本の紹介「チェンジング・ブルー」2008/12/11 11:39

地球科学者が書いた気候変動の本

 ようやく,地球科学者による気候変動についての分かりやすい本が出版された.「大河内直彦著,チェンジング・ブルー」(岩波書店,2,800円+税)である.

 1970年代半ば頃には「次の氷河時代がやってくる?」と言う記事が現れ,地球は寒冷化に向かっているのではと言われていた.しかし同じ頃,海洋大循環「コンベヤーベルト」を提唱したウォレス・ブロッカーが「気候変動ーわれわれは地球温暖化の崖っぷちにいるのか?」を発表した.

 エミリアーニが,浮遊性有孔虫殻の酸素同位体比を使って古海水温の変動から氷期・間氷期を明らかにした画期的な仕事の話から始まる.その発端となった,ユーリーのスイスでの講義に対する鉱物学者ニグリのコメントの逸話は科学上の発見がどういう風にしてもたらされるかを知る興味深い話である.

 ミランコビッチの日射量の長期的変化の理論的解明についても,彼の経歴を交えながら興味深い話を展開している.そして,インブリーによるミランコビッチ理論の復活とエミリアー二が送った論文がミランコビッチのファイルの中に残されていたという話も感銘を与える.

 ダンスガードやオシュガーによる最終氷期の急激な温暖期の発見は,気候が急激に変化するということを教えていて現在の温暖化議論に重要な示唆を与えている.

 氷河期の寒冷化・温暖化の原因の一つは海洋大循環の停止と再開が聞いていると言うことは共通の理解となっている.特に,ヤンガー・ドリアス期の寒冷化については,ローレンタイド氷床の融解水が巨大な湖を形成していて,それが一気に北大西洋に流入して海洋大循環が停止したことが引き金になったことは確からしい.

 それぞれの説明は内容が深く,出典を示し,分かりやすくリライトした図を用いている.また,気候変動に関わった研究者の写真も豊富である.
 さらに,50ページ以上にわたる注と参考となる文献が載せられている.
 まさに,気候変動の仕組みについて「問題の本質を理解したい人は,必読の一冊である.」(本書カバー裏の文言) 

【END】

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