本の紹介:地震学を作った男・大森房吉2019/04/08 09:09

地震学をつくった男・大森房吉

上山明博,地震学をつくった男・大森房吉 幻の地震予知と関東大震災の真実.2018年7月,青土社.


残されている資料と聞き取りを通して大森房吉の地震学への取り組みを明らかにした本です.


大森房吉は,1923(大正十二)年9月1日に発生した大正関東地震を予知できなかった地震学者として知られています.しかし,実際はどうだったのかを丹念な資料調査で明らかにしています.


大森房吉は,1868(明治元)年9月に福井市で生まれています.9歳の時に東京に移り15歳で東京大学予備門本学に入学します.1887(明治二十)年に東京帝國大学理科大学に入学し物理学を専攻します.

1891(明治二十四)年に東京帝国大学理科大学の助手に任ぜられます.同じ年に今村明恒が東京帝国大学理科大学に入学します.


この本によれば,大森は東京に大地震が来る可能性について人心を沈めるために,しばらくの間,東京に大地震は来ないという論陣を張ったということです.


関東大震災の時,大森はオーストラリアに赴いていて,シドニーのリバービュー天文台を視察し地震計を見ている時に針が大きく揺れました.関東大震災の地震が起きたのです.大森は地震記録から震源方向と震源までの距離を計算し,震源が東京湾の湾頭であると指摘したそうです.

実際の震央は秦野市付近でしたが,いかに大森がすぐれた地震学者であったかを示す話です.


地震の記録から震源の方向と位置を特定する方法を考案したこと,余震は指数対数的に減衰することを見い出したこと,電動式地震計を制作したこと,世界最初の地震学会を日本で立ち上げたことなど,その功績は計り知れないものがあります.


1916(大正五)年のノーベル賞候補になったことも具体的資料に基づいて述べられています.


著者の上山氏は,国会図書館,東大地震研究所,大森房吉の生まれた福井市などに足を運び,丹念に資料を発掘しています.


日本の地震学の歴史を知るに格好の本です.



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