本の紹介:イワシと気候変動-漁業の未来を考える(川崎 健著,岩波新書)2009/09/16 21:39

 釧路では1987年に85万トンのマイワシの水揚げがあったが,1989年に突然,魚群が減り始め1993年を最後にマイワシの漁場は消滅した.
 南米太平洋岸にはアンチョベータ(フンボルト海流に分布するカタクチイワシ)の大漁場があり1970年には1,306万トンの漁獲量を記録した.ところが,1970年に漁獲量は突然激減した.

 このような急激な変化はどうして起こったのか.
 それは,レジームシフトが起こったからだというのが,この本の骨子である.
 「大気・海洋・海洋生態系から構成される地球環境システムの基本構造(レジーム)が数十年の時間スケールで転換(シフト)すること」がレジームシフトである.このシフトは一つの漁場だけでなく,太平洋と大西洋といった遠く離れた漁場でも発生するし,ある魚種の数が減少して別の魚種が増加するといった形でも現れる.
 ここから出てくる実践的な考え方は,持続的に漁獲を確保するには,レジームシフトで漁獲量が減少したときには資源保護を徹底させて次のレジームまで待つ必要があるが,増加傾向にあるときはそれほど規制する必要はないと言うことである.また,レジームシフトが全海洋で影響し合って発生しているので,現在の排他的経済水域による資源の囲い込みは漁業資源の確保のためには害になる.

 話は具体的で,多くのグラフが示されており大変説得力がある.魚に興味のある方はぜひ一読することをお奨めする.

【END】

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