“下部蝦夷層群”タービダイト」の露頭である。
( http://www.geosites-hokkaido.org/geosites/site0487.html )


岩石橋の下部蝦夷層群
写真9 岩石橋の下部蝦夷層群
 蝦夷前弧海盆に運ばれた最初期のタービダイトである。砂岩層が非常に厚いのが特徴である。ごつごつしているのは,砂岩の間に泥岩類が挟在しているためである。沙流川を渡る手前に頭首工へ行く道路があり,河床へ降りることができる。


下部蝦夷層群タービダイト
写真10 ダービダイトの状況
 最大厚さ1mほどの砂岩層と10cmほどの泥岩層が互層している。走向・傾斜は,N60°W,80°NE である。層理面の底が見える箇所では,ソールマークが観察できる。

 千呂露川を渡りパンケヌーシ林道入口の対岸に岩脈状の露頭がある。よく見ると,対岸の斜面や尾根付近にも同様の露頭があるのが分かる。
 これは,ジュラ紀末頃に形成された玄武岩で,付加体堆積物中のブロックとされている。「千呂露図幅」では,輝緑岩質岩としている。この露頭の上流側には中部蝦夷層群の頁岩類の露頭が見える。


イドンナップ帯玄武岩
写真11 ジュラ紀末頃の玄武岩露頭
 この玄武岩露頭付近から東側は,「千呂露図幅」で日高累層群としている地質が分布している。イドンナップ帯である。ウェンザル林道入口の二ノ沢(国道の滝の沢トンネル)付近までがイドンナップ帯で,嶺雲大橋付近にポロシリオフィオライトの北のしっぽ(角閃岩とされている)が分布している。

 パンケヌーシ川にかかる占瀬橋を過ぎた付近から両岸が迫ってくる。キロ程135.5kmの対岸にも岩峰状の露頭が見える。「千呂露図幅」から読み取ると,針のように尖った露頭は,ジュラ紀末の玄武岩類(輝緑岩質岩)で,上流側の丸い尾根の露頭はチャートであろう。


玄武岩とチャート
写真12 ジュラ紀末頃の玄武岩とチャートの露頭
 左の尖った岩峰は玄武岩で,右の丸い尾根はチャートと考えられる。双岩橋手前の135.5km付近に林道があるので,そこに車を駐めるとゆっくり観察できる。

 滝の沢トンネルを過ぎた辺りから両岸が開けてくる。日高変成帯の分布域になる。国道沿いには,ミグマタイト質岩,斑れい岩質岩,花こう閃緑岩,泥質片岩などが,ほぼ南北の伸びを持って分布している。ただし,道路改良に伴い切土のり面工が行われたため,道路沿いでは露頭はほとんど見られない。

 日勝トンネルを過ぎ,しばらく行った最初のヘアピンカーブを過ぎたところで,突然「日勝第一展望台」が現れる。駐車場に車を止めて,階段を上って尾根まで行くと展望台がある。現在,展望台は使用できない状態である。
 しかし,尾根上には花こう岩の露頭がある。古第三紀末に形成された花こう岩で,尾根の先端部で風化に絶えて残った岩塊であろう。


日勝第一展望台花こう岩
写真13 日勝第一展望台の尾根に残る花こう岩
 やせ尾根の先端にある花こう岩で,風化により脆弱部が流失しコアストーンが残ったものと考えられる。

 ヘアピンカーブを二つ通過すると緩い傾斜の直線道路となる。この付近の平均傾斜は約1.5° と非常に緩やかである。
 地理院地図で見ると良く分かるが,緩やかな斜面が尾根状になっていて,両側に沢がある。この地形が,最終氷期に形成された山麓緩斜面に特徴的なものである。寒冷期の凍結融解により土砂が移動したために緩い斜面が形成され,その後の温暖期に沢が発達して形成されたものと考えられる。


十勝清水の山麓緩斜面
写真14 十勝清水IC手前の緩斜面
 十勝清水IC手前,約4km付近の緩斜面である。この緩斜面の写真を上手く取るのは難しい。

 清水町で国道38号と交差し,十勝川を渡って台地に登って行く。この台地の基盤となっているのは,熊牛層と呼ばれる中期更新世の地層で,シルト岩を主体として溶結凝灰岩が挟在している。台地そのものは,中期更新世の高位段丘である。


池田層上部
写真15 然別川右岸の露頭
 比高50mほどの段丘崖に見られる堆積物。「中士幌図幅」では池田層群最上部の地層と第1段丘堆積物となっている。

 鹿追町に入ると段丘堆積物の上位に後期更新世の然別火山の火砕流堆積物が分布している。
 士幌町で,帯広と弟子屈を結ぶ国道241号と交差して,その先は一時途切れる。

(とりあえず,これで終了)