日本学術会議会員の選出方法2020/10/27 17:09

 インターネットで日本学術会議に対する誤った見解が堂々と語られています.名の通った人がデマを掲載しています.日本学術会議のホームページを見れば,あり得ないような内容のものもあります.

 

 ところで,日本学術会議が1949(昭和二十四)年に発足した時の会員選出方法は「全国の科学者による選挙」でした.

1983(昭和五十八)年に日本学術会議法改正を巡る国会審議の中で,当時の中曽根康弘首相が「政府が行うのは形式的な任命に過ぎない」と答弁しています.法案審議の国会での答弁であると言うことが大事な点です.「憲法第四十一条【国会の地位・立法権】 国会は,国権の最高機関であって,国の唯一の立法機関である」と定められているのですから.この法改正で「学会ごとに候補者を推薦し,それに基づいて首相が任命する」ことになりました.

さらに,2005(平成十七)年に「学術会議の現役会員(210人)と連携会員(約2,000人)が推薦した候補を学術会議として105人に絞り首相が任命する」となりました.現在,この方法で会員が決められています.

 

私が大学院に在籍していた1970年前後は,「一定の資格を有する全国の科学者による選挙」で学術会議会員が決められていました.私も一度だけ投票した記憶があります.大学院生も条件に合致すれば投票権があったのです.私は北大物理学科の宮原将平教授(19314年〜1983年)に投票したように記憶しています.

 学術会議を「学者の国会」と誰が言い出したのか知りませんが,「科学者あるいは研究者の国会」というのが実態だったように思います.政府からの圧力で,これを次々と変えて現在の方法に落ち着いたのですが,次に来るのは政府が全員を任命するということしか残されていないように思います.学術会議の死です.

 

 全国大学院生協議会(全院協)では,梅垣 緑議長名で「《議長緊急談話》学問の自由を侵害する日本学術会議への菅首相による人事介入に抗議し、新会員の任命拒否撤回を要求するという声明を発表しています.この問題に対する大学院生の問題意識がよく分かる内容です.

https://www.zeninkyo.org

 全国大学院生協議会はフェイスブックでこの問題を扱っています.その中に,小林哲夫氏(ジャーナリスト)のコメントと1963年と1971年の新聞記事があります.学術会議は政府に対してキチンと意見を言う組織だったことが分かります.

https://www.facebook.com/zeninkyo/>10月2日の記事)

1963年の学術会議会長は朝永振一郎氏(理論物理学者:1906年〜1979年),1971年は越智勇一氏(獣医学者:1902年〜1992年)です.

これらの先達に負けないよう梶田隆章会長を中心に学術会議としての自立性を守ってほしいと強く願います.