地質技術者とは何者か ― 2006/04/11 22:33
技術とは「自然を支配するために,自然の法則を意識あるいは認識し,それを実際に適用すること,これがつまり技術の本質である.」(平凡社百科事典,1972)
だいぶ古いが技術の定義は大きくは変わっていないでしょう.ちなみに,この項を執筆しているのは,星野芳郎氏です.
応用地質学というか地質学を自然改変(土木工事)に利用する場合の要点は,自然を改変したら自然がどのように反応するかを予測することだと考えています.これが当たれば工事はスムースに行くわけですし,はずれれば工期の大幅な遅れと余分な工事費がかかるわけです.ですから,改変しようとする地質の形成過程を学問成果を取り入れて明らかにし,その地質がどのように応答するかを予測する人を地質技術者と呼んでいいのではないかと考えます.
なお,現在は情報を扱う技術が大きく発展している時代です.これが自然の法則といえるのかは難しい問題のような気がします.情報といえども,その足場は自然にあるのは間違いないのですが,地質学で扱う自然とは違っているように思います.
【END】
だいぶ古いが技術の定義は大きくは変わっていないでしょう.ちなみに,この項を執筆しているのは,星野芳郎氏です.
応用地質学というか地質学を自然改変(土木工事)に利用する場合の要点は,自然を改変したら自然がどのように反応するかを予測することだと考えています.これが当たれば工事はスムースに行くわけですし,はずれれば工期の大幅な遅れと余分な工事費がかかるわけです.ですから,改変しようとする地質の形成過程を学問成果を取り入れて明らかにし,その地質がどのように応答するかを予測する人を地質技術者と呼んでいいのではないかと考えます.
なお,現在は情報を扱う技術が大きく発展している時代です.これが自然の法則といえるのかは難しい問題のような気がします.情報といえども,その足場は自然にあるのは間違いないのですが,地質学で扱う自然とは違っているように思います.
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都市の景観(その2) ― 2006/04/16 15:40

上の写真は東京駅丸の内口から南を見たものです.手前の低い建物は東京中央郵便局で,このくらいの高さだと東京駅と釣り合いが取れていて煉瓦色の駅舎を際だたせていると感じます.
後ろに見えるビルは三菱東京銀行本店で色は東京中央郵便局と同色ですが,スカイラインが揃っていなくて何と形容していいのか分かりません.
都市景観にとって,建物のスカイラインが重要であることは多くの人が述べています.
皇居和田倉門交差点の東に東京海上ビルがあります.このブログの2006年4月4日の記事に付いている写真の左側,茶色の建物がそれです.
「東京海上ビル建設時には,法規内ではあるが高すぎるとして,いわゆる美観論争が起きた.このときは,結局,海上ビルの高さを三〇階から二五階へと削って収めたのだが,(中略)その後はこの地区に,(中略)高層ビルが無秩序に乱立する姿になった.海上ビルの高さは今ではかえって中途半端になり,全体の景観になじんでいない.」(田村明,まちづくりと景観.岩波新書,p75).
【END】
トンネル貫通 ― 2006/04/19 22:01
トンネルが貫通する瞬間というのは,やはりいいものです.どんな困難な工事でもトンネルが貫通して風が通ったときは,それまでの苦労を忘れることができます.
最近はトンネルで遭遇する地質がますます難しくなってきて,施工中に思わぬトラブルが発生することが多くなってきています.
諏訪湖の北にある湖北トンネル,上信越自動車道の日暮山トンネル,北陸新幹線の飯山トンネル,東北新幹線の八甲田トンネルなど多くのトンネルが様々な困難を克服して完成しています.
貫通を一番実感できるのは,両坑口から掘り進んだ二つの工区がトンネルの中で貫通し,風がながれていくときでしょう.一方向から掘っていって,最後に穴が開いて光が入ってきて空が見えたときも感激です.
この貫通の時を楽しみに,粉塵が舞い泥が跳ね返るトンネル現場で作業する人たちは頑張れるのだろうと思います.
それにしても,地質の予測が精度良くできれば,大きくコスト縮減ができた現場は数多くあると思います.地質技術者が,安全でより経済的なトンネル掘削に貢献できることを肝に銘じて,最新の地質の知識を吸収しながら現場に生かしていきたいものと,気持ちを新たにしました.
【END】
最近はトンネルで遭遇する地質がますます難しくなってきて,施工中に思わぬトラブルが発生することが多くなってきています.
諏訪湖の北にある湖北トンネル,上信越自動車道の日暮山トンネル,北陸新幹線の飯山トンネル,東北新幹線の八甲田トンネルなど多くのトンネルが様々な困難を克服して完成しています.
貫通を一番実感できるのは,両坑口から掘り進んだ二つの工区がトンネルの中で貫通し,風がながれていくときでしょう.一方向から掘っていって,最後に穴が開いて光が入ってきて空が見えたときも感激です.
この貫通の時を楽しみに,粉塵が舞い泥が跳ね返るトンネル現場で作業する人たちは頑張れるのだろうと思います.
