本の紹介:日本語の考古学2014/10/13 11:20



今野真二,日本語の考古学。2014年4月,岩波新書。

 古い書物を丁寧に追いかけていくと日本語にかかわる知見が得られることがある。これは,ちょうど考古学者が遺物をきれいにした時に感じる感覚に似ているのではないかというのが,このような本の題名となった理由だと言う。

 万葉集に収められている歌は,声に出して歌われ,音声によってのみ伝えられていた時期があったはずである。万葉集が最初にできあがったのは,7世紀後半から8世紀初頭である。つまり,この頃,歌が文字化されたと考えられる。それは,柿本人麻呂の頃である。歌を書いたと思われる木簡が,難波宮跡から見つかっている。
 ここからは,現在残されている書物としての「万葉集」を丁寧に見ていく内容となる。

 目次は,以下のようになっている。それぞれに副題が付いているが省略する。

一 「書かれた日本語」の誕生
二 『源氏物語』の「作者」は誰か
三 オタマジャクシに見えた平仮名
四 「行」はいつ頃できたのか
五 和歌は何行で書かれたか
六 「語り」から「文字」へ
七 「木」に読み解く語構成意識
八 なぜ「書き間違えた」のか
九 「正しい日本語」とは何か
十 テキストの「完成」とは

 原本の写真が豊富に載せられていて,話が具体的である。ローマ字で書かれた天草版「平家物語」(1592年)の話,「書き間違い」から分かること,などの話は非常に興味深い。