市民講演会と地質情報展 ― 2019/04/01 12:30
去年9月の北海道胆振東部地震で中止になった地質学会の市民講演会と産総研・地質調査総合センターの地質情報展2019北海道が,札幌市の「かでる2・7」で開かれました.市民講演会は3月30日(土)の午後1時から3時半まで,地質情報展は29日(金)から31日(日)までの3日間でした.

写真1 地質情報展2019北海道
かでる2・7の玄関を入って突き当たりの展示ホールで開かれました.床一杯に北海道の地質図が広げられています.

写真2 地質情報展2019北海道
鉱物探し,扇状地と三角州の模型実験,マンガン団塊などのほか,火山実験や破壊音を聞くことのできる岩石破壊実験などが行われていました.

写真3 市民講演会で挨拶する竹下 徹・地質学会北海道支部長
<市民講演会>
在田一則氏(元北大教授):山脈はどうしてできる? -地質が示すヒマラヤ・日高山脈の成り立ち-
日高山脈とヒマラヤ山脈がどうやってできたのかを分かりやすく説明しました.
亀田 純(北大理学研究院・准教授):深海底の断層を調べる-東北地方太平洋沖地震の断層すべりメカニズム-
深海底でのボーリング結果と実験を組み合わせ,東北地方太平洋沖地震のすべり面の性状を明らかにしました.
高橋浩晃(北大地震火山観測センター教授):地震はなぜ起こる?ー北海道の地震とその災害-
今回の地震の特徴と地震被害の実態について述べました.札幌での直下型地震の可能性についても述べました.
半日ほどでしたが,地質を楽しむことが出来ました.
本の紹介:地震学を作った男・大森房吉 ― 2019/04/08 09:09

上山明博,地震学をつくった男・大森房吉 幻の地震予知と関東大震災の真実.2018年7月,青土社.
残されている資料と聞き取りを通して大森房吉の地震学への取り組みを明らかにした本です.
大森房吉は,1923(大正十二)年9月1日に発生した大正関東地震を予知できなかった地震学者として知られています.しかし,実際はどうだったのかを丹念な資料調査で明らかにしています.
大森房吉は,1868(明治元)年9月に福井市で生まれています.9歳の時に東京に移り15歳で東京大学予備門本学に入学します.1887(明治二十)年に東京帝國大学理科大学に入学し物理学を専攻します.
1891(明治二十四)年に東京帝国大学理科大学の助手に任ぜられます.同じ年に今村明恒が東京帝国大学理科大学に入学します.
この本によれば,大森は東京に大地震が来る可能性について人心を沈めるために,しばらくの間,東京に大地震は来ないという論陣を張ったということです.
関東大震災の時,大森はオーストラリアに赴いていて,シドニーのリバービュー天文台を視察し地震計を見ている時に針が大きく揺れました.関東大震災の地震が起きたのです.大森は地震記録から震源方向と震源までの距離を計算し,震源が東京湾の湾頭であると指摘したそうです.
実際の震央は秦野市付近でしたが,いかに大森がすぐれた地震学者であったかを示す話です.
地震の記録から震源の方向と位置を特定する方法を考案したこと,余震は指数対数的に減衰することを見い出したこと,電動式地震計を制作したこと,世界最初の地震学会を日本で立ち上げたことなど,その功績は計り知れないものがあります.
1916(大正五)年のノーベル賞候補になったことも具体的資料に基づいて述べられています.
著者の上山氏は,国会図書館,東大地震研究所,大森房吉の生まれた福井市などに足を運び,丹念に資料を発掘しています.
日本の地震学の歴史を知るに格好の本です.
モエレ沼公園の雪どけ ― 2019/04/08 10:00
山筋ゴーゴー体操 ― 2019/04/08 17:58

石田良恵,DVD付き いつまでも山に登れる 山筋ゴーゴー体操.2014年6月,桐書房.
日本勤労者山岳連盟の女性会員と一緒に行った筋力測定で,年齢とともに筋肉量が落ちていくことが分かりました.そこで「100歳までも爽やかに登山」を目指して,まずは15分でできる筋力トレーニングをまとめたのがこの本です.ストレッチ編も付いています.
DVD を見ながらやってみると分かりますが,女性用に考えられているため割合楽にできます.しかし,効果はかなりあると感じました.特に,登山ではバランスを崩さないことが非常に大切です.
ストレッチは5種目紹介されています.いずれも立ったままで行うもので,登山の休憩時にもできます.
単なるハウツウものではなく理論的なことも書かれていて濃い内容になっています.
余談ですが,土木學會誌の2019年4月号の小泉潔司会長の会長からのメッセージは「人生100年時代とインフラ」です.健康に人生を送ることが大事になっています.
2019年 地団研北海道支部 特別講演会 ― 2019/04/15 17:21
2019年4月14日(日),午後2時から札幌市宮の沢にある「ちえりあ」で地学団体研究会・北海道支部の総会と特別講演会が開かれました.

