令和7(2025)年度 日本応用地質学会北海道支部・北海道応用地質研究会:物理探査学会共催 研究発表会 ― 2025/08/03 15:37
令和7(2025)年度 日本応用地質学会北海道支部・北海道応用地質研究会:物理探査学会共催 研究発表会が、2025年7月1日(火)、午後1時半から午後5時過ぎまで開かれました。Zoomで視聴しました。
幾つかの発表を紹介します。
岡﨑健治・川又基人・吉野恒平(寒地土木研究所):
湿雪雪崩を伴う土砂流出を生じた地区の斜面での融雪期における融雪水等の地盤浸透過程の観測
2018年3月9日に国道236号の野塚トンネル付近で、雪崩に伴って土砂流出が発生しました。2021年6月には同じ国道の広尾町側の林内覆道付近で斜面崩壊が発生しました。
野塚トンネル付近での土砂流出では、土砂流出までの累積降水量が280mmで、積雪深が一気に30cm低下しました。国道は厚さ2mの土砂で埋まりました。付近に幾つかの沢がありますが、4沢では崩壊が発生し3沢では発生しませんでした。
崩壊が発生しなかった3沢の2地点で、深度30cmと80cmの土壌水分と地温の測定を行ったところ、初冬期に深度30cmでマイナスの地温となっていました。地中に氷ができることによって降雨の地下浸透が疎外されると考えられます。
髙橋直希・西塚大(株式会社ドーコン):
複雑な岩相変化を示す新第三紀溶岩・火砕岩類の連続性検討−ダム調査における20 m 間隔でのボーリング調査事例−
旭川市南東のぺーパン川でダム調査を行っています。
地質は中新世の火砕岩類で、河床部の地質が複雑でうまく繋がらないため20m間隔でボーリングを行い、3条の高角断層が想定されていました。
そこで、火砕岩類の礫種や組織に着目して岩相区分を行いました。その結果、安山岩質火砕岩類の自破砕溶岩の再堆積物や火砕流の混合物などの分布が明らかになりました。
田近 淳(ジオテック):
泥火山と破砕泥岩:応用地質学的意義と課題
新冠町の泥火山については、千木良・田中(1996)が泥火山とマッドダイアピルとして報告しています。背斜軸上に泥火山が並んでいます。 上幌延や歌志内にも泥火山があります。
泥火山というのは、水と泥が噴出してできた高まりで、異常高圧の地下水の存在が原因と考えられています。
ジャワ島のルーシー泥火山は、火山活動が関係しているのではないかと言われています。ルーシー泥火山については、ナショナル・ジェオグラフィックに記事があります。
2003年の十勝沖地震では新冠町の泥火山のうち、第八丘で亀裂に沿って粘性土が押し出され泥水も噴出しました。
新冠の泥火山の課題は、第二から第五噴出口からガスは出ていますが泥火山が消滅していること、レーザープロファイラーでの連続観測が必要なこと、地下構造の解明をすることなどがあります。
泥火山の災害要因としては、岩盤の劣化、バットランドであることなどがあります。典型的なのは、北越急行ほくほく線の鍋立山トンネルです。
北海道では上部蝦夷層群を掘削した まきばトンネルや夕張トンネル、フラヌイ層やワッカウェンベツ層(マッドブレッチャー)、滝下導水トンネル、道道平取静内線などで鱗片状泥岩が出現し、難工事となっています。鱗片状泥岩に注意が必要です。
宇佐見星弥(北海道立総合研究機構、北海道大学情報科学院)・田殿武雄(北海道大学情報科学院、宇宙航空研究開発機構)・石丸 聡(北海道立総合研究機構):
地すべり変位検出に向けたInSAR処理フローの提案
人工衛星に搭載した合成開口レーダ(SAR)の差分干渉解析(InSAR)は、地表面変位を広域的に把握できます。この場合、マイクロ波が電離圏伝播遅延や対流圏伝播遅延を起こし補正が必要となります。
地すべり変位検出には短波長が有効で、ノイズとして残る長波長を補正する必要があります。
壮瞥町の幸内地すべりでは、地すべり適応型のフィルタを用いて誤差±1mmの精度で地表面変位を捉えることができました。
活動性地すべりが密集している日高地方で同様の手法を用いて画像処理を行ったところ、新たな地すべりを30箇所抽出できました。
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最先端の研究成果からほんわかとした話題まで、いろいろな話が聞けました。Zoomでの視聴は、パソコンでメモが取れるのがありがたいです。