火星の話(その2)2009/04/30 09:10

 現在,火星にはスピリットとオポチュニティの二つのローバーが火星表面の探査を行っているほか,火星周回軌道上からマーズ・リコネサンス(アメリカ),マーズ・イクスプレス(ヨーロッパ),2001マーズ・オデッセイ(アメリカ:上記二つのローバーの通信の中継も行っている)の三つのオービターが観測を続けている.なお,2008年5月に極域に着陸して地表下の水の氷の存在を確認したフェニックスは同年11月に活動を停止した.
 特に,マーズ・リコネサンスは分解能30cm というカメラを搭載して詳細な火星表面のデータを収集している.
 
 今後の火星探査で注目されているのはマーズ・サイエンス・ラボラトリーと呼ばれるローバーで2012年の火星着陸を目指して準備が進められている.
 このローバーの科学的目的は,火星で生命が発生したのかどうかの決め手をつかむこと,火星の気象状況をつかむこと,火星の地質をつかむこと,そして人が火星に着陸して探査をする準備をすること,の四つである.
 搭載される機器は三つのカメラ,四つの分析計(Spectrometers),二つの放射能検知器,大気圧・湿度・風速・太陽からの紫外線放射を測定する環境モニター装置である.この中で最も重要な機器は SAM(Sample Analysis at Mars)と呼ばれる一連の分析計であろう.質量分析器,ガスクロマトグラフ,同期レーザー分析器で,生命の証拠を探すのが目的である.

 ところで,火星の地形解析と地下構造から,火星に超巨大地すべりがあるという説が出されている(Nature Geoscience,2009,Vol.2,248-249).タルシス高地の南緯20度付近にあるアルシア山の東南東500km付近を頭部とし,有名なマリネリス渓谷が北側の側壁,クラリタス地溝を南の側壁とし,タウマシア高地を末端とする延長・幅ともに約2,500km,すべり面の深さ10〜15km という末端隆起型の地すべりが想定されている.この付近の地下構造は塩と火山性堆積物の互層となっていて,この塩の層がすべり面の形成を助けているのだろうという.

 火星には標高26,000m という宇宙最大の火山であるオリンポス山があるので巨大な地形があっても不思議ではないが,それにしても本当だろうか.

参考ウェブサイト
<http://moon.jaxa.jp/ja/mars/index.html>
*宇宙航空研究開発機構のサイトで様々な情報を得ることができる.

<http://marsprogram.jpl.nasa.gov/msl/>
*NASA の火星に関するサイトでマーズ・サイエンス・ラボラトリーの詳しい情報が得られる.

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