本の紹介:百年の挽歌2026/04/05 14:16

百年の挽歌

 青木 理(おさむ)、百年の挽歌 原発、戦争、美しい村。集英社、20261月。

 

 阿武隈高地の北の端付近にある福島県・飯舘村で、102年の人生を過ごしてきた古老が自ら命を絶ったことを描いたルポルタージュです。

 

 2011年の東日本大震災は津波によって多くの犠牲者を出しましたが、高原の里と言われる飯舘村では、福島第一原子力発電所の事故によって多くの人が故郷を失いました。この本の大久保美江子さんとその義父である大久保文雄さんは、原発事故により大きく人生を狂わされたのです。

 青木さんが調べるうちに、文雄さんの15歳下の弟、久さんは成人した直後に招集されました。その後、硫黄島に送られました。そこで戦死したのです。


 硫黄島は、小笠原群島の西にある西之島(1973年〜1974年にマグマ噴火)に連なる火山島で、飲み水は天水に頼るしかない状況でした。このような硫黄島に送られた21,000名の将兵は、地熱と有毒ガスそして喉の渇きと闘いながら総延長18kmの「地下要塞」を掘ったのです。

 

 飯舘村が全村避難と決まった後、文雄さんは「ちぃっと長く生きすぎたなぁ。イヤなものをみちまった・・・・」と独りごちたのです。

 

 原子炉の爆発という大事故を起こし、未だに生活が戻らない人びとが多くいる状況で、原子力発電が再開されているこの国の状況は、常軌を逸しているとしか思えません。


 そのことを強く感じる本です。