本:AI・機械の手足となる労働者 ― 2025/03/20 19:17

モーリッツ・アルテンリート、小林啓倫(あきひと)訳、AI・機械の手足となる労働者 デジタル資本主義がもたらす社会の歪み。白揚社、2024年12月。
グーグルのシリコンバレー本社「グーグルプレックス」。という文章で始まります。
グーグルプレックスに勤める社員のほかに、となりの建物で働く「黄色いバッジ」の人たちがいます。現存するすべての書籍をデジタル化するというプロジェクトのために手作業で書籍をスキャンするために働いていた人びとです。「デジタル工場」で働く人たちです。
この本のテーマは、デジタル資本主義のもとで労働がどうなっているかを明らかにすることです。
アマゾンにおけるラストワンマイル配送労働者、「1日12時間、1週間休みなしでモンスターを殺し続けている」ゲーム労働者、家事・育児の合間にクラウドワークで働く女性たち、ソーシャルメディアのコンテンツモデレーターなどの実態が詳しく述べられています。
これらの労働者は世界各地に散らばっていますが、デジタル技術によって結びつけられた工場としてのプラットフォームで、細分化された仕事を瞬間的に請け負うという形で働いています。
デジタル技術の発展は多くの便利さをもたらします。しかし、それを支える労働者は、何の権利もない状態で時間に追われ、厳しく評価され働いているという実態がよく分かります。マルクスが生きていた時代の炭鉱労働者、チャップリンのモダンタイムスに出てくる機械工場の労働者と違わない状況に置かれているのです。
デジタル時代に生きるものとして知っておくべき内容の詰まった本です。