「トンネル技術者のための地盤調査と地山評価」発刊に伴う講習会(札幌会場)2017/01/26 11:31

 2017年1月24日(火)14時から16地40分まで,札幌市の北海道建設会館で表記講習会が開かれました.主催は災害科学研究所で,表記の本に関する全国で最初の講習会です.

 最初に災害科学研究所の理事長である松井 保氏(大阪大学名誉教授)が挨拶しました.
 災害科学研究所は,1934(昭和9)年の第一室戸台風で京阪神地方が大きな被害を受けたことを契機に,災害の防止・軽減に関する研究を行うことを目的として1937(章エア12)年に設立されました.現在,120人ほどの研究員を抱え,16の研究会が活動しています.
 その一つがトンネル調査研究会で,2001年,2009年に比抵抗高密度探査法の本を鹿島出版会から出しています.今回の本では,弾性波探査と電気探査など,幾つかの探査を組み合わせて精度を向上させる方法(複合探査)について述べています.地盤調査には限界・誤差があり複合探査によって確率論的な結論を出すことが必要ではないかと考えています.同時に,系統的な調査を行うこと,既存資料を蓄積し利用すること,トンネルに関しては切羽前方探査を発展させることが重要です.

 講習は,本の章立てに従って進められました.印象に残った内容を列挙します.

(1)弾性波探査のトモグラフィ解析では,理論走時が求められるので観測走時と大きく違わないことを確認する.また,弾性波の通り道を示す波線図が得られるので,弾性波がトンネル断面を通過しているかをチェックし弾性波速度の信頼性を確認する.
(2)弾性波探査と電気探査を行った場合,両者の値をマトリックス表示して地盤の性質を9つに分けることができる.
(3)トンネル施工中の探査では削孔検層を中心に,反射法弾性波探査を組み合わせて精度良く前方地質を把握することができる可能性がある.
(4)掘削が完了した区間で天端の挙動を計測すると切羽前方の弱線を予測できる.
(5)超長尺ボーリング(削孔長1,000m程度)によって,切羽のかなり前方の地質状況を把握できる.掘削方法も進歩している.
(6)ボアホール・スキャンに比べて廉価にできる工業用内視鏡による孔内観察は100mまで実施した例がある.
(7)山岳トンネルCIMを利用することで,切羽前方予測を行うことが可能であろう(予測型CIM).また,AIを利用することで前方探査の精度を上げることが考えられる.


松井保氏
写真1 講演する松井 保・災害科学研究所理事長(大阪大学名誉教授)

 午後の最初は,松井 保氏の特別講演「地盤の可視化技術とトンネル地山の事前評価」でした.
 地盤工学というのは,「群盲ゾウをなでる」のようなもので,様々な分野を総合しなければなりません.その一つの方法として「地盤の可視化」を考えました.トンネル調査・解析というのは地盤における「除荷問題」を解くことです.しかし,地盤についての十分な情報が得られないということも特徴です.そのために,地盤の可視化は不可欠と考えました.

 なお,多くの研究員を抱えて様々な分野の研究を行っている「災害科学研究所」については,以下のHPを見て下さい.
( http://csi.or.jp )
 鹿島出版会から発行されている同研究所の出版物は,アマゾンなどで「地盤の可視化」あるいは「トンネル技術者」で検索すると出てきます.


コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://geocivil.asablo.jp/blog/2017/01/26/8334194/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。