羽田から千歳へー機内の放射能2016/10/04 15:04

羽田から千歳へ

 2016年9月26日(日)に,羽田から千歳行きの飛行機に乗りました.
 羽田で飛行機に乗って離陸する前から新千歳空港に着陸して機内にいる間,簡易放射線モニター「はかるっち2」で放射線を測りました.計測時間は,1回5分です.

 下のグラフに放射線量を示しましたが,上昇中は0.22μSv/時間であまり変化はありませんでしたが,巡航状態に移ってから1.9μSv/時間にまで上昇し,その後,減りました.
 ところが,降下を開始して雲の下に出たとたんに3.4μSv/時間まで急激に上昇しました.津軽海峡の上あたりです.その後,急激に減少しましたが苫小牧上級でも2.0μSv/時間でした.
 新千歳空港に着陸したときは,機内で0.22μSv/時間となりました.

 放射能は目に見えないし,臭いも痛みも感じないし,その時々に器械で測るしか見つけ出すことができないというのが,恐ろしいところだと思いました.

 2014年5月末以来,「はかるっち2」で放射能を測っていますが,これまでの累積線量は1.41 mSvです.28ヶ月でこの量ですから,おおざっぱに言って1年間の量は,0.6 mSvです.
 これが普通に生活していて受ける放射線量と考えています.


羽田から千歳へ




白根火山の殺生河原2016/10/04 19:57

 2016年9月14日に,地質学会の巡検で殺生河原(せっしょう・がわら)を見学した.

 前日は,草津白根の国立大学共同利用施設・草津セミナーハウスに泊まった.狭いながらも強烈な酸性の温泉で疲れをとり,夜のセミナーと飲み会を楽しんだ.

 白根火山を横断する国道292号は,渋峠を経て長野県の中野へと通じている.
 峠を越えた長野県側の蓮池から発哺(ほっぽ)温泉に行く県道のトンネル調査を行ったことがある.現在の志賀3号トンネルである.調査は真冬にかかり,猛烈な量の雪と寒さと闘いながらの作業であった.天気の良い日には,ボーリング座のすぐ脇をスキーヤーが滑っていくという環境であった.
 トンネル工事では,2回の異常出水に見舞われた.さすが温泉地域で,2回目は強烈な酸性水が吹き出して沢が茶色に変色した.幸い,溜まり水であったようで急激に湧水量は減った.
 このトンネルは,さらに供用後に路盤に段差ができる変状が発生し,インバートを増設した.幸い,旧道が通れたので迂回路は確保できた.

 14日の朝,草津セミナーハウスを出発し,白根火山ロープウェイの山麓駅から歩いて殺生河原を見学した.あいにく霧がかかり視界は良くなく雨が降り始めた.東京工業大学・火山流体研究センターの方がガス検知器を持って同行してくれた.
 国道292号のすぐ脇に昇華硫黄の結晶の着いた噴気孔があり,硫化水素の臭いが鼻を突く.なかなかの迫力である.

 東京工業大学の火山流体研究センターでは,「草津白根火山の巡検案内書」という立派な冊子をつくっている.
 それによると,殺生河原付近を境にして,北西に草津白根火山・中期の青葉溶岩(30万年前)が分布し,南東には新期の殺生溶岩(3千年前)が分布してる.殺生溶岩は,溶岩堤や溶岩じわなどの溶岩の構造がよく残っている.

 噴気帯付近は,クリストバライト+非晶質石英+硫黄だけからなる珪化帯を形成している.周辺部では明ばんや硫化鉄なども産出するという.青葉溶岩の上に載っているローム層も変質していて,粘土化した部分ではカオリナイトが産出するという.


殺生河原の噴気孔
図1 殺生河原の噴気孔
 北東から南西に延びる殺生河原に沿って噴気孔が並んでいる.黄色く見えているのが自然硫黄の結晶である.常に硫化水素の臭いが漂っている.


溶岩のシワ
図2 殺生河原の南西に見られる殺生溶岩のシワ
 植生のある場所に幾つか見られる高まりが溶岩のシワである.この上の方に本白根山の火口の一つである鏡池がある.


自然硫黄
図3 噴気孔の自然硫黄
 見事な黄色をしている.


青葉溶岩
図4 殺生河原北側の青葉溶岩とその上のローム層
 中央の黒い岩石が青葉溶岩で,その上にローム層などが載っている.ローム層も変質を受け色が変わっているところがある.手前の灰色の部分は青葉溶岩が変質したものである.


本の紹介:生命の星の条件を探る2016/10/05 15:39


阿部 豊 生命の星の条件を探る
阿部 豊,生命の星の条件を探る.文藝春秋,2015年8月.

