湿原保全の要点−感想−2006/11/03 17:58

千歳空港に降りる飛行機から見たウトナイ湖
 勇払平野にはトキサタマップ湿原やウトナイ湖周辺など湿原が広がっている.これらの湿原の周辺には道央自動車道,国道36号,日高自動車道,JR千歳線・室蘭線などが通っているほか,宅地化が進んで曙団地や沼の端の住宅などが分布している.勇払平野は当然泥炭地でありこれらの公共施設や住宅は地下水が低下すれば沈下を起こす.また,構造物の沈下を防止するための基礎工事も行われている.
 湿原の保護と人々の生活環境を守ることを両立させるために,洪水を発生させる勇払川の河道を切り替え,河川を掘削する代わりにその両側に鉄矢板を打設して湿地の水位低下を防ぐという工法が取られた.
 湿原は,多様な生物の生息地であり,水を貯留することにより気候を緩和し,水生植物によって水質浄化が行われ,遊水池の役割を果たして洪水防止にも一定の役割を果たす.このようなことから,1974年にサロベツ湿原(利尻礼文サロベツ国立公園),1987年には釧路湿原が国立公園に指定された.全国に28ある国立公園のなかで,湿原を目玉としているのは釧路湿原だけであるが,北海道には600km^2の湿原があると言われている.
 
 湿原の保全のために様々な試みが行われているが,問題は湿原を形成した周辺の地質環境である.勇払平野の湿原群は周辺に広がる支笏火砕岩類(降下軽石堆積物,火砕流堆積物)などの保水性の良い地質があって成り立っている.また,釧路湿原の背後には摩周や阿寒の火砕岩類が分布している.これらの地下水が枯れることなく流出することによって湿原が成り立っている.湿原保存ではこのような地下水の供給源を守ることも含めて行う必要があると考えられる.

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