本の紹介:日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか2016/10/16 15:39


日本はなぜ戦争ができる国になったのか
矢部宏治,日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか.集英社インターナショナル,2016年5月.

 この本は,著者が1945年から朝鮮戦争が休戦となる直前の1952年までの占領期に日本に何が起こったのかを調べた結果をまとめたものです.

 一言で言えば,「戦争になったら,日本軍は米軍の指揮下に入る」という「統一指揮権密約」があり,2015年9月19日に「成立」した安保関連法は,そのために必要な「国内法の整備」であったと言うことです.

 大本に遡ってみれば見えてくることがあるという信念のもと,公開されたアメリカの文書などを読み込んで分かりやすく説明しています.
 軍事的には,日本は未だに占領期の状態のまま,米軍が日本とその周辺で自由に行動する権利を持っていると言うことです.その法的な根拠として,日米安全保障条約を初めとする表の文書のほかに,密約があります.

 例えば,吉田首相が,口頭で1回目の「統一指揮権密約」を結んだのは,1952年7月23日です.そこでは,「有事の際に単一の司令官は不可欠であり,現状のもとではその司令官は合衆国によって任命さるべきである」ということに吉田首相が同意しました.アメリカの極東司令官であったマーク・クラーク大将が本国に送った機密報告書で明らかになったことです.

 このように,公開された機密文書をもとに,戦後すぐの日本で何が起きていたのかを明らかにしています.それは,悲しくなるような内容ですが,実態を知っておくことは大事だと思います.

 「戦後レジームからの脱却」というのであれば,この体制をこそ変えなければならないと強く思います.
 辺野古での人権侵害を含む暴挙,オスプレイの全国への配備,低空飛行訓練などの根拠が,恐らくここにあると思います.今の問題に直結しているのです.