せたな町太田神社 ― 2014/08/03 14:46
北海道渡島半島の日本海側にあるせたな町大成区には,北海道で一番古いとされる太田神社があります。
太田神社の拝殿は,帆越山トンネル北坑口の旧道脇に建っています。また,昔の灯台であった定灯籠が復元されています。
太田神社の本殿は,太田山の西斜面,標高350m付近の洞窟の中にあります。
帆越山トンネルの北坑口までの海岸線は白亜紀の花こう閃緑岩が分布していますが,ここから太田神社本殿の鳥居を経て太田の集落付近までは,粘板岩を主体とし砂岩やチャートを挟む地質で,ジュラ紀付加体の久遠コンプレックスと呼ばれる地層が分布しています。太田の集落付近は中新世の流紋岩を主とする地質です。
久遠コンプレックスは付加体堆積物であることと鉱化変質作用を受けて全体が脆くなっているために,浸食されやすく海岸線が緩く湾曲していると考えられます。
また,久遠の富磯から北檜山区太櫓の水垂岬までは海成段丘が残っていません。富磯付近ではmT7(約21.4万年前)と呼ばれる高位段丘とmT5e(約12.5万年前)と呼ばれる低位段丘があり,この地域の北の太櫓付近ではmT5e段丘のみが分布しています。
このような地質的な条件が太田神社本殿の崖をつくったと言えます。
写真1 帆越山と太田山
左が帆越山で,右の遠くが太田山と思います。帆越山を含めてこの付近の海岸は,白亜紀花こう閃緑岩の全面露頭です。太田山の海側の裾に旧道のロックシェッドが見えます。
写真2 花こう岩類らしからぬ節理が発達する花こう閃緑岩
写真3 帆越山トンネル北坑口
右に延びる道路は旧道で,太田神社の拝殿と定灯籠が海側にあります。
写真4 太田神社本殿への階段
この階段の怖いところは,全体に勾配が急で階段の幅が狭いことがまず挙げられます。それと同時に,この写真のしめ縄付近から上でさらに勾配がきつくなっているので,一層恐怖感が強くなります。この新しい門柱では「太田山神社」となっています。
写真5 上から見た階段
手すりと綱があるので何とかなりますが,怖いです。
階段のあとは,ひたすら登ります。綱がずっと付いているので大分楽です。女人堂を過ぎた付近から露頭が見えます。
写真6 最初の露頭
粘板岩と砂岩だろうと思いますが,御山ですので石を叩くわけにはいきません。堆積構造のほかに細かい割れ目が入っていて褐色化しています。
登ること約30分で最後の階段に到達します。
写真7 本殿手前の階段
ここからは,全面露頭です。この階段の左に本殿へ登る鉄輪の梯子があります。
写真8 最後の梯子
この鉄の輪を登って行った洞窟の中に本殿があります。よくもまあ,こんな洞窟を見つけたものだと感心します。
写真9 本殿下からの眺め
拝殿と定灯籠が見えます。
写真10 落石
露岩部は脆い岩盤で,今も落石が続いていていて沢に堆積しています。