本の紹介:日本の沖積層 ― 2015/04/06 18:45

遠藤邦彦,日本の沖積層−未来と過去を結ぶ最新の地層−。冨山房インターナショナル,2015年3月。
沖積層は最も新しい地質時代の堆積物であり,多くの人が生活している場である。関東地方の沖積層を中心とした研究を行ってきた遠藤氏の集大成である。
内容的に非常に興味深いものであり,地質コンサルタント業務に携わっている技術者にとって重要な情報が盛り込まれている。
すべてを読み通したわけではないが,多くの人に読んで欲しいと思い,ここに紹介する。「第I部 日本の沖積層 概論」をまず読んで,詳細については,第II部の関心のある部分を読むというのも手である。
目次は次のとおりである。
なお,カラーの口絵が11葉,載っている。口絵11が関東平野の沖積層のまとめとなっている。また,「I−8 沖積層に関するQ&A」は,沖積層についての理解を助けてくれる。
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第I部 日本の沖積層−未来と過去を結ぶ最新の地層− 概論
I−1 はじめに
I−2 関東平野の特徴
I−3 沖積層の基底地形と層序の概要
I−4 溺れ谷の時代−カキ礁の発達−
I−5 関東平野中央部におけるLGM以降の海水準変動の復元
I−6 関東平野における沖積層の形成過程
I−7 沖積層研究の重要性
I−8 沖積層に関するQ&A
第II部 日本の沖積層−未来と過去を結ぶ最新の地層−
II−1 はじめに
II−2 関東平野の地形・地質の特徴
II−3 沖積層の層序−定義について−
II−4 沖積層の器−埋没谷−
II−5 中川低地・東京低地・東京湾の沖積層
II−6 マガキ礁の発達−溺れ谷の時代−
II−7 関東平野中央部におけるLGM以降の海水準変動の復元
II−8 東京湾北部〜中央部の沖積層
II−9 中川低地の沖積層(上部層を中心に)
II−10 利根川流路変遷と沖積層
II−11 関東平野における沖積層の形成過程
II−12 日本の海岸砂丘の形成史と風による粒子の運搬
II−13 沖積層をめぐる課題
II−14 沖積層研究の重要性
《回想》50年の歩みから
引用文献・参考文献
<資料>故小杉正人氏の業績
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関東平野の沖積層について詳しく述べられているが,遠藤氏も言っているように,これがそのまま全国の沖積層に当てはまるわけではない。日本列島は変動地帯であるため地殻変動の影響はそれぞれの地域で異なっているし,その地域にどのような河川が流れ込んでいるかによっても沖積層の様相は異なってくる。
ここでまとまられた事柄を参考としながら,それぞれの地域における沖積層研究が深化することが期待される。