本の紹介:ロボットと人間 ― 2021/12/02 10:13

石黒 浩、ロボットと人間 人とは何か。岩波新書、2021年11月。
ほぼ、現在進行中のロボット研究の紹介です。
ロボットを通して、人間に関する深い疑問に答える科学的側面と世の中で役立つ側面の両方から著者が取り組んできた研究が紹介されています。
ロボットに関する関心が失われないのは、「<人間は、人間を理解するために生きている>」(本書5ページ)ためだというのが著者の考えです。
そして、「人間の先に現れる、今の人間が目指すものは、<無機物の知的生命体>なのかもしれない」(本書250ページ)と言います。
ロボットで人の動きをスムースに行うために演劇に着目し、平田オリザ氏と協働した話は、ロボット研究の奥深さを感じさせます。科学の進歩には「文系」の視点が欠かせないことを示しています。特に、人間に関わる研究では、文理融合は研究が成果を上げるには必須であると思います。
この本の中に出てくる夏目漱石アンドロイド、アンドロイド「エリカ」、アンドロイド演劇「さよなら」、2体ロボットの対話などは、どんな風に動きどんな風に話すのかユーチューブで見ることができます。
話は変わりますが、セメントと砂と礫を混ぜて堤体を造っている秋田県・成瀬川の成瀬ダムでは複数の建設機械が無人自動運転できるシステムが導入されています。人が「苦役」から解放されるためにも自動化、ロボット化が進むことが必要でしょう。利益最優先ではなく、品質を確保しながら働く人が楽に安全に作業できる方向で開発が進めばと思います。