2013年土木の日 記念講演会の様子2013/12/02 11:11

 土木の日は,1879(明治12)年11月18日に,土木学会の前身である「工学会」が創立されたこと,十一と十八を組み合わせると「土木」になることから決められた記念日です。そして,毎年11月18日から24日までを「くらしと土木の週間」としていろいろな行事を行っています。

 ちなみに,地質の日は5月10日で,明治初期に来日したアメリカの地質技師,B.S.ライマンの指導で1876(明治6)年5月10日に日本初の広域地質図「日本蝦夷地質要略之図」(縮尺200万分の1)が作成されたこと,1878(明治11)年5月10日に内務省地理局地質課が設置されたことにちなんでいます。
 ライマンの地質図は,北大附属図書館北方資料室で見ることができます。

 土木学会北海道支部の2013年の「土木の日」行事は,11月18日(月)に札幌市のホテルモントレ札幌で,推奨土木遺産認定書授与式と記念講演会が行われました。
 今年の北海道の土木遺産には,旭川市の「春光台配水場」と三笠市の「旧北炭幾春別炭鉱・錦坑の炭鉱施設群」が認定されました。春光台配水場は,現在も使われている施設です。
 北海道では2000(平成12)年度の「小樽港北防波堤」以来,32の土木遺産が認定されています。

 記念講演は「世界の水災害に対する日本の取り組みと水ビジネスの国際情勢」として二つの講演が組まれました。

 竹谷公男氏(国際協力機構):2011年タイ洪水からの教訓 世界の防災イニシアティブと日本のプリゼンス
 2011年のタイの洪水は,7月31日に始まり翌年1月16日に収束したとされています。タイの西半分を北から南に流れるチャオプラヤ川が氾濫したものです。日本企業が多く工場を建設しているこの川の下流域で大洪水になりました。この付近では,河川勾配が1/50,000で,流下能力は毎秒3,000〜4,000立方メートルです。面積当たりの洪水量(洪水比流量)は0.02で,流域面積が約1/10の利根川の1.2に比べると1/60です。
 チャオプラヤ川下流では,首都バンコクを洪水から守るために,上流域に広い氾濫域を設けて放水路で海に水を流すようにしていました。冠水した工業団地はこの氾濫域に建設されていました。
 チャオプラヤ川の上流に二つの巨大ダムがありましたが,このダムが大雨で満杯となってしまいました。ですから,放水しなければならない状況になったわけです。
 JICAは新治水対策マスタープランをつくりました。タイの知見を尊重しながら日本の技術を融合させる内容のものです。この計画のコンセプトは,構造物対策としては貯めて流す,非構造物対策としては考え得るあらゆる対策を取ると言うことです。
 貯めるのは,上流の既設ダムと新設ダム,それに農業地域に氾濫させることにしました。流すのは,既存の灌漑水路,新たな放水路,チャオプラヤ川本川の三つです。
 この計画では,解析プログラムが必須ですが,このような河川で使用できるソフトは日本にはなく,スウェーデンのソフトを使いました。日本の技術では,航空レーザー・プロファイラーが有効でした。高さ方向10cmの精度で地形図を作成しました。

 吉村和就氏(グローバルウォータージャパン):“水ビジネスの世界情勢” 〜勝てる日本の戦略は〜
 アメリカの穀倉地帯である中部では化石地下水を汲み上げていて揚水量に比べて涵養量が少なく枯渇し始めています。オーストラリアでは人口が集中している地域で水不足になっています。フランスは国を挙げて水ビジネスを展開しています。原発汚染水処理でアレバが活躍しています。シンガポールでは雨水はもちろん,下水を処理して飲用水にする計画が進んでいます。
 日本はどうすれば良いのか。技術的には,水道管の漏水防止技術,水の膜処理技術,下水汚泥の資源化技術など優れた技術を持っています。これらの技術と相手のニーズに合った現地に根付いた技術を使い,国が先頭に立って水ビジネスを展開する必要があります。
 インフラの整備だけでなく水管理事業への展開が必要です。


挨拶する木幡行宏(こはた・ゆきひろ)土木学会北海道支部長


受賞報告をする三笠市の下村氏
 今年,日本ジオパークに認定された三笠ジオパークとして炭鉱施設群を活用するそうです。


講演する竹谷公男(たけや・きみお)氏


講演する吉村和就(よしむら・かずなり)氏


コメント

_ (未記入) ― 2014/09/03 11:28

ご紹介頂き、ありがとうございます。

1点誤解があるようなので、追加説明させて下さい。

「このような河川で使用できるソフトは日本にはなく,スウェーデンのソフトを使いました」
とありますが、基本的に私の説明が悪かった、と思いますが、実は日本のソフトを使っています。独法土研の実に優秀な技術者が開発したRRIモデル、というのを使っています。これはご指摘の欧米のMike11(これはスウェーデンではなくデンマークですが)などのようなソフトを全く違う次元で凌駕する、本来は世界標準になれるソフトです。詳しくは
http://www.pwrc.or.jp/yougo_g/pdf_g/y1406-P055-055.pdf
を参照下さい。
Mike11よりも優れていながら、世界標準になっていないのは
1.Mike11などのソフトの、先行者優位を崩せていない
2.その理由のメインは、入出力のインターフェースがまだ市販モデルレベルに来ていない
3.Mike11などのビジネスとしての営業活動に見合う日本側の体制が取れていない、得意でない
といったようなところです。
関連では、
http://www.river.or.jp/01kenshuu/sympo/h24/img/report_04.pdf
も参考になるかと思います。

取り上げて頂いてありがとうございます。御礼代わりに情報提供させて頂きました。
竹谷

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