シンポジウム 北海道の核ゴミ文献調査から5年2026/04/20 10:33

 2026411日(土)午後145分から午後7時半まで、札幌市の自治労会館で、シンポジウム「北海道の核ゴミ文献調査から5年 見えてきた最終処分政策の課題」が開かれました。

 

プログラムは以下のとおりです。

なお、今回の講演会の内容は、「環境と公害」(第53巻 第3号、岩浪書店、20261月)に載っています。

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開会の挨拶

「何が問題だったのか? 文献調査の5年を問う」

・大島堅一(龍谷大学教授):最終処分政策の課題

・寿楽浩太(東京電機大学教授):これまでの政策の経緯と今日的課題

・高野 聡(原子力資料情報室): 文献調査に反対する住民運  動

・岡村 聡(北海道教育大学名誉教授):文献調査報告書の技 術的問題点

・山下英俊(橋大学准教授):文献調査が地域に与えた影響

パネルディスカッション:「あるべき政策転換に向けて私たちが できること」

☆発表者から

・大島堅一

・高野 聡ほか

☆北海道の市民社会から

・市川守弘(泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会

・南波 久・田嶋真由美(子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会

・宮崎汐里(核のごみに関する対話を考える市民プロジェ  クト)

閉会の挨拶

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  以下、概要です。

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<大島堅一氏>

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地の選定は、これまで公募方式でしたが申し入れ方式に変わりました。

 第7次エネルギー基本計画(20252月)では、これまで原子力発電は極力低減するとしていたものが「最大限活用」となり、原子力発電所の再稼働と新設を新しい方針としました。この結果、核のゴミが増えることになります。

 核燃料サイクルでは、青森県・六ヶ所村の再処理工場の竣工時期が再々変更され、現在も稼働していません。でも、核廃棄物は少なくとも2045年度までに県外に持ち出さなければなりません。

 原発の放射性廃棄物には、再処理によってできる高レベル廃棄物、再処理の段階で発生する超ウラン廃棄物(TRUTrans Uranic Wastes)、低レベル廃棄物があります。これらは10万年〜30万年間、保管する必要があります。最も安全な方法が求められます。

 使用済み核燃料の再処理工程は破綻しています。

 

 最終処分場の選定は、202011月に北海道の寿都町と神恵内村で文献調査が始まりました。20245月には玄海町で文献調査が始まりました。

 2017年から公募方式のほかに、申し入れ方式が採用できるようになりました。しかし、NUMOが申し入れた場所が安全であると言うことではありません。申し入れは地元住民が知らないうちに行われ、住民の分断が必ず起こります。

 

 最終処分場選定の規制基準はありません。中・低レベル放射性廃棄物の方法を参考にNUMOがつくっています。

 2023年からNUMOは対話の場を設けています。寿都町と神恵内村では違う方法で対話を行っています。

 一度候補地になると抜けることができません。法的拘束力は無いのですが、自治体側に拒否権はありません。

 文献調査を受け入れると上限20億円の交付金が出ます。

 

 最終処分場選定に国会の関与がありません。ドイツでは選定段階から国会が規制基準を作っています。

 

 世代間倫理の問題はありますが、最終処分場選定を急ぐ必要はありません。現在の処分場プロセスの選定過程を科学的安全性と民主主義的正当性とが確保された制度に抜本的に変えることが必要です。

 

<寿楽浩太氏>

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の「手挙げ方式」(公募方式)は誤算でした。

 2002年にNUMOが公募を始めました。2007年には高知県東洋町が文献調査に応募しましたが、反対運動が起きて応募を取りやめました。

 2010年には原子力委員会が学術会議に対して「高レベル放射性廃棄物の処分の取組における国民に対する説明や情報提供のあり方についての提言のとりまとめ」の審議を以来しました。日本学術会議は、2012年に回答を行っています。

 2014年には総合資源エネルギー調査会の中の放射性廃棄物WGが中間とりまとめを行っています。この中で、国が「なぜここか」を示すことが必要と述べています。

 2013年には関係閣僚会議が「科学的有望地」を提示することを決めました。これにしたがって、2015年から2017年に検討が行われて「科学的特性マップ」が提示されました。

 

 寿都町と神恵内村が文献調査に手を挙げた後、玄海町が手を挙げました。しかし、この方式への懐疑から、「科学的有望地」に対して国が申し入れをするという方式を始めました。その第一番が東京都小笠原村の南鳥島です。

