家族のもとへ、 あなたを帰す2012/09/27 10:28




 地質屋は,津波堆積物の調査を通じて過去に巨大津波があったことを明らかにしてきました.しかし,それが防災に活かされていなかったと言うのが,3.11の教訓の一つだと思います.


 副題にあるとおり,東日本大震災で亡くなった方の身元究明に携わった携わった歯科医師たちの証言と著者の解説からなる本です.

 3.11で亡くなった方の身元を確定するために,災害発生直後から行動を起こした歯科医師たち.
 特に,津波で亡くなった方は,瓦礫にぶつかって遺体が損傷していることが多く,服も身に付いていないことがあり,歯が身元確認の有力な証拠となります.ですから,捜索で見つかった遺体の口を開け,歯の状態をデンタルチャートに記録していくという仕事が大事なのです.この仕事に取り組んだ歯科医師たちには本当に頭が下がります.

 身元不明者の数が多いことで日本は特殊な国だそうです.毎年1,000体以上の身元不明者が見つかっていて,2万体以上の死者が「お骨」の状態で引き取り手を待っているという.「歯」による個人識別のシステムが構築されていない日本の現状です.

 200ページ少々の本ですが,様々な問題を提起していて重い内容の本です.

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