本の紹介:ハマスの実像 ― 2024/11/27 21:19

川上泰徳、ハマスの実像。集英社新書、2024年8月。
2006年1月のパレスチナ自治評議会選挙でハマスが過半数の議席を獲得しました。
2007年6月にハマスがガザを支配しました。同時にイスラエルがガザを封鎖します。この状況でハマスは貧困救済や孤児救済を行います。
16年後の2023年10月7日にハマスの軍事部門であるイッズディン・カッサーム軍団がイスラエル領に越境攻撃を行い、民間人を殺害し、捕虜を連れ去りました。
その後のイスラエルによるジェノサイドと思えるガザへの攻撃に対して、「西側諸国」はほとんど効果的な手を打てていません。それどころか、イスラエルが民間人を殺傷していることを知りながら軍事援助をしています。
この本では、パレスチナの歴史を通じて、ハマスが何故ガザを支配するようになったのか、何故ガザの人びとの支持を得ているのかを具体的に述べています。端的に言えば、ハマスの政治部門がガザで行ってきている住民の生活の安定のための色々な施策が支持されているのです。
そして、著者によれば『「犠牲を出し続けても、抵抗運動を止めない」というハマスのスタンスを、パレスチナ人の多くが共有しているということであろう。これだけの犠牲を出しても、イスラエルの占領を終わらせる戦いに意味と希望を見出すしかないというパレスチナの人々の思いを、ハマスやカッサーム軍団が担っているという構図が見えてくる。』ということになります。
「本書は、ハマスという日本人にとっては見えにくい存在、日本人が見ないようにしてきた存在をジャーナリズムの視点から、その実像に光を当てようとしたものである。」
ぜひ、多くの人に読んで欲しい本です。