それにしても,地質の予測が精度良くできれば,大きくコスト縮減ができた現場は数多くあると思います.地質技術者が,安全でより経済的なトンネル掘削に貢献できることを肝に銘じて,最新の地質の知識を吸収しながら現場に生かしていきたいものと,気持ちを新たにしました.
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黄砂 ― 2006/04/22 23:54
黄砂 06年4月22日
06年4月18日に東北以南に黄砂が飛来しました.東京都心では00年4月14日以来の黄砂だった言います(例えば,<http://www.asahi.com/>).
01年4月10日には札幌でも黄砂におそわれ,街の中心に煙幕がかかったような状態になりました(<http://www.asahi-net.or.jp/~gf7m-isi/>.この時期は,黄砂が飛来しやすい気象条件にあります.
ところで,黄砂(eolian dust:こうさ)と言うのは,「アジア大陸内部の乾燥・半乾燥地域(タクラマカン砂漠や黄土地帯など)から,偏西風によって東へ長距離かつ広範囲に運搬される砂塵」(地学事典)です.eolianは,「風で形成された」と言う意味ですので,eolian dustは,風成塵というのが正しい用語でしょう.最近の研究では黄土高原,ゴビ砂漠,タクラマカン砂漠などのほかにチベット高原から飛来するものもあるといいます.
この黄砂のもととなっているレス(Loess)は,「主にシルトからなり,灰色ないし淡黄色,均質で無層理,非固結の堆積物で,しばしば垂直の割れ目が発達した風成の陸上堆積物」です(K.M.Yu,2004).この中には,イライトや雲母類粘土鉱物のほかに微粒の石英が含まれています.
火山起源の石英は電子ビームを照射すると青色帯で強く発光します.これに対して,深成岩起源の石英では赤色帯で強く発光し,熱水起源の石英は緑色帯で強く発光します.このような性質を使って,石英粒子の起源を推定することができます.この電子ビームによる発光を,カソードルミネッセンス(CL)と呼びます.
日本にはロームと呼ばれる細粒堆積物が広く分布しています.一般に,ロームというのは風化して粘土化した火山灰のことを指します.関東ロームがその典型で,箱根火山起源の火山灰です.
ところが,日本でロームと呼ばれているものの中に,大陸から飛来した黄砂堆積物があると言われています.石英の起源が火山岩起源か深成岩起源かが分かり,黄砂のもととなっているレスとの対比ができればいわゆる”ローム”の起源を推定することができます.
最終間氷期が終わり,氷期になったとき,地上の水は氷河となって大陸に蓄積されるので全体に乾燥化が進みます.このような気候条件では,今よりもずっと多くの黄砂が日本に飛来したと推定されます.
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06年4月18日に東北以南に黄砂が飛来しました.東京都心では00年4月14日以来の黄砂だった言います(例えば,<http://www.asahi.com/>).
01年4月10日には札幌でも黄砂におそわれ,街の中心に煙幕がかかったような状態になりました(<http://www.asahi-net.or.jp/~gf7m-isi/>.この時期は,黄砂が飛来しやすい気象条件にあります.
ところで,黄砂(eolian dust:こうさ)と言うのは,「アジア大陸内部の乾燥・半乾燥地域(タクラマカン砂漠や黄土地帯など)から,偏西風によって東へ長距離かつ広範囲に運搬される砂塵」(地学事典)です.eolianは,「風で形成された」と言う意味ですので,eolian dustは,風成塵というのが正しい用語でしょう.最近の研究では黄土高原,ゴビ砂漠,タクラマカン砂漠などのほかにチベット高原から飛来するものもあるといいます.
この黄砂のもととなっているレス(Loess)は,「主にシルトからなり,灰色ないし淡黄色,均質で無層理,非固結の堆積物で,しばしば垂直の割れ目が発達した風成の陸上堆積物」です(K.M.Yu,2004).この中には,イライトや雲母類粘土鉱物のほかに微粒の石英が含まれています.
火山起源の石英は電子ビームを照射すると青色帯で強く発光します.これに対して,深成岩起源の石英では赤色帯で強く発光し,熱水起源の石英は緑色帯で強く発光します.このような性質を使って,石英粒子の起源を推定することができます.この電子ビームによる発光を,カソードルミネッセンス(CL)と呼びます.
日本にはロームと呼ばれる細粒堆積物が広く分布しています.一般に,ロームというのは風化して粘土化した火山灰のことを指します.関東ロームがその典型で,箱根火山起源の火山灰です.
ところが,日本でロームと呼ばれているものの中に,大陸から飛来した黄砂堆積物があると言われています.石英の起源が火山岩起源か深成岩起源かが分かり,黄砂のもととなっているレスとの対比ができればいわゆる”ローム”の起源を推定することができます.
最終間氷期が終わり,氷期になったとき,地上の水は氷河となって大陸に蓄積されるので全体に乾燥化が進みます.このような気候条件では,今よりもずっと多くの黄砂が日本に飛来したと推定されます.
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