河田惠昭氏の講演「3.11後の北海道の津波防災」2011/12/16 11:18

 今回の河田惠昭(かわた・よしあき)氏の講演は,第1部「東日本大震災と復興事業」,第2部「これからの地域防災力について」の2本立てで,午後2時から5時までの長丁場でした.
 主催は建設コンサルタンツ協会北海道支部で,札幌のホテルの大広間一杯の300人弱の方が参加しました.


講演する河田惠昭氏

 第1部「東日本大震災と復興事業」
 東日本大震災の復旧の現状は,避難者が震災直後の約47万人から7万1千人強,居住地近傍の散乱瓦礫は撤去完了,主要なライフラインはほぼ復旧,など復旧は進んでいます.
 7月末には復興基本方針が決定され,11月はじめには復興庁設置法案が国会に提出されました.河田氏は「東日本大震災復興構想会議」の委員で,中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」の座長です.復興構想会議は復興庁が発足した時点で「復興事業推進委員会」となり,事業の進捗状況をモニタリングします.約10年継続する予定です.
 専門調査会は2012年夏に最終報告を提出することになっています.その中では,1)首都直下地震の見直し,2)東海・東南海・南海三連動地震の対策,3)2011年台風12号の被害など広域的な対応が必要な災害について議論します.

 河田氏は,これまでの研究過程でいろいろな用語をつくってきました.
 1988年には「減災」という言葉をつくりました.ソフト・ハードの防災対策,災害時のマネジメントにより社会の防災力を向上させるという意味です.
 1995年には「複合災害」,「2003年には「スーパー広域災害」,「スーパー都市災害」ということを提起しました.今回の震災では首都圏で510万人の帰宅困難者が出ました.

 今回の震災の特徴をいくつか挙げると次のようなものがあります.
 釜石市の湾口防波堤は,6mの津波に対応していました.ハザードマップも整備されていました.これらが逆に安心材料となって避難の遅れが出た可能性があります.また,消防署員や民生委員など,住民の安否を確認していた人が360人ほど亡くなりました.
 釜石沖には海底水圧計(津波計)2基とGPS波浪計1基があり,津波の高さを観測しました.気象庁ではこれらのデータで当初予想の津波の高さを修正しましたが,地震により電源が途絶え現地には伝わりませんでした.験潮所の記録はほとんど取れていなくて,5波,6波が来ているはずですが実態は不明です.
 将来予想される南海地震では大阪湾などの内海に津波が入ってきます.波が重なってより大きな波となることが予想されます.
 今回の震災では地震による液状化で建物の杭の抵抗力がなくなり,鉄筋コンクリート構造物が津波でひっくり返されました.津波避難用の建物の基礎構造を考えないといけません.
 今回は午後の,日のある時間帯に地震が発生しましたが,季節や時間帯を含めて防災対応をどうするか考える必要があります.
 復興特区が考えられていますが,既得権をどう保障するのかを考える必要があります.

第2部「これからの地域防災力について」
 防災体制の基本は,自分の命は自分で守る(自助),まちの安全はみんなで守る(共助),自助,共助でできないことをやる(公助)です.その割合は,7:2:1です.今回のような大災害では自治体などは役に立ちません.この場合のリーダーの条件は,専門能力を持っていること,いろいろな人と提携する能力を持っていること,それに人間性です.そういう意味では高齢者リーダーが重要です.また,長丁場で継続的に行うことが必要です.その場合,定番のメニューのほかに進化メニューを加えて目標をつくって到達点をはっきりさせる工夫が必要です.

 地域の誇りを持つことが大事です.例えば,大阪府岸和田のだんじり祭りは,岸和田に住み続けていないと参加できません.そのために若い人が他所へ出て行かないという効果があります.
 2009年台風18号の教訓,2011年台風12号の教訓などをくみ取る必要があります.例えば,テレビでは被害が出ると報道しますが,これから被害が発生する可能性があるという報道は弱いように思います.和歌山県の串本などは,南海地震が起こると5分で津波が来ます.こういう情報をどれだけ早く伝えられるかが大事です.
 奈良や京都は活断層型の地震はないと思われています.北海道などは梅雨や台風が大型化してくる可能性があります.

 災害を減らすには,学び,練習し,身についたかどうかを確かめる,という研修が必要です.

 このほかにもたくさんの話がありました.気迫のこもった講演で,考えを深める助けとなる内容でした.


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