トキサタマップ湿原2006/10/16 22:36

トキサタマップ転倒堰
トキサタマップ湿原 06年10月15日

 北海道苫小牧の東に広がる勇払平野にはウトナイ湖(ラムサール条約湿地)を始め多くの湿原がある.ウトナイ湖のすぐ西にあるトキサタマップ湿原は支笏火砕堆積物の中を流れ下ってきたとキサタマップ川が平地に出たところに形成された湿原である.この湿原のすぐそばには曙団地がありトキサタマップ川の南西にある勇払川の洪水に悩まされていた.そこで,勇払川の洪水対策として河川改修が計画されたが,河川改修による水位低下と湿原の保全という二者背反の課題に挑戦し見事にこれを解決した.その鍵になったのは,勇払川の流量に応じて水位を調節するトキサタマップ転倒堰であり,ウトナイ湖の出口に作られたウトナイ転倒堰である.
 湿原保全の難しさは,10cm単位の水位変動で植生が変わってしまうことで,ヨシやイワノガリヤス,ミツガシワと言った類は水深10cmほどの湿地が必要で,地下水が地表下10cmも低下してしまうとハンノキが進入してきて乾燥化が進行する.

 このような湿原を作るもととなっているのは,降下軽石堆積物や火砕流で構成されている支笏火砕岩類である.これらの中には,透水性の良いもの,ローム化して不透水層となっているものなどがあり,地下水涵養にそれぞれ役割を果たしている.

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トキサタマップ湿原の転倒堰2006/10/22 18:40

 トキサタマップ堰は流量に応じて水位調整が出来る転倒堰である.堰の上流側の水位を約4.5mに保ちトキサタマップ湿原の水位が低下しないようにしている.堰の下流側の水位は約3.0mで,約3km離れたウトナイ湖の水位は約2.0mである.堰上流の水位は左手にある局舎でコンピューターにより流量に応じて制御されている.
 対岸(西側)の堰の上流に渇水時に湿原に川の水を供給する水路の入り口が見える.この時は,逆に湿原の水が多く排水されていた.

トキサタマップ湿原(3)2006/10/22 18:54

 下流側から見たトキサタマップ堰.この下流右側(西側)にトキサタマップ湿原が広がる.

トキサタマップ湿原(4)2006/10/22 19:01

 改修された勇払川の流路.途中から暫定断面となり川幅が狭くなるが,洪水の心配はない.

トキサタマップ湿原(5)2006/10/22 19:02

 堰の上流から湿原に川の水を供給するための水路.泥炭から溶け出した鉄分で褐色に濁っている.水が豊富な時は湿原からの水が集まって来て堰の上流から流出する.