シンポジウム:戒厳令の現場を語る 韓国の大統領選と望むべき日韓関係 ― 2025/08/01 13:10
新外交イニシアティブ(ND:New Diplomacy Initiative)が開催したシンポジウムが、2025年5月8日(木)午後7時から9時まで開かれました。Zoomで視聴しました。
だいぶ時間が経ってからの記事になりますが,概要を記します.
除 台教氏の「激動の韓国政治と次期政権下での日韓外交」が分かりやすくて興味深かったです。
非常戒厳が発令された時に、ND代表の猿田氏が撮影した国会前のホテル周辺の動画が最初に流されました。猿田氏が泊まっていたホテルの前です。
軍隊が出動しているにも関わらず、多くの市民が素手で国会前に集まり、戒厳解除を要求していました。そのほとんどが若い人たちであることに大きな感動を覚えました。韓国の民主主義が生活の中に生きていることを感じました。
この映像を見ることができただけで、このシンポジウムに参加した意義がありました。
最初に猿田氏が話しました。
<猿田佐世氏>
戒厳令の現場の状況 今後の日韓関係
2024年12月3日のユン・ソンニョル大統領による非常戒厳宣告から国会議員が190人の賛成で解除要求を可決するまでの経過を紹介しました。
日本では、反日・親北の進歩派によるデモという言説が流れましたが、実際は韓国の民主主義社会が戒厳令を阻止したのです。また、日韓関係が悪化するという話も流れましたが、韓国の保守的な人びとも日本政府の対応には不満を持っていて、韓国の民主主義の勝利だと考えています。
韓国国民は、軍事政権を倒して民主化を勝ち取ったという歴史から学んでいますし、親の背中を見て子供たちが育っています。自ら民主主義を守るという気概があります。
日本では、憲法に緊急事態宣言を導入するという議論が高まっています。これを国民が止められるかが問われています。
<徐 台教(そう・ていぎょ)氏>
激動の韓国政治と次期政権下での日韓外交
非常戒厳が解除された後、12月14日に尹大統領の弾劾訴追が行われ、大統領職務は停止されました。軍は大統領の命令には従わないと声明を出しました。
2025年1月5日に尹大統領は内乱首魁の嫌疑で逮捕され、1月26日には起訴されました。拘束時間を時間で計るということで3月7日に尹大統領は釈放され、4月4日に罷免されました。
韓国の現状は、保守が弱体化しているため今回の憲法無視の大統領の行動を止めることができませんでした。保守の基本姿勢は、反共のみであることが明らかになりました。
50年間保守政権が続き、人びとは疲労しています。韓国の社会問題としては、自殺率の高さ、極端な競争社会、出生率が0.7と低下していることなどです。
新大統領となったイ・ジェミョン氏には、イ・ジョンソク氏という外交のキーマンがいます。南北関係に強く、北朝鮮の核問題解決のための六者協議を推進した人で、国家情報委員長に就任しました。また、国家安全保障室長には、ウィ・ソンラク氏が就任しました。
対日外交の基調は変わらないと考えます。日本とぶつかるときが必ず来ます。南北関係を動かすときに日本がどう対応するかが問題で、安倍政権との違いを示すことが大事です。
韓国では2016年以降、進歩派が多数を占めています。特に、30才〜50才代に民主派が多いです。イ・ジョンミョン氏は党内では9割の支持を得ています。
そのほか、島村海利氏、三宅千晶氏、元山仁士郎氏の講演があり、パネルディスカッションが行われました。