「シンポジウム 豊かな水を育む森林 水源林の役割」の感想 ― 2009/10/21 18:43

「豊かな水を育む森林 水源林の役割」が09年10月19日に札幌市教育文化会館で開かれました.
講演の中で私が興味深かったのは次の三つでした.
池部英明氏(南富良野町森林組合)の話は民有林の再生・保全・利用の報告でした.
南富良野町 落合の’内の沢’,幾寅(いくとら)の’内藤の沢’の民有林で,区域分けをして治山事業を展開し,そのうちの一つの区域で極相の森を作り出している.北海道の場合,トドマツ,エゾマツ,ナラ,シナノキなどの混交林が極相である.保全と利用では間伐・最低限の手入れでの保存,択伐による樹勢回復などを組み合わせて行っている.
梶 幹男(東大北海道演習林長・教授)は東大演習林が目指す『理想の森林』づくり」について講演しました.
東大演習林は1899(明治32)年に東大がもらい受けて農業と造林のための演習林として経営してきたもので,1958(昭和33)年以来,高橋延清林長が提唱した「林分施業法」を行い,森林の生長量に見合う収穫を持続的に行えるようになってきた.非常に身近なところで「ほぼ原生林」を見ることができる.
尾崎研一氏(森林総合研究所 北海道支所)はカラマツ人工林での昆虫類の多様性について講演しました.
カラマツは本州中部などが自生地で北海道では国内移入樹種である.一般に人工林では,下草とカラマツだけといった具合に植生が単調となるため生物多様性が保持できないとされている.日本の場合,人工林は全森林の44%を占め,北海道でも27%が人工林である.人工林に住む昆虫は種類が少ないけれどもかなり多様性に富んでいて,カラマツ林に広葉樹を導入する,大きな木と幼い木を混合させる2段林にする,古木を残すというような管理を行えば,十分,生物多様性を保持することができる.
森林を育てるという仕事はじつに息の長い仕事です.植林から伐採までの1サイクルの年数を50年から80年に延ばして収穫量を上げるという工夫もされています.一人の人の人生で1サイクルを見ることが難しいわけで,本当に頭が下がります.
NHK で放送した番組(「秩父山中・花のあとさき」)で.それまで畑だったところに木を植えて花を咲かせて,道を通る人に喜んでもらおうとしていた御夫婦が紹介されたことがありました.「畑を山に返すんだ」という思いで,使わなくなった畑に木を植え続けて亡くなったそうで,すでに名所になっているそうです.
地質学というのは非常に長い時間を扱っていて感動する事象がたくさんありますが,このような息の長い人の営みと言うのも感動します.
なお,持続的な森林の活用を実践している場所として北大苫小牧研究林があります.ここの林長を永く勤めた石城(いしがき)謙吉氏の「森林と人間ーある都市近郊林の物語ー」(岩波新書)は大変面白い.この研究林は苫小牧市民の憩いの場となっています.
<参考>
森林農地整備センターのウェブサイト
<http://www.green.go.jp/annai/aisatsu.html>
東大北海道演習林のウェブサイト
<http://www.uf.a.u-tokyo.ac.jp/hokuen/gaiyou/gaiyou.html>
北大北方生物圏フィールド科学センター
<http://www.hokudai.ac.jp/fsc/>
講演の中で私が興味深かったのは次の三つでした.
池部英明氏(南富良野町森林組合)の話は民有林の再生・保全・利用の報告でした.
南富良野町 落合の’内の沢’,幾寅(いくとら)の’内藤の沢’の民有林で,区域分けをして治山事業を展開し,そのうちの一つの区域で極相の森を作り出している.北海道の場合,トドマツ,エゾマツ,ナラ,シナノキなどの混交林が極相である.保全と利用では間伐・最低限の手入れでの保存,択伐による樹勢回復などを組み合わせて行っている.
梶 幹男(東大北海道演習林長・教授)は東大演習林が目指す『理想の森林』づくり」について講演しました.
東大演習林は1899(明治32)年に東大がもらい受けて農業と造林のための演習林として経営してきたもので,1958(昭和33)年以来,高橋延清林長が提唱した「林分施業法」を行い,森林の生長量に見合う収穫を持続的に行えるようになってきた.非常に身近なところで「ほぼ原生林」を見ることができる.
尾崎研一氏(森林総合研究所 北海道支所)はカラマツ人工林での昆虫類の多様性について講演しました.
カラマツは本州中部などが自生地で北海道では国内移入樹種である.一般に人工林では,下草とカラマツだけといった具合に植生が単調となるため生物多様性が保持できないとされている.日本の場合,人工林は全森林の44%を占め,北海道でも27%が人工林である.人工林に住む昆虫は種類が少ないけれどもかなり多様性に富んでいて,カラマツ林に広葉樹を導入する,大きな木と幼い木を混合させる2段林にする,古木を残すというような管理を行えば,十分,生物多様性を保持することができる.
森林を育てるという仕事はじつに息の長い仕事です.植林から伐採までの1サイクルの年数を50年から80年に延ばして収穫量を上げるという工夫もされています.一人の人の人生で1サイクルを見ることが難しいわけで,本当に頭が下がります.
NHK で放送した番組(「秩父山中・花のあとさき」)で.それまで畑だったところに木を植えて花を咲かせて,道を通る人に喜んでもらおうとしていた御夫婦が紹介されたことがありました.「畑を山に返すんだ」という思いで,使わなくなった畑に木を植え続けて亡くなったそうで,すでに名所になっているそうです.
地質学というのは非常に長い時間を扱っていて感動する事象がたくさんありますが,このような息の長い人の営みと言うのも感動します.
なお,持続的な森林の活用を実践している場所として北大苫小牧研究林があります.ここの林長を永く勤めた石城(いしがき)謙吉氏の「森林と人間ーある都市近郊林の物語ー」(岩波新書)は大変面白い.この研究林は苫小牧市民の憩いの場となっています.
<参考>
森林農地整備センターのウェブサイト
<http://www.green.go.jp/annai/aisatsu.html>
東大北海道演習林のウェブサイト
<http://www.uf.a.u-tokyo.ac.jp/hokuen/gaiyou/gaiyou.html>
北大北方生物圏フィールド科学センター
<http://www.hokudai.ac.jp/fsc/>