本の紹介:若い人のための『 種の起源』 ― 2020/03/12 20:12

チャールズ・ダーウィン著,レベッカ・ステフォフ編著,鳥見真生訳,若い読者のための『種の起源』[入門 生物学].2019年5月,あすなろ書房.
自然選択によって生物がゆっくり変化していくというダーウィンの「種の起源」を分かりやすく書き直したものです.本書の目次は下のようになっていて,原著とは異なっています.
序章 『種の起源』が誕生するまで
第1章 飼育栽培下での変異
第2章 自然界における変異
第3章 生存競争
第4章 自然選択
第5章 変異の原則
第6章 理論の難点
第7章 本能
第8章 雑種形成
第9章 地質学的記録の不完全さについて
第10章 生物の地質学的連続性について
第11章 地理的分布
第12章 生物相互の類縁性、形態学、発生学、痕跡器官
第13章 要約と結論
序章は,編著者による『種の起源』の誕生とその後についての解説です.第1章以下は,原典に沿って書き直したもので,非常に分かりやすい記述となっています.カラーの生物や地質の写真が載っているのも理解を助けます.そして,緑色のページで現代科学の知識が解説されています.これによって,ダーウィンの先見性に改めて感心することになります.
『種の起源』が,品種改良の話から始まっているのも印象的です.人為選択によって様々な変異がもたらされているという,誰にでも分かることから説き起こしているのです.
第6章では,自然選択の難点を四つ述べています.
また,この時代,チャールズ・ライエルの『地質学原理』(1830年-1833年)が出版されたことも生物の進化を考える上で大きな意義を持ちました.ダーウィンは『種の起源』の中で,「サー・チャールズ・ライエルの名著『地質学原理』を読んでも,過去の時間がとてつもなく長いことを受け入れられないとしたら,そういう人にはただちに本書を閉じてもらってかまわない」(本書141-142)と述べています.
そのほか,紹介したい内容は多々ありますが,まず読んで欲しいと思います.タイトルにあるように,まさに若い人にぜひ読んで欲しい本です.