平成27年度 環境・地質研究本部 調査研究成果発表会2015/05/26 09:54

 2015年5月20日,午後1時半から午後5時まで,表記発表会が開かれた.
 7件の口頭発表と12件のポスター発表があった.口頭発表は,いろいろな分野にわたっていて,津波堆積物調査,海岸浸食,海底活断層調査,火山内部構造調査,鉱山廃水浄化,有害掘削ズリ処理などである.
 ポスター発表では,2015年4月24日に発生した羅臼町幌萌海岸の地すべり調査の速報が注目された.


秋田藤夫氏
写真1 開会の挨拶をする秋田藤夫氏(地質研究所所長)

 興味を引いた発表について述べる.

(1)津波堆積物調査チーム(川上源太郎氏・地域地質部主査)
 日本海沿岸からオホーツク海沿岸にかけての津波堆積物調査では,奥尻島や檜山の乙部町のトレンチ掘削で複数の津波堆積物が確認された.特に,奥尻島では泥炭層中に4層の津波堆積物があり,さらに2層の津波堆積物が検出されている.この中で,13世紀の津波堆積物は,1993年の北海道南西沖地震を上回る規模と推定され,日本海側での津波防災を考える上で重要であろう.
 オホーツク海沿岸については,確実な津波堆積物は検出されなかった.

(2)内田康人氏(資源環境部主査)ほか
 十勝平野の東縁には,十勝平野断層帯がある.その南部は光地園断層と呼ばれ,太平洋に伸びていると予想される.十勝港から南南東の海域で高分解能地層探査装置によって浅い部分の堆積構造調査を行った.
 その結果,西に傾斜した反射面が検出された.この構造は,光地園断層の延長部の撓曲変形の可能性がある.

(3)「十勝岳」調査チーム(岡崎紀俊氏・地域地質部研究主幹)
 十勝岳では2006年頃から山体の変位が火口の膨張を示す西向きに変わって,2015年までに累積で約30cmの水平変位と約20cmの隆起が観測されている.また,膨張が進行している火口域では,重力値の減少がみられる.
 その他の現象とあわせ,今後,集中的な地質学的調査を行う計画である.


大津 直氏
写真2 発表する大津 直氏(資源環境部研究主幹)

 ポスター発表も力作揃いであった.去年8月の礼文・稚内の斜面災害,壮瞥町上久保内の地すべり変動,iBooks Autherを用いて作成したiPad用地質巡検案内書など興味を引いた.
 地質研究所の新人紹介は,素晴らしい企画だと思った.

 なお,活断層に関して,「活断層からどの程度離して構造物をつくったら良いのか」という質問が会場から出た.
 これについては,サンアンドレアス断層を抱えるカリフォルニア州が,活断層から50フィート以内に人が住む建物の建設を制限している例が有名である.
 国内では,横須賀市が土地利用の仕方を変更し,活断層の両側25mには建築物を建てないで公園や駐車場とすることを実施している.
 ダムでは,ダムから300m以内に活斷層がないことをダム軸選定の条件としている.
 原子力発電所では,活断層の露頭の上には重要施設を置いてはならないとしている.

 下記のウェブサイトを参照のこと.
(http://www.asahi-net.or.jp/~gf7m-isi/active_fault.html)


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