応用地形判読士一次試験の結果2012/09/19 15:42

 応用地形判読士の一次試験の結果が発表になりました.応用地形マスターI級,II級を合わせた合格者は133名で,合格率は29%でした.
最も合格率が良かったのは新潟会場で39%,約4割の受験者が合格し,I級,II級とも2割近い合格率でした.名古屋会場と東京会場ではI級の合格率が1/4程度であるのに対し,II級合格率は1割弱と低いのが特徴です. I級の合格者79名のうち31名が東京会場でした.
 試験問題は択一式が基礎知識,専門知識,記述式がA群(平地の地形),B群(山地の地形)と分かれています.百点満点に換算した平均点は,基礎知識が72点,専門知識が71点,A群が48点,B群が57点でした.A群は,臨界低地の微地形と蛇行原(自然堤防帯)の微地形に関する問題でした.B群は,中禅寺湖周辺の地形図読図と岩盤劣化作用を反映した地形について述べる問題でした.
 平地の地形についての平均点が低いのは,沖積層調査などでは,あまり地形を読むことをしないためと思われます.沖積低地は戦後急速に人口改変が進んだため,空中写真判読や地形図読図が難しいのは確かです.しかし,米軍が終戦直後に撮影した空中写真や場所によっては昭和10年代に陸軍陸地測量部が撮影した空中写真がありますから,これらを判読することによって原地形の特徴を掴むことができます.

 応用地形マスターI級に合格した人は,12月1日(土)に行われる応用地形判読士二次試験受験の受験資格を得たことになります.

 合格者数などは,「地質と調査」(全国地質調査業連合会編)の2012年第3号,59-60に載っています.

表1 応用地形判読士 一次試験合格者数

「歴史の中の大地動乱−奈良・平安の地震と天皇−」2012/09/19 21:54




 1000年以上前の為政者の方が,真剣に庶民のことを考えていたんじゃないだろうか.自然に対する恐れを持っていた分,優れていたんじゃないだろうか.

 保立道久著,岩波新書(2012年8月発行)である.

 864年に富士山噴火,867年に豊後鶴見岳と阿蘇山で噴火,868年京都群発地震と播磨国地震,869年に陸奥海溝地震(貞観地震津波)と肥後国の地震,871年に出羽鳥海山の噴火,874年薩摩開聞岳の噴火,878年南関東地震,880年に出雲地震と京都群発地震,885年薩摩開聞岳の噴火,886年伊豆新島の噴火,887年南海・東海連動地震,ややおいて915年十和田の大噴火と,まさに大地動乱の時代が9世紀の後半であった.

 このような自然の驚異に当時の天皇を初めとした宮廷や庶民がどう対応したか,どんな神話をつくったのかを豊富な資料と知識で解き明かしたのが本書である.日本がヨーロッパなどに比べ後れを取っている文理融合の学術体制を進める糸口としたいという意図もある.

 この本を書いた動機は2011年3.11である.そして,長い歴史的視野で見れば,この日本という国土は約600年間隔で大地動乱の時代を経てきている.このような視点から,日本の国をどう造っていくのかを真剣に考える必要がある.

 1995年の阪神淡路大震災以来,日本で地震・火山の活動が活発になってきていることは,前から指摘されていることである.日本の国を安心して住むことが出来るようにするには,今,日本人が自然に対して謙虚な態度を取るべきであることを教えてくれる.