気候変動についてのセミナー ― 2021/01/27 08:57
2021年1月13日(水)、オンラインで気候変動についてのセミナーが行われました。
タイトルは「環境研究総合推進費S-18 気候変動影響予測・適応評価の総合的研究第1回公開セミナー」で、原田守啓・岐阜大学教授が「豪雨・洪水への気候変動影響と治水を巡る社会情勢」というタイトルで講演し、質疑応答がありました。
近未来気候変動の予測、気候変動の影響評価技術、適応策の立案が主なテーマです。
気候変動予測は20kmメッシュで行いました。長良川では2004年に最大洪水を記録しました。それを受けて、河川計画者の計画に使えるモデルで気候変動を評価しました。その結果、100年に1度の洪水が、これまでより1.1~1.3倍に増えるという結果になりました。
日本の年平均降水量は1,800mmですが、あまり雨の降らない地域で災害が起こるようになっています。台風は勢力が強くなり、速度は遅くなって被害が大きくなります。
2019(令和元)年の東日本台風(台風19号)では、遙か南に台風があるのに豪雨に見舞われました。至る所で洪水が発生する「流域型洪水」になり、国交省の河川のうち140カ所で堤防が決壊しました。その80%が支流との合流点近傍で発生しました。
対策のための法令・予算としては、開発規制・小規模の集団移転・水害保険などに対応する位必要があります。
豪雨の際のダムの放流は、気象予測の精度が上がったために、うまく運用できた例があります。渡良瀬川の草木ダムでは1日前から放流を開始し、緊急放流をせずにすみました。木曽川支流の馬瀬川の岩屋ダムでは降雨の合間に放流をしました。
水害からの復興に当たっては、「単に地域を元の姿に戻すという原形復旧の発想に捉われず、土地利用のコントロールを含めた弾力的な対応により気候変動への適応を進める適応復興」(環境省、2020年6月30日)という考えが示されています。都市再生特別措置法では、災害レッドゾーンでは開発が原則禁止されています。
現場での具体的議論を踏まえ地域特性に合った対応が必要です。
この後、活発な質疑応答が行われました。いくつか議論を紹介します。
洪水に対処するには、河川管理で何処まで出来るのかをまず考え、それで対応できない場合、国土のつくり方(国土デザイン)を含めて考える必要があります。
気候変動による洪水が、1.1倍に増えると言うことが一人歩きしていますが、過去の実績と気候モデルを組み合わせて降る可能性のある雨の量を構築していくことが必要です。