土木学会誌表紙の地質露頭写真2014/01/05 20:18

 土木学会誌の2014年1月号の表紙は大規模海底地すべり露頭の写真です。房総半島先端の農業用道路の両切土斜面に現れたものです。道路は南北に通っていて,地すべりは南から北へ移動したようです。地すべり土塊の層厚は約20mで,上下には乱されていない層があります。

 2014年1月5日現在,この露頭写真を載せた土木学会誌の表紙,裏表紙は
http://www.jsce.or.jp/journal/thismonth/index.shtml
で見ることができます。

 この露頭の意義は二つあります。一つは,このような地質現象が,誰でも見ることができる形で現地に保存されていることです。このような露頭を実際に見ると地質現象の不思議さを感じることができます。
 もう一つは,露頭を長期に保存するために約6ヶ月かけて露頭表面へ塗る薬剤の耐性テストを実施し,「露頭保存工学」を進展させたことです。今後の露頭保存の参考になります。

 工事の発注者が独立行政法人森林総合研究所(当時は独立行政法人緑資源機構)で,露頭保全に理解があったこと,露頭の出現を独立行政法人産業技術総合研究所地質調査センターがいち早くつかみ,日本地質学会News誌(2007年7月)の表紙に露頭写真を載せて,露頭の地質学的意義を広く伝えたことなどの保存に有利な条件がありました。

 今回,土木学会誌の表紙を地質露頭の写真が飾ったことも特筆すべきこと思います。

<参考資料>(順不同)

土木学会誌,2014,第99巻,第1号,表紙および裏表紙.

日本地質学会 - 2011年度各賞受賞者受賞理由,日本地質学会表彰.
http://www.geosociety.jp/outline/content0103.html

角田 豊,2009,「大規模海底地すべり地層」の保全と活用.9ー11.
(インターネット検索で遭遇した文献。出典不明)

日本地質学会HP(http://www.geosociety.jp
TOP> e-フェンスター > 地質フォト > 地質フォト:地震が作り出した芸術:巨大乱堆積物

谷 祐治・田中謙次,2011,土と岩の強化保存剤を用いた露頭の保存対策.全地連「技術フォーラム2011」京都,039.
http://www.geonews.jp/geosurf/index.php?page=2&dir=46 に載っています。)

大黒 理・水野智仁,2010,貴重な海底地すべり地層の保存対策.農業農村工学会 水土の知 ,vol.78,No.5,434~435.
(この文献は見ていません。農業農村工学会誌>技術リポート>関東支部 です。)

本の紹介「自然景観の成り立ちを探る」2014/01/08 11:10

 「フィールド科学の入口(全10巻)」の一つとして刊行されたものです。シリーズには民俗学者の赤坂憲雄氏が関わっていることから分かるように,自然科学以外のフィールド科学が多く取り上げられています。


小泉武栄(こいずみ・たけえい)・赤坂憲雄(あかさか・のりお)編,自然景観の成り立ちを探る,2013年10月,玉川大学出版部。

 I 部は『「ジオエコロジー」の目で見る』と題して,小泉氏と赤坂氏の対談です。
 ジオエコロジーは,「自然景観や植生の分布を,地形・地質の成り立ちや自然史から説明する複合的な分野」と位置づけています。小泉氏がどのようにフィールドに接し研究を行ってきたかを具体的に語っています。フィールドノートをどのように使っているかと言ったことも語られています。

 II 部の最初は,岩田修二氏の「中国、天山山脈ウルプト氷河での氷河地形調査」です。
 氷河地形調査に出かけた時に持っていった機材一覧から平板測量で氷河の地形測量を行った話など,これも具体的な内容です。最初の調査から20年後に行った調査の結果と何が分かったかを述べています。

 次いで,平川一臣氏の「津波堆積物を、歩いて、見て、考える」です。
 2011年の東日本大震災の直後に調査に入り,過去の津波堆積物の露頭を見つけた話から始まります。津波堆積物を見つけるのには,どのような地形に注目するのかが述べられています。海岸段丘や砂洲と言った地形と津波堆積物の関係も興味深いものです。
 南海トラフの沈み込みによる大地震については,古文書を中心に周期や規模が明らかにされていますが,古い文書の無い北海道太平洋岸では良好な状態で残されている津波堆積物が巨大地震・津波解明の手がかりになります。北海道と三陸の両方の津波堆積物を関連づけて見直すことが超巨大津波の解明のために必要だと述べています。

