手稲山に登る2013/05/20 17:49

 2013年5月19日(日),ようやく札幌も春らしい気候になってきたので,手稲山に走って登ろうと出かけました。天気は薄曇りで風はなく,暑くも寒くもない絶好の暖かさです。例によって,水とサンドイッチと補助食のカロリーメイトを持ってでかけました。2万5千分の1地形図も持ちましたが,今回はGPSという強い味方があるので,現在位置で迷うことはないでしょう。

 手稲山は前期鮮新世(約370万年前)に活動した火山で,かって北西山腹では手稲鉱山が稼行していて金銀を産出していました。札幌市街から見ると,南東(左)に緩く傾斜した特徴的な姿をしています。この地形を作っているのは「平坦面溶岩」と呼ばれる「鉄平石」様の板状節理の発達した輝石安山岩の溶岩です。

 しかし,市街から見ても北西側は急斜面になっていますし,北東斜面のロープウェイのある付近は,標高650m付近からは急斜面がほぼ山頂まで続いています。この崖は,手稲山岩屑なだれの滑落崖で,その移動土塊はJR手稲駅付近まで達しています。テイネオリンピアは,この地すべり地の中に造られています。
 さらに,琴似発寒川が回り込んでいる南西斜面は,地形図でも崖マークが続いていて,崖の下には巨大な転石群が分布しています。今回登った平和の滝コースは,この転石原を登っていきます。


琴似発寒川右岸の平和3条9丁目から見た手稲山
 テレビ塔群の建っているところが山頂(標高1,23m)で,手前に見える崖は標高800m付近にあるガレ場を作っている崖です。中央の白く細長く見える部分が,山頂溶岩の流走面に相当します。


 短パンに長袖のシャツという出で立ちで出発しました。靴はトレールランニング用のメッシュのアッパーのものです。軽くて良いのですが防水機能はありません。
 
 琴似発寒川沿いの林道は,多少ぬかるんだところはありますが雪もなく,走るのに支障はありません。


砂防ダム付近の琴似発寒川沿いの林道
 ほとんど雪はなく道も乾いていました。まだ,木の芽は出ていません。


 布敷の滝に向かう沢からは,ほぼ全面雪です。トレラン用の靴なのでそれなりにグリップは効きますが慎重に登ります。もう,走るどころではありません。


布敷の滝付近の様子
 まだ,沢には雪が残っていて,その上を歩いて行きます。踏み跡があるので安心ですが,間違えると沢に落ちます。トレランシューズでもグリップは効く程度に雪は柔らかいです。


 沢から離れると一面の雪の斜面です。樹林帯ですので傾斜はそれほどきつくはありません。足跡をたどってひたすら登ります。1時間20分ほどでようやくガレ場につきました。さすがに,ここは雪が溶けて転石が露出していて暖かです。ここで小休止。今日の目的は,ここから山頂直下の崖の写真を撮ることだったので,一応目的は達成です。GPSを見ると山頂の尾根まではもう少し。これは一頑張りして頂上まで行かなきゃと思い出発。


沢から離れて斜面を登る
 頂上のテレビ塔が見えてきました。頂上直下にも柱状節理の発達した溶岩の崖があります。


ガレ場
 雪はほとんどなく,石からの熱が伝わってきて気持ちの良い暖かさです。


ガレ場の上の斜面
 この斜面を登るのに苦労しました。滑らないように,つま先を蹴り込んで登りました。地図上では,せいぜい傾斜28度ですが場所によっては恐怖を覚える所があります。

 12時ちょっと過ぎに頂上に着き,一番北西の神社まで行って崖の写真を撮りました。前回来た時は,霧で何も見えませんでした。
 この日は,羊蹄から暑寒までぐるっと見えます。空は霞がかかったようにぼやけていますが眺めを堪能できました。

 スキーやスノーボードを担いで登ってくる人たちに会います。まだまだ十分にスキーが出来るほどの雪があります。こちらは短靴・短パンという出で立ちですから,さすがに風に当たると寒い。ロープウェイの小屋の影の風の来ないところで昼飯を取ました。
 帰りに雪の斜面を降りることを考えると気分的に落ち着かなくて,早々に降り始めました。


頂上は雪原
 十分スキーが出来る雪が残っています。薄曇りですが風はほとんどなく,気持ちの良い天気です。


定山渓天狗岳と無意根山
 中央の岩山の一番左が定山渓天狗岳で,その左遠くの白い山が無意根山です。


頂上の安山岩露頭
 やや白っぽい輝石安山岩です。おそらく凍結融解作用によって節理が開口しているものと考えられます。これが崖下に落下して岩塊群を作ります。

 一番心配したガレ場の上の雪の斜面は,人の踏み跡を外して歩くと滑らないことを発見して,それほど恐怖を覚えないで降りることが出来ました。それでも,足を突っ張ってかかとを雪に押し込んで下ったので膝の裏の腱が痛くなりました。登りでは気がつきませんでしたが,沢にはヤチブキが花を咲かせていました。


雪の間から顔を出したヤチブキ


 雪のない林道は走って降りました。1時間半ほどで,平和の滝に無事つきました。滝はものすごい水量で,ごうごうと音を立てていました。


平和の滝
 雪解け水で水量が豊富です。