本の紹介:北海道の防災考古学 ― 2020/10/25 10:42

「北海道の防災考古学」編集委員会編,北海道の防災考古学〜遺跡の発掘から見えてくる天災.みつ印刷,2020年8月.
旧地質調査所に勤務していた寒川 旭氏が,日本文化財科学会と日本考古学協会で「地震考古学の提唱」を行ったのは1988年です.
しかし,この本によると北海道では1983年に,登別市の遺跡で縄文中期〜後期(5千年前〜3千年前)に発生した土石流が生活地を根こそぎ押し流した跡が検出されたといいます.災害による被害を明らかにした事例は,北海道が先んじていたことになります.
この本では,土石流,地震,洪水,地すべり,火山噴火,砂嵐,感染症の事例が,遺跡から明らかにされていることが述べられています.
本文などは234ページですが三段組みで文章の量が非常に多いです.
目次を紹介しておきます.叙述は年代順になっています.
はじめに
序章 遺跡に遺る天災を識る
第I章 旧石器時代の天災痕と遺跡
第II章 縄文時代の天災痕と遺跡
第III章 続縄文時代の天災痕と遺跡
第IV章 擦文時代の天災跡痕遺跡
第V章 アイヌ文化期の天災痕と遺跡
第VI章 時代帰属が不明確な天災痕と遺跡
第VII章 天災の現在(いま)に立ち向かう!
あとがき
考古学関係者だけでなく地質学はもちろん応用地質学,土木工学に携わる人たちにも読んで欲しい本です.