 III 部は,次の5編からなっています。

 清水善和氏:小笠原の外来種をめぐる取り組み
 松田磐余氏:地震時の揺れやすさを解析する
 山室真澄氏:自然は私の実験室 宍道湖淡水化と「ヤマトシジミ」
 清水長正氏:風穴をさぐる
 管 浩伸氏:サンゴ礁景観の成り立ちを探る

 いずれも,フィールドにどう取り組んだかを具体的に述べたもので,さらに,どのような成果が得られたかを述べていて,分かりやすく面白い内容です。

 赤坂憲雄氏が編者紹介のなかで,「私の研究に衝撃をあたえた一冊」として民俗学の宮本常一の「忘れられた日本人」(岩波文庫)を挙げています。
 「私は長い間歩き続けてきた。そして多くの人にあい、多くのものを見てきた。」という宮本常一の生活は,フィールドワークそのものだろうと思います。

 切り口はやや異なりますが「フィールドジオロジー(全9巻)」(共立出版)があります。地質学の分野別に,フィールドでどのようなデータを集めるかを述べたものと言えます。

 地質調査などの実際を述べたものとしては,「テーチス海に漂う青い雲−若きフィールドワーカーたちの見聞録」(テーチス紀行集編集委員会,2011年1月,発行:いりす,発売:同時代社)があります。地質,氷河,森林,動物,民俗などの学術調査隊での経験を隊員であった人たちが述べたものです。

 この「自然景観の成り立ちを探る」は,自然から何を,どのようにして引き出すのかを教えてくれる優れた「フィールド科学の入口」です。多くの若い人に読んで欲しいです。


モエレ沼公園のクロカンコース2014/01/18 21:45

 モエレ沼公園も,かなり人がやって来るようになりました。昔は,ほんと寂しかった。

 あまり整備の状況は良くないですが,クロスカントリースキーのコースもあります。北西の風が強い時には,スキーが滑らなくなります。強い風に当たっている雪は,ほんとに滑りません。


写真1:スタートはガラスのピラミッドの脇です。まっすぐ行って,向こうの林の中に入っていきます。


写真2:遊具のある林の中のコースです。右手の松の間を抜けていきます。多少の凹凸があるくらいでほとんど平坦です。


写真3:林の中の緩い下りです。非常に気持ちの良い場所です。


写真4:松に囲まれたこんな所もあります。


写真5:夏の道路を横切ります。こんな坂でも,足に来ていると転ぶことがあるので要注意です。正面はプレイマウンテンです。


写真6:プレイマウンテンの裾を下ります。ここがいちばん急な下り坂です。地吹雪の時なコースが見えなくなり,結構怖いです。正面はモエレ山で標高61.7m,札幌東区で一番高いところです。このてっぺんからソリで滑るのは,ものすごく勇気がいります。


写真7:野球場のある方へと坂を登っていきます。だらだらとした200mくらいの長い坂です。


写真8:モエレ山へ向かって滑っていきます。


写真9:ゴールのガラスのピラミッドが見えてきました。このコースは,1周で約3kmです。


写真10:ガラスのピラミッドに鎮座しているイサム・ノグチのオンファロス(地球の中心:へそ)と言う彫刻です。真ん中の穴から水が少しずつ湧いてきて,花こう岩の表面をぬらしています。この花こう岩は,庵治石(あじ・いし)と言われるもので高松市の北東にある女体山周辺で採掘されている後期白亜紀(約8千万年前)の良質の領家花こう岩です。

真11:オンファロスの近景です。なかなか魅力的です。


国土地理院新版標準地図(25000)2014/01/27 18:21

 「地理院地図」が更新されています。
 2014年1月27日現在,北海道の場合,渡島半島の北緯42度までが新版になっています。太平洋岸では大船遺跡付近まで,小沼の南の端,日本海側は乙部町姫川と小茂内川の間までです。

 カラフルで見やすくなっています。地形には薄い陰影が施されているので,パッと見て地形が良く分かります。国道は橙色,道々などは黄色,その他は二重線です。人家は薄い橙色で目立ちます。
 そして,何よりうれしいのは,送電線が描かれていることです。ですから,現在のところ,北緯42度より北の旧版との境で送電線が切れています。

 早く,全道がすべて新版になると良いと思います。