待望の書「珪藻古海洋学 完新世の環境変動」 ― 2011/09/22 18:26
まさに待望の書ですね.珪藻という微化石で,どこまで環境変動を明らかに出来るのかを示しているのがすごい.そして,気候変動を理解するには,宇宙や太陽による地球外からの影響と磁気圏を含めた地球の気候システム内部の要因とに分けて考えることの重要性が書かれていて,非常に視野の広い内容となっているのが魅力です.

「珪藻古海洋学 完新世の環境変動」(小泉 格,2011年9月,東京大学出版会)の紹介です.
目次は次のようになっています.
最1章 珪藻古海洋学
第2章 深海掘削における珪藻古海洋学
最3章 完新世古海洋環境の復元
第4章 日本列島における気候変動
最5章 完新世の気候変動史
最6章 西暦年間の気候変動
第7章 太陽ー大気ー雪氷ー植生ー海洋の気候リンケージ
引用文献は,35ページにわたっています.
もっとも参考になると私が思ったのは,第5章と第6章です.古気候プロキシ(間接指標)の記録が表にまとめられ出典が示されています.これを見ると珪藻はもちろんですが有孔虫,サンゴ,洞窟の石筍,氷床コアなど様々な試料が古気候の解明に使えることが分かります.
太平洋の鹿島沖と日本海の隠岐堆のコアで,1万3千年前以降の年間表層海水温の変化を解析しています.この解析では1,000年後の海水温変化を示していますが,鹿島沖と隠岐堆では予測が違ってくることが示されています.
古気候の分解能が上がることによって,将来起こる気候変動の予測精度も上がることが期待されます.
「本書は,日本近海を中心とした北太平洋の古海洋研究の成果を,次世代の研究活動を期待される学部学生や大学院生のために集大成したものである.」(本書はじめに)という著者の目的が果たされるために,多くの若い人に読んで欲しいと思います.
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