本の紹介「連鎖する大地震」2013/12/03 10:26



遠田晋次,連鎖する大地震。2013年2月,岩波科学ライブラリー 204。

 2013年3月11日の東北沖地震(平成23年東北地方太平洋沖地震)以後,長野県北部(M=6.7 ),秋田県沖(M=6.4 ),静岡県東部(M=6.4)が,4日間で発生しています。このように,大地震に連鎖して地震が発生することは,明治三陸地震や1944年東南海地震などでも知られています。

 地震の連鎖がどうして起こるのかを,物理的な面も含めて述べています。目次は次のようになっています。

はじめに
1 東日本大震災の衝撃
2 ピラミッド型『地震組織』−巨大地震が支配する世界
3 傷だらけの日本列島
4 今後どうなる列島の地震活動
5 首都圏の地震危険度
おわりに−急がば回れ、わからないことを放置しない
参考文献

 2章の『地震組織』と言うのは,人間が作る組織のことではなく,数少ない巨大地震とそれに伴う数多くの中小の地震が発生するという地震の統計的性質を言っています。

 この本の目玉は,4章と5章でしょう。 東北沖地震で首都直下地震の発生確率が高まったと言います。その根拠が具体的に示されています。

 R.ゲラ−氏(東大理学部)の「日本人は知らない「地震予知」の正体」では,地震調査研究推進本部の「確率論的地震動予測マップ」が痛烈に批判されています。東北沖地震についても,「小雨を予想しただけなのに、「歴史的な巨大台風が訪れた。オレの予想は見事にあたった」というようなレベルの話」(162p)と述べています。
 確かに,内陸の活断層の評価も外れています。

 遠田氏の,この本の優れているところは,地震のメカニズムを含めて分かりやすく説明しているところです。
 東北沖地震を経験して,新たに分かってきたこともあります。被害を減少させるためにも,地震のメカニズムを明らかにすることが重要と感じます。