写真1 総会であいさつする岡村 聡・支部長
特別講演会は,山岸宏光氏(北海道総合地質学研究センター)の「2018年9月6日北海道胆振東部地震による斜面災害-今日までの災害との比較」でした.
<山岸氏の講演内容>

写真2 講演する山岸氏
土砂災害の一般的な話から始まって,最近の土砂災害の話になりました.
2018年4月10日に発生した大分県中津市・耶馬溪の崩壊地の隣りには,古い地すべり跡があります.過去にも同様の崩壊が発生していました.
2018年広島で発生した土砂災害は,2014年の土砂災害と同じ地形,地質条件の場所で発生しました.花崗岩類が風化したマサ土の崩壊です.
似たような地形・地質条件は,例えば層雲峡など北海道にもあります.
地すべり地形分布図が,防災科学技術研究所や北総研・地質研究所から出されています.一度発生した地すべりの内部あるいは周辺では新たな地すべりや崩壊が発生しやすい条件にあります.地すべり分布図が必要な理由です.
地すべりに関する法律は,1958年制定の「地すべり等防止法」や「砂防法」,「急傾斜地法」などがあります.
2004年10月の中越地震による長岡市山古志東竹沢の梶金(かじかね)地すべり(急速に動いた回転型地すべり),1999年の新潟県の東川地すべり(アースフロー),2003年1月の小佐渡・片野尾の地すべり,214年8月の礼文島の地すべりなどを経験しました.
表層崩壊というのは,主に土壌や植生が落下したり滑ったりする現象で,2004年7月の新潟豪雨による表層崩壊は, a)平滑型,b)スプーン型 に分けられます.
深層崩壊は,2011年紀伊半島で起きた崩壊が典型で深層の地盤を含めて崩壊しています.
岩盤崩壊には,「崩落」,「すべり」,「転倒」,「座屈」があります.傾斜60゚以上の露岩した崖で,岩盤の割れ目や節理に関連して発生します.層雲峡の天城岩の崩壊,積丹の豊浜トンネル坑口の崩壊などがあります.
2018年北海道胆振東部地震による斜面崩壊は,平滑タイプ(P タイプ), スプーンタイプ(S タイプ) ,地すべりタイプ(J タイプ)に分けられます.J タイプは基盤岩類の岩相・地質構造に関係しているように見えます.
斜面崩壊について,地層ごとの面積・斜面崩壊の数・地層面積あたりの斜面崩壊の数を取ってみると,新第三紀層の分布域で多い傾向が見えます.これについては,もう少し検討が必要です.
<感 想>
斜面崩壊の分布が何に規制されているかは,興味ある問題です.
斜面崩壊の分布と恵庭火山,樽前火山の降下テフラの分布が割合一致しています.しかし,それだけでは図1に示した斜面崩壊の分布は説明され尽くせないように思います.中新世の地層の岩相・分布に規制されている面はあるように思います.
図1 胆振東部地震による斜面崩壊の分布図
(国土地理院)
<https://saigai.gsi.go.jp/3/20180906/iburi-hokai_2-zentaizu.pdf>
震央の周辺では斜面崩壊が少ないです.川の流路(尾根の方向)に規制されている面もあると考えられますが,全体に北北西-南南東方向に分布しています.
図2 厚真町付近の地質図
(産総研・地質調査総合センター)
<https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/hokkaido2018/hokkaido2018-03.html>
震央付近に分布している地層は,中新世・萌別層(もえべつ・そう)の砂岩・シルト岩です.斜面崩壊の分布が多くなる地域には,萌別層より下位の中新世・軽舞層(かるまい・そう)の硬質頁岩・砂岩・シルト岩あるいは振老層(ふれおい・そう)の礫岩・砂岩・硬質頁岩・泥岩が分布しています.
北北西-南南東方向の背斜向斜が何本も分布しています.主要な断層の走向も褶曲軸と一致しています.













