本の紹介:3.11後の放射能「安全」報道を読み解く ― 2014/04/15 20:20

景浦 峡,3.11後の放射能「安全」報道を読み解く 社会情報リテラシー実践講座,2011年7月,現代企画室。
2011年7月に初版第1刷が発行され,2013年9月に第3刷,1,000部が発行されている。著者が,この本を執筆していたのは,2011年5月頃までです。これだけ早い時期に,この内容のものを執筆していたことに驚きます。
報道を読み解くためには,記事の内容の基本的レベルを整理し把握しておくことが重要でと言います。つまり,
1)誰にとっても変わらない記述:定義や論理的言明,曖昧性のない事実に関する記述
2)「専門家」による「科学的」な知見や見解:科学にはまだ分からないことがたくさんあることを知っておくことが大事
3)社会的に合意されたり議論される見解:典型的な例は法律
4)状況や対象,行為に関する個人の判断や見解:「安全」という言葉はこのレベルに属する
5)個人の心理的な状態:「安心」は個人の心理的状態を指す言葉
一般の人の放射線被曝限度は,1年間1ミリシーベルトです。これは自然由来の放射線の被曝量(日本では1.0〜1.5ミリシーベルト)を除いたものです。これは上記の3)にあたります。
ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告にもとづくと,1ミリシーベルト被曝した場合,ガンで死ぬ確率は10万分の5とされています。これは,上記の2)にあたります。
例えば,東京都の人口は約1,330万人ですから,1ミリシーベルトの被曝で死ぬ人は確率的には約670人になります。
以上のような知見などがあるとしても,できる限り放射線の被爆を避けることが賢明です。これは上記4)にあたります。
このように考えると,原発事故直後に出された政府の見解や一部「専門家」の意見,メディアの報道が,いかにインチキであったかが分かります。
最後の方で,「自分が状況を判断するときの指針」,「他人の発言を解釈するとき」にどう考えるかといったことが書かれています。
今や,一国の総理大臣が国際的舞台で平気でウソを述べる時代であり,それが何の不思議もなく一部メディアで報道されます。身を守るために,社会的情報を活用する能力を磨くことが大事だとつくづく思います。