 生命が存在する星はどんな条件にあるのかを,地球の生命を手がかりに探った本です.

 生命存在の条件を知るには,地球を含めた宇宙の長い時間と空間についての知識が必要なことが良く分かります.
 
 生命には水が必要です.水は宇宙のなかでありふれたものであり,水分子が極性を持っているために多くのものを溶かすことができるという貴重な性質があります.

 太陽系の中で,現在プレート運動があるのは地球だけです.プレートの沈み込みによって炭素の循環が起きます.つまり,海底にたまった炭酸塩がリサイクルされ,火山ガスとして大気中に放出されます.この炭酸ガスが地表の温度を適度に保つ働きをします.

 海だけでなく大陸があることにより,風化作用によって様々な元素が海に供給されます.特に,リンが供給されることが生命にとっては大事です.

 酸素が無くても微生物は存在できますが,エネルギーを効率よく生み出すには酸素が不可欠です.

 海惑星と陸惑星というのがあります.海惑星は地球のように繋がった海を通して水が輸送される惑星です.これに対して,陸上に湖が点々としているだけの惑星は大気によって水が輸送されます.これが陸惑星です.海惑星と陸惑星の環境変動を調べてみると,陸惑星の方が極端な環境の変化が起こりにくいのです.
 これは,著者らが2011年に発表した論文で述べられたもので大きな反響を呼びました.

 そのほか,惑星の巨大衝突,大気や水を地表に保持できる条件,惑星の大きさ,惑星の軌道,恒星の寿命などについて述べています.

 それぞれの分野の研究の中で,まだ解明されていないことが何かを述べているのが,この本の大きな特徴です.

 なお,2004年5月に出版された「進化する地球惑星システム」(東京大学出版会)
で,著者は「3 地球惑星システムの誕生」ほかを執筆しています.この章の「太陽系形成の概念図」は,本書を理解する役に立つと思います.


2016北海道豪雨災害報告会2016/10/07 10:14


2016年8月豪雨緊急報告会
開会前の会場の様子
 北大学術交流会館の講堂(310席)が満席になり,補助椅子が出されました.

 2016年9月29日に北大学術交流会館で,「2016年8月北海道豪雨災害調査団緊急報告会」が開かれました.この報告会で配られたカラーの資料は,下のウェブサイトからダウンロードできます.
< http://committees.jsce.or.jp/report/system/files/hokkaido.pdf >

 また,北海道開発局ホームページの「災害情報」に9月29日時点(10月5日修正)の資料が載っています(2016年10月7日時点).

 8月17日から23日にかけて台風7号,11号,9号が,次々と北海道にやってきました.さらに29日には,台風10号が道南をかすめて行きました.この一連の豪雨被害調査の報告会です.

 この一連の大雨の中で特異なのが,台風10号による豪雨です.台風7,9,11号は日高から釧路にかけて上陸したのですが,10号は松前半島の先をかすめるようにして北西に向かいました.しかし,南東からの暖湿気が流れ込んで日高山脈の主に西側に雨を降らせ,記録的な大雨となりました.

 被害で注目されるのは,橋台の洗掘による落橋です.また,短時間に水位が上下したために発生したと推定される噴砂を伴う堤防のり面崩壊も注目すべき現象と思います.

 気象条件が変化し,今まで想定されなかった被害が出ているという印象を強く持ちました.


平成28年8月北海道豪雨災害調査団報告会2016/10/11 09:01

 2016年10月7日,午後2時から地盤工学会主催,日本地すべり学会北海道支部共催の「平成28年8月北海道豪雨による地盤・地すべり災害調査団」報告会が,北大学術交流会館で開かれました.
 当日,講演要旨は配布されませんでした.地盤工学会北海道支部のウェブサイトで,後日公開されるそうです.

 司会は西本聡氏(地盤工学会北海道支部 地盤災害緊急対応委員会 副委員長:寒地土木研究所)です.


平成28年8月北海道豪雨災害報告会
開会時の様子
 「開会に先立って−災害等に係わる調査の相互協力に関する協定について」を説明する西本副委員長(左)と石川委員長(右)

 まず,石川達也氏(同上委員会 委員長:北大工学部 地盤環境解析学研究室)が,調査および被害の概要を報告しました.
 
 その後,9件の報告と2件の話題提供があり,討論になりました.終了は午後5時30分で,予定の時間を越えての報告会となりました.

 討論の中では,石丸聡氏(道総研 地質研究所)の斜面災害での発言が注目されました.斜面崩壊の場合,急傾斜が注目されてきましたが,昨年の礼文島の斜面崩壊や今回の斜面崩壊を見ていると急斜面の上の緩斜面にも注目する必要があると言うことです.今回の羅臼町の斜面崩壊も,海岸に面した急斜面で海岸段丘の堆積物の上に緩斜面が形成されていて,そこにかなり厚い緩斜面堆積物が載っていて崩壊したものです.