 南鳥島は「科学的有望地」+土地利用の優位(住民がいない国有地)という観点でのみ見るのは危ういです。南鳥島をめぐる国のさまざまな動きや島嶼国に対する影響などの問題を考える必要があります。

 

<高野 聡氏>

 北海道では寿都町と神恵内村の文献調査が終了し、経済産業省の審議会の下部組織である地層処分技術ワーキンググループでの原案の審議の中で、北海道教育大学名誉教授の岡村 聡氏などが議論に参加しました。また、意見の提出も行いました。これらが、調査結果を議論するワーキンググループに影響を与えた可能性があります。

 最終処分場選定過程での大きな問題は、地域の分断です。NUMOが行う対話の場では、多様な住民が参加し、多様な意見を述べることが必要です。特定放射性廃棄物小委員会での検証と市民プロジェクトが結合する必要があります。

 最終処分場に公募した対馬市では、市議会特別委員会は文献調査に賛成でしたが、住民運動によってこれを覆しました。

 佐賀県玄海町では、町議会が文献調査受入の請願を採択し、町長が受入を表明しました。

 

<岡村 聡氏>

 2017年に「科学的特性マップ」が公表され、2023年には「文献調査段階の評価の考え方」出されました。これらでは、岩盤の特性を考慮していません。

内閣府の審議依頼を受けて、日本学術会議は2012年に「高レベル放射性廃棄物の処分について」と題する回答を提出しました。

フィンランドでは地質的に安全な場所を専門家が絞り込んで、オンカロに放射性廃棄物処分場を造ることを決めました。

 

 神恵内村は、水中溶岩の分布域で岩盤が脆弱です。沖合に海底活断層があり地震のリスクもあります。

 寿都町には活断層である黒松内断層があります。地下深くに群発地震の発生域があり、能登半島と同じような地下状況になっていると考えられます。

 玄海町は、石炭を含む地層が分布していて、地下を掘ることでメタンガスの発生が予想されます。北海道幌延の深地層研究センターでは、周囲に石炭層はないのですが、泥岩からガスが噴出しています。

 南鳥島は、地表から1,000mほどが石灰岩です。水の通りやすい地質です。 

 

<山下英俊氏>

 2025年に社会科学者のグループで高レベル放射性廃棄物の文献調査について、寿都町で町民アンケートを行いました。1,291世帯にアンケートを配って197件の回答がありました。回収率は15.3%です。

 

 まず、文献調査まででやめるべきとの回答は53%、概要調査に進むべきは34%、どちらとも言えないが13%でした。

 NUMOの説明に納得できたかは、納得できなかった側が42%、納得できた側が18%、どちらとも言えないと未回答が40%でした。

 文献調査まででやめるべきとの回答では原子力への懸念が強く、概要調査に進むべきでは原子力の必要性が重視されています。どちらの側にも国などの責任を問う声があります。

 

<パネルディスカッション>

 パネルディスカッションでは、市川守弘氏の発言が印象的でした。大要は次のとおりです。

 

「最終処分法が一番の問題なので、これを廃止にする必要があります。北海道は幌延などが出発点ですが、中間貯蔵施設も受け入れたらダメです。北海道には核施設は建設できないはずです。過疎地に処分場を押し付けるのではなく、国全体の問題として考える必要があります。」

 

 パネルディスカッションには、寿都町の難波さんが会場で参加し、リモートで田嶋真由美さんが参加しました。宮崎さんはファシリテーターをしているとのことです。

 

北海道の核ゴミ

写真 パネルディスカッションが始まる前

 立っている人を除いて、左から高野 聡さん、大島堅一さん、寿楽浩太さん、市川守弘さん、南波 久さん、宮崎汐里さんです。

 

<感 想>

 現在、北海道の寿都町と神恵内村、佐賀県の玄海町、そして東京都の小笠原村・南鳥島(国有地)が文献調査の対象となっています。

地質的に見ると寿都町と神恵内村は中新世の水中溶岩が大半を占めています。玄海町は古第三紀の石炭を含む地層が多く分布しています。南鳥島は礁性石灰岩が厚く堆積していて、その下は多分、水中溶岩(枕状溶岩)です。

 これらの地質は、最終処分場として適しているとは言えないと思います。

 

 市川さんが言っていたように最終処分法を一度廃止して、一から考え直すことが禍根を残さない方法のように思います。



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