どうする普天間基地問題 ― 2011/11/27 15:59
沖縄県の前宜野湾市長の伊波洋一氏と元内閣官房副長官補の柳澤協二氏の講演会です.コーディネーターは,かもがわ出版の松竹伸幸氏でした.
伊波氏は沖縄の歴史と現状を簡潔に述べました.
1972(昭和47)年に沖縄は日本に返還されましたが,基地の実態は占領前と全く変わりませんでした.運用はすべて米軍が行っているので,問題となっている普天間基地は,日本政府にとっては航空法上の飛行場ではないのです.これは1952(昭和27)年に締結された安保条約の条項がそのまま残ったためです.
普天間基地を空から撮影した写真をアメリカの議会関係者に見せると,「なぜ基地に隣接して住宅があるのか.誰が許可したのか.」と聞かれるそうです.すべてのアメリカ軍の飛行場に適用される安全基準があって,「滑走路の先4,500mに住宅,学校,病院,集会場などがあってはならない」とされています.普天間飛行場はこれを全く満足していないのです.日本政府はこのこと全く無視しているのです.
アメリカの国家予算を握っているのは連邦議会です.そこへの働きかけを行うことで事態の打開を図ろうと計画しているとのことです.
柳澤氏は,2004年から2009年まで,安全保障・危機管理担当の内閣官房副長官補を務めました.アメリカのイラク侵攻が始まったのが2003年3月で,陸上自衛隊の先遣隊がイラクに到着したのが2004(平成16)年1月です.柳澤氏の担当は日米ガイドラインの運用で,軍事と政治の接点の仕事でした.また,この間,2003年11月に第二次小泉内閣,2006年9月に安倍内閣,2007年9月に福田内閣,2008年9月に麻生内閣となり,2009年9月に民主党の鳩山内閣が成立しました.
現在の沖縄の世論を考えると,アメリカも基地を維持することが難しいと考えている部分もあります.イラクからアメリカ軍は撤退することを決めましたが,その理由の一つはイラクとの地位協定が締結できなかったことです.
現在のアメリカは,経済の立て直しが第一の課題となっています.それと軍事は当然結びついています.TPPでアジアの国を囲い込み,中国に対抗しようという目論見を持っています.その時に,沖縄というのは中国のミサイルの射程圏内に完全に入っていて,何かあった場合,真っ先につぶされると考えている可能性があります.いつでも逃げ出せる体制を取っていると考えられます.
日本政府の対応について言えば,橋本元首相あたりまでは本気で沖縄の状態を変えようという意志が感じられました.しかし,それ以後の内閣には,本気でやるという意気込みが感じられません.
その後の討論では次のような話が出ました.
短期的にアメリカの大統領選挙,野田内閣の寿命などが絡んでいて急には事態は動かないでしょう(柳澤氏).
日本政府としては,中国が軍事的に脅威であるとは言っていません.現在,もめている南シナ海についても中国は戦前の日本が支配していた地域を守ろうとしています.バランスを取って軍事力を縮小していく方向が良い(柳澤氏).
来年2月にアメリカ議会に働きかけを行う.アメリカは海外基地の予算削減の方向である(伊波氏).
そのほか,いろいろな話がなされました.開演のあいさつをした福地保馬氏(北大名誉教授),閉会のあいさつの河合博司氏(酪農学園大教授)とも,明るくて何となく希望の持てる講演会でした.

写真1:講演する伊波氏

写真2:講演する柳澤氏

写真3:ディスカッション風景

写真4:著書にサインする両氏
向こう側が柳澤氏,手前が伊波氏.
向こう側が柳澤氏,手前が伊波氏.