 西村聡氏(北大工学院 環境フィールド工学部門 地盤物性学研究室)は,耐浸食性の堤防や粘る盛土の開発の必要性,データの蓄積とモニタリングの充実によるメカニズム解明の重要性を強調しました.

 気候の状態が変わってきていることが確実な現在,これまでと異なった視点からの対応が必要なようです.


本の紹介:鉱石の生い立ち2016/10/12 17:21


鉱石の生い立ち
島崎英彦,鉱石の生い立ち.2016年9月,明文書房.

 1968年から1999年に定年退職するまで,東京大学で金属鉱床学を担当してきた著者が長年蓄えた深い学問と知識を傾けた本です.
 
 分かりやすい文章で,鉱床学の基礎的なことも含め述べています.金属鉱床についての知識を得ることができると同時に,興味深い話が満載で飽きさせません.
 
 例えば,ニッケルは何故,熱水性鉱床で産出しないのか,金鉱床である九州の菱刈鉱山の発見物語,黒鉱成因論の変遷など,自身の体験も含めながら述べています.

 扱われている金属は,ニッケル,白金,錫,鉄、金,銅,鉛・亜鉛,タングステン・モリブデンなどです.

 鉱石に興味を持っている人には,見逃せない1冊です.

 なお,著者の「島崎英彦のホームページ」( http://www1.odn.ne.jp/~caw40120/index.htm )の「近著紹介(3)」に,本書を書いた動機と目次がが載っています.


本の紹介:日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか2016/10/16 15:39


日本はなぜ戦争ができる国になったのか
矢部宏治,日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか.集英社インターナショナル,2016年5月.

 この本は,著者が1945年から朝鮮戦争が休戦となる直前の1952年までの占領期に日本に何が起こったのかを調べた結果をまとめたものです.

 一言で言えば,「戦争になったら,日本軍は米軍の指揮下に入る」という「統一指揮権密約」があり,2015年9月19日に「成立」した安保関連法は,そのために必要な「国内法の整備」であったと言うことです.

 大本に遡ってみれば見えてくることがあるという信念のもと,公開されたアメリカの文書などを読み込んで分かりやすく説明しています.
 軍事的には,日本は未だに占領期の状態のまま,米軍が日本とその周辺で自由に行動する権利を持っていると言うことです.その法的な根拠として,日米安全保障条約を初めとする表の文書のほかに,密約があります.

 例えば,吉田首相が,口頭で1回目の「統一指揮権密約」を結んだのは,1952年7月23日です.そこでは,「有事の際に単一の司令官は不可欠であり,現状のもとではその司令官は合衆国によって任命さるべきである」ということに吉田首相が同意しました.アメリカの極東司令官であったマーク・クラーク大将が本国に送った機密報告書で明らかになったことです.

 このように,公開された機密文書をもとに,戦後すぐの日本で何が起きていたのかを明らかにしています.それは,悲しくなるような内容ですが,実態を知っておくことは大事だと思います.

 「戦後レジームからの脱却」というのであれば,この体制をこそ変えなければならないと強く思います.
 辺野古での人権侵害を含む暴挙,オスプレイの全国への配備,低空飛行訓練などの根拠が,恐らくここにあると思います.今の問題に直結しているのです.


本の紹介:旅をする木2016/10/24 11:03



旅をする木
星野道夫,旅をする木.1999年3月,文春文庫.

 今年は,星野道夫が1996年8月8日に亡くなって20年です.

 NHKBSプレミアムで「星野道夫 没後20年“旅をする本”の物語」という番組が,今年3月に放送されました.
 星野道夫の「旅をする木」という本が,いろいろな人の手に渡り世界中を旅をしたというドキュメンタリーでした.この本が,人から人へと渡っていく途中,ある人が「木」に横棒を足して,「本」に変えたのです.

 この番組を見て,「旅をする木」を読みました.こんな文章を書くことができたら良いのにと思います.文章が優しく,情景や登場する人たちの様子が目に浮かんでくるのです.内容は,経験に裏打ちされた深いものとなっています.

 星野道夫の最後が衝撃的だったため,「動物写真家」と簡単に言われることがありますが,アラスカ大学野生動物管理学部に4年間留学したり,アラスカのインディアンの村で生活したりと様々な経験を積んでいます.そこから得られた考えを優しい言葉で記しています.

 「旅をする木」は,星野道夫の人生観というか世界観が良くわかる本です.

参考HP
Michio Hoshino
< http://www.michio-hoshino.com/index.html >