本の紹介:在日米軍2018/03/05 17:45

在日米軍

梅林宏道,在日米軍 変貌する日米安保体制.2017年6月,岩波新書


「日米同盟」の本質的な意味は,「日米軍事同盟」だというのが著者の考えです。軍事同盟としての日米同盟について,具体的な感覚を取り戻すのがこの本の目的です。

日本は「専守防衛」と言いながら在日米軍の攻撃力に依存していますし,「唯一の被爆国」と言いながら米国の核兵器で日本を守っています。

しかし,著者は,軍事力に依存しない安全保障が,現実の国際政治の中で可能であると考えています。


この本では,在日米軍の全体像が具体的に述べられています。その中から浮かび上がってくるのは,在日米軍は,けっして日本防衛のために駐留しているのではないと言うことです。


最後の章では,今後の米軍の動向を踏まえて日本が非軍事の選択に歩み出すことの必要性と可能性について考察しています。

この章は,困難であっても非軍事的安全保障への展望を示しています。


「安全保障とは本来,人々が安心して暮らすことを保障するための人々自身の営みである。」


1998年12月の国連総会で「モンゴル国の国際的安全保障と非核地位」と題する国連総会決議が全会一致で採択されました。この決議のねらいは,「モンゴル国の国際的安全保障」に向けられています。「一国非核地帯となることによって隣国の核の脅威をかわし,自国の独立,領土の保全,そして安全保障を確保しようとしたのである。」


国民が,その意志を持てば非軍事の安全保障は可能であることを具体的に示しています。



本の紹介:ドローンで迫る 伊豆半島の衝突2018/03/06 20:23

伊豆半島の衝突

小山真人,ドローンで迫る 伊豆半島の衝突.岩波科学ライブラリー268,2017年12月.


伊豆半島の南に南北に連なる伊豆小笠原弧は,東から太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈み込んでいるために形成された火山弧です。伊豆小笠原弧をのせたフィリピン海プレートが,北西に移動して本州弧と衝突している場所が伊豆半島です。伊豆半島は火山弧の一部であるため,比重が相対的に小さくてため,伊豆小笠原弧が本州弧に潜り込まずに衝突しています。


この本では,富士山の山頂火口から始まって阿蘇の米塚(こめづか)までの,ドローンで撮影した写真を1頁1枚のカラー写真と簡単な説明で見せてくれます。一番最後はイングランドの風景です。


「付記 国内外でのドローン撮影のためのメモ」は実践的な内容で,ドローン撮影をやってみようという際の参考になります。



過ちとを改むるに、自ら過ったとさへ思い付かば、夫れにて善し、2018/03/14 13:22

表題の言葉は、南洲翁遺訓の第二十七条です。この条で西郷は、間違ったと気がついたら、ぐずぐず考えないで、すぐに良い方へ踏み出すことが大事だと言っています。


こうも言っています。

「過ちを悔しく思ひ、取り繕はんとて心配するは、譬へば茶碗を割り、其の欠けを集め合わせ見るも同じにて、詮もなきこと也。」

(いずれも、西郷隆盛、猪飼隆明 訳・解説、南洲翁遺訓。角川ソフィア文庫 より)

南洲翁遺訓


維新三傑の一人と言われ、陸軍大将兼参議を務めた西郷隆盛の言葉です。初期明治政府の場合、参議というのは集団性の政府首班、つまり今の総理大臣でしょう、と位置付けられます(ウィキペディアによる)。


明治時代が良い時代というなら、このようなことを学び、実践することが大事だと思います。



憲法九条2018/03/23 20:40

日本国憲法

第二章 戦争の放棄

第九条 【戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認】 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

② 前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

第九条の二 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより。国会の承認その他の統制に服する。


自民党の憲法改正推進本部の執行部が有力と考える案として、2018年3月23日の朝日新聞は上の「第九条の二」のような文章を載せました。


この文章、日本語としておかしい。主語は「前条の規定は」ですから、「・・自衛の措置を取ることを妨げない。」で一度、文章を切る必要があります。そうすれば、「・・自衛隊を保持する。」のは国でしょうから、後段の文章に主語が無くても意味は通じます。


「妨げず、そのための・・」の部分は、「実力組織として自衛隊を保持する」ということなのですが、間に幾つも言葉が入っていて分かりにくい文章となっています。

今、憲法を変えるべきと考える人たちの中には、今の憲法の表現が分かりにくいという人がいます。しかし、この自民党案は、いかにも法律の専門家が書いたものという雰囲気が漂っています。


国の基本的姿勢を示す文章としては、品格がないというか情けない感じがします。


そして、もう一つの大物は、自民党改憲案で新設されている「第九章 緊急事態」です。

朝日新聞では、「大規模災害時に政府に権限を集中したり、国会議員の任期特例を書き込んだりする緊急事態条項」となっています。

しかし、自民党の改憲案には、「・・我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態・・」となっています。つまり、主眼は外部からの武力攻撃であり社会秩序の混乱なのです。

現在の災害救助法では第七条で知事などが従事命令や協力命令ができるようになっています。そして、災害救助法では災害時に、ある程度強制的に施設を使用したり物資を保管したりすることができることになっています。


緊急事態が閣議決定され宣言されると、政令が法律と同等の効力を発揮し総理大臣は金を使い放題にできることになっています。これらは国会に事後報告すれば良いのです。つまり、政府が何でも出来るのが非常事態宣言です。

国民は、国などの指示に従わなければならないとしています。


自民党の改憲草案では、「第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。」としています。

しかし、現憲法では、「第十九条【思想及び良心の自由】思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」となっていますが、自民党の改憲案では「第十九条 思想及び良心の自由は、保障する。」です。つまり、「保障することを最大限尊重する」と言うことです。思想・良心の自由はいくらでも制限できるでしょう。


偽の情報を流して得た多数の議席で憲法改悪をすることは、到底許されないと思います。


本の紹介:最強の栄養療法「オーソモレキュラ−」入門2018/03/29 16:45

オーソモレキュラ−

溝口 徹、最強の栄養療法「オーソモレキュラ-」入門。2018年3月、光文社新書。


癌や精神疾患を含む多くの病気や身体の不調の原因が、身体の中での栄養バランスの乱れによるものであるという考えのもと、栄養となる食事やサプリメントを調整することによって、栄養バランスの乱れを整えて病気や体調不良を直すという療法です。

そのための基礎資料として詳細な血液検査のデータを揃え、データを読み取り、その中から身体を正常に戻す治療方法を見つけ出します。


オーソモレキュラ-の訳語は「分子整合栄養医学」です。つまり、分子レベルで、その人はどんな栄養が不足しているのかを判断し、サプリメントを含めて食事を改善して効果を見ながら治療を行います。


もともとは麻酔科の医師であった著者は、奥さんの体調不良がオーソモレキュラ-で劇的に治ったのを見て、オーソモレキュラ-の勉強をはじめました。

そして、「オーソモレキュラ-は、人が本来持っている機能をサポートする、素晴らしい治療法である」という確信を持つようになります。


具体的な症例も十幾つか載っていて、話は具体的です。医者にかかってもなかなか治らない病気が、案外簡単に(病気の本人にとっては簡単でないと思います)直るかもしれないのです。


最後の290ページ以降に、全国の「オーソモレキュラ-療法を行っている医療機関のリスト」が載っています。

一度読んでみる価値のある本です。