平成30年北海道胆振東部地震調査研究報告会2019/03/24 14:05

2019年3月17日(日),苫小牧市民会館小ホールで表記報告会が開かれました.

札幌駅から苫小牧行きの電車に乗り,午前11時前には苫小牧に着きました.12時半から始まるので,12時頃に苫小牧に着くと良いのですが,普通電車では適当なのがなく,だいぶ早めに着きました. 駅から歩いて市民会館へ行き,会場入口で早めの昼飯を食べました.



胆振東部地震講演会プログラム

報告会のプログラム(案内チラシ裏面)


始めに北大の高橋浩晃氏が挨拶しました.

2018年9月6日に起こったことの資料を収集し,解析して対策を立てる一助にしたいということで,総合調査研究班を結成しました.

今回の災害は,地震と斜面崩壊・液状化といった複合災害であること,斜面崩壊が多発したこと,家屋の倒壊があったこと,石狩低地東縁で予想される内陸地震の規模は M7.7~7.9であるのに対し今回の地震は M6.7でエネルギーがすべて放出されていないこと,などの問題があります.


幾つかの講演を紹介します.


勝俣 啓氏(北大):胆振東部地震震源周辺の地震活動

今回の地震の初期の余震を解析すると,震源で最初に左横ずれ断層が起き,それに誘発されて震源の北と南で高角の逆断層が発生したと考えられます.左横ずれ断層による地震のマグニチュードは5程度でしたが,南北の逆断層が動くことによってマグニチュード6.7の地震になりました.


橋本武志氏(北大):胆振東部地震発生域の地下構造

1999年から2000年にかけて,この付近の地下構造を探るため人工地震による探査が行われました.今回の地震のあとに同じような探査を行いましたが,地震の前後での地下構造の変化は検出されませんでした.


渡部要一氏(北大):胆振東部地震による液状化被害

苫小牧東港では液状化が発生しましたが,対策を行っていたため被害は出ていません.

札幌市里塚の地盤災害は地震により地盤の一部が流動化し,下流で流動化した土砂が噴出し同時に侵食が起きたと推定されます.流動化した土砂は非常に密度の小さい状態にあったと推定されます.三里川を埋め戻した部分で流動化が発生しています.


千木良雅弘氏(京都大学):膨大な数の斜面崩壊が密集して発生した理由

厚真町付近には4.2万年前の支笏降下軽石(Spfa),2万年前の恵庭 a 降下軽石(En-a),9千年前の樽前 d 降下軽石(Ta-d)などが堆積しています.降下軽石層の下底付近は粘土鉱物のハロイサイトが形成されて軟弱になっています.このようなところで河川の下刻により軽石層の下部が切断されたため今回の斜面崩壊が起きたと考えられます.


<感 想>

今回の地震の発震機構が,だいぶ明らかになってきたと感じます.斜面崩壊は主に震央の北西側の地域で多発しています.しかも,崩壊地の全体的な分布は北北西-南南東方向です.この分布は新第三紀層の背斜・向斜軸方向に一致しています.

今回の地震は,2011年の東北地方太平洋沖地震などに比べて最初の縦揺れが非常に激しく,私の住んでいる札幌市の東北郊外でも立っていられないほどの揺れだったのが印象的です.崩壊した降下火砕物の基盤層の地質構造や最初の縦揺れが斜面崩壊にどう影響したのか興味のあるところです.また,火砕物の風化によって粘土鉱物のハロイサイトが形成されていたようで,火砕物が厚く堆積しているところで斜面崩壊が多発しているようです.

その昔,有珠山が噴火した後,火山性の地震が何回も起きて,表層崩壊が多発したことがあります.また,北海道南西沖地震の時も奥尻島などで表層崩壊がかなり発生しました.「畑化作用」と呼んでいました(例えば,山岸ほか,1982,地球科学,36巻,6号).今回は,この「畑化作用」が広範囲に起きたと考えられます.