本の紹介:人類の起源 ― 2023/05/13 12:51

篠田謙一、人類の起源 古代DNAが語る ホモサピエンスの「大いなる旅」。中公新書、2022年2月初版、2023年3月12版。
現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカを出て全世界に広がったという筋書きに疑問を持っていましたが、この本を読んですっきりしました。
中央アフリカ周辺で生活していた現生人類は、約6万年前にアフリカを出ました。このことは、ほぼ確定です。しかし、その後5万年前頃までの現生人類の詳細は不明です。
シベリア西部・アルタイ地方のデニソワ洞窟からはネアンデルタール人やホモ・サピエンスの遺物、そして謎のデニソワ人の骨が見つかっています。さらに、デニソワ人とネアンデルタール人が交雑していた証拠が見つかっています。
というような話が満載で、現在、分からないことは何なのかも書かれています。昔習った北京原人やジャワ原人といった名前も出てきます。
人類揺籃の地アフリカの中での人類の移動、ヨーロッパに進出した人類、アジア集団がどのように成立したか、日本列島にどのように渡ってきたか、新大陸アメリカへの進出、が詳しく書かれています。
そして、「終章 我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこの行くのか−古代ゲノム研究の意義」は、現在の人種問題や嫌中・嫌韓といった問題が、いかに意味のないものかを説得力を持って語っています。
1年で12版を重ねたこの良書を多くの人が読んでくれればと思います。