地下構造物の耐震性能照査と地震対策ガイドライン(案)2011/09/19 17:44

 上に記したガイドラインの講習会がありました.

 どうして,指針やガイドラインの講習会というのは,これほどつまらないのだろうかと考えてしまいます.話す方にしてみれば,当たり前のことを話すので迫力が出ないというのは分かりますけど,苦労してまとめたものですから,注目すべきところ,書かれている文言の背景を話して欲しいと思います.
 唯一興味を持って聞けたのは,このガイドライの小委員会副委員長の竹内幹雄氏((株)日水コン)の話でした.
 

 このガイドライン(案)は,本編169ページ,研究成果編122ページ,資料編299ページ,総ページ数591ページという大冊です.総ページ数と各編のページ数の合計が合っていないのは,白紙でページが打ってないけどページ数に入っているページが1ページあるためです.
 以下,関心を持った点について述べます.

 竹内幹雄氏は,開会のあいさつで次のような話をしました.
 1985年9月のメキシコの地震では,日本で言えば岐阜が震源で東京で大きな被害が出たような状況となりました.メキシコシティは湖を埋め立てた場所につくられているので被害が大きかったのです(古いメキシコシティの地図を見るには「モーリス・コリス,コルテス政略誌.107p.講談社学術文庫が手軽です).この地震によって地下構造物の免震構造の必要性が認識されました.
 そして,1995年1月の兵庫県南部地震で地下は地震に対して安全であるという常識が覆されました.
 高層ビル,地下放水路,横浜市の地下鉄駅,そして今年完成したばかりの札幌駅前通地下歩行空間などで免震構造が採用されるようになりました.新素材を使うことにより経済的な免震構造を構築できるようになってきました.

 野津 厚氏(港湾航空技術研究所)は入力地震動の設定について述べました.
 これまで,「レベル1地震動」,「レベル2地震動』としていたものを改め,「使用性照査用 地震動」,「安全性照査用 地震動」とします.使用性照査用地震動とは「設計供用期間内に発生する可能性が高い地震動」,安全性照査用地震動とは「当該地域で考えられる最大級の強さを持つ地震動」のことです.

 古川愛子氏(京都大学大学院工学研究科)は応答値の算定と性能照査について述べました.
 地下構造物の地震時の応答の特徴は,地盤の変形の影響を受けることです.地盤と構造物の剛性比によって構造物の変位が異なってきます.例えば,構造物の剛性を地盤に対して2倍にしても変位は7割程度しか小さくなりません.構造物の剛性を半分にした場合,構造物の変形は3割程度しか大きくなりません.したがって,地下構造物の地震時応答を検討する場合は,構造物と地盤との剛性比を考慮できる手法を採用することが重要です.

講演する竹内幹雄氏

 竹内幹雄氏は地震対策技術について述べました.
 トンネルの剛性を一定とした場合,硬質地盤では軟質地盤に比べて接線方向外力は小さくなり,トンネルに発生する曲げモーメントは小さくなります.一般的には柔らかくて,じん性に富んだ地下構造物の方が地震に対しては有利であると言えます.
 トンネルやカルバートの周りに免震層を設ける場合は,新素材のソフトコーティングとすると経済的に桁違いで有利となります.

 札幌駅前通地下歩行空間は地下鉄南北線の上に地下道が設けられました.この地下空間に接する建物との間に免震構造を採用しました.2003年十勝沖地震の地震動を用いて解析しています.

 地震に伴う津波で地下構造物が浸水する可能性があります.これについては,地震による地下構造物の浸水対策として藤間功司氏(防衛大学システム工学群)が講演しました.
 浸水対策としては,人的被害を防ぐことと施設の被害を防ぐことに2段構えで検討しています.下水道終末処理場は海岸付近に設置されている例が多く,津波の被害を想定する必要があります.静岡市の安倍川河口にある中島浄化センターで検討したところでは,4mの津波で浸水する可能性があり,復旧に長くて12ヶ月,76億円の費用が必要という結果になりました.3月11日の地震で被災した仙台市の蒲生浄化センターでは復旧に最大3年かかると想定されています.

 この本は,資料編が充実していて,「地中構造物の耐震補強に関する文献一覧」,CDも付いています.

 私は,山形県の古い亜炭鉱山の調査をしている時に坑内で地震に遭いました.木枠で支保しただけの坑道の壁につるしていた電球がきれいに波打つのを見て,地震ではトンネルは大きな被害は受けないだろうという感想をずっと持っていました.しかし,地盤と構造物との相互作用次第では構造物に被害が出ることがあると言うことで,認識を改める必要があると感じました.



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