本の紹介:破壊する創造者2011/04/03 13:31




 イギリスの進化生物学者で医師であるフランク・ライアンによるウィルスの話です。
 分子レベルでの進化を解明することが医療への応用につながるという話ですが、その中でウィルスが生物の進化で果たしている役割に焦点を当てています。この本の英語の主タイトルは、"Virolution" です。VirusとEvolutionを合成した言葉です。

 生物進化の駆動力として、ダーウィンの自然選択、突然変異、遺伝子の三つを考慮したのが「進化の総合説」だそうです。進化の中でウィルスは宿主と共生していることがはっきりしてきていますが、「宿主の進化を促進させる最大の原動力」であるというのが、著者がこの本を書いた目的です。

 ヒトゲノムの構成は、タンパク質を合成するための情報を保持する機能遺伝子は全体の1.5%しかなく、人間に過去に感染したウィルスの名残とされる「ヒト内在性レトロウィルス」が9%、そのほかの90%近くが、何のために存在するのか分からないのだそうです。

 その他、ゲノムの水平移動とか分子進化学の難病への応用、ウィルスが進化で果たしている役割とか話題は豊富です。進化論、遺伝学の基的な知識を持って読むと、より理解が進むでしょう。