本の紹介:ザ・パーフェクト ― 2016/12/09 14:47

土屋 健執筆,小林快次・櫻井和彦・西村智弘監修,ザ・パーフェクト−日本初の恐竜全身骨格発掘記 ハドロサウルス発見から進化の謎まで.誠文堂新光社,2016年7月.
北海道むかわ町で発見された恐竜化石の発掘物語です.
この恐竜化石は,2016年12月現在,クリーニング中でまだ完全に姿を現していません.しかし,かなり良好な状態で全身骨格が発掘されました.
この本の特徴は,発掘に携わった9人に焦点を当てていることです.そのため,時系列的に見るとダブっている記述があったり,むかわ町穂別博物館の売りの一つであるホベツアラキリュウの全く同じ写真が2枚載っていたりします.
しかし,非常に面白い本です.特に佐藤たまきさんが,博物館に収蔵されていた骨を見てクビナガリュウではないと判断した場面が印象的です.
余談ですが,佐藤さんは女性科学者に贈られる猿橋賞を2016年4月に受賞しています.
恐竜の死骸が海の中をだだよっている服部雅人さんのイラストができあがるまでのやり取りも紹介されています.第4部では,服部さんのイラストで様々な恐竜を紹介しています.
執筆者の土屋さんは金沢大学で地質学・古生物学を学び,現在サイエンスライターとして活躍しています.
発掘に関わった人たちの生い立ちや子ども時代をどう過ごしたかが書かれているので,特に,化石や恐竜などに興味を持っている若い人に読んで欲しい本です.
なお,幾つか誤植がありますが,78パージの1行目「北海道開拓記念博物館」は,「北海道開拓記念館」です.
南スーダン、南シナ海,北朝鮮 ― 2016/12/09 20:32

自衛隊を生かす会 編著,2016年11月,南スーダン、南シナ海,北朝鮮 新安保法制発動の焦点.かもがわ出版.
2016年11月21日,駆けつけ警護などの新任務を与えられた陸上自衛隊第11次隊の先発隊が,南スーダンの首都ジュバに到着しました.第11次隊は青森市に司令部がある第9師団の施設科隊員(工兵)約300人と普通科隊員(歩兵)約50人からなり,駆けつけ警護などを受け持つのは普通科隊員です.
この本の「まえがき」で自衛隊を生かす会の事務局長である松竹伸幸氏は次のように述べています.
「この新安保法制の評価は,これまでは法律の条文をめぐって議論されてきましたが,今後はまさに法律が実施される現実をめぐる議論に移行していきます.」(本書,2p)
時宜を得た出版です.
以下,印象に残ったことを紹介します.
総論:新安保法制で別次元に進む自衛隊の海外派兵;柳澤協二(元内閣官房副長官補)
自衛隊の海外派遣は,国連の活動としてのPKOと対米協力としての後方支援があります.南スーダンでは,PKO5原則は完全に崩れています.自衛隊は戦争をすると言うことです.対米協力では今そこが戦場でなければどこでも行けるし,弾薬も提供することになりました.
自衛隊を南スーダンに派遣することによって,日本は何をしたいのかがはっきりしないという問題があります.
南スーダン:九条とPKOの矛盾を真正面から議論すべきだ;伊勢崎賢治(東京外国語大学教授)
1999年に国連事務総長の名で発布された告知によって,もし無垢の住民がPKOの目の前で攻撃を受けたら,PKOはその脅威に「紛争の当事者」として対抗し,戦時国際法・国際人道法に則って「交戦」することになりました.
今,PKOを撤退させるのは遅すぎます.PKOが増員されたので小康状態になるときがあるはずで,その時自衛隊を完全に撤退させましょう.
南スーダン:駆けつけ警護の問題を現場から考える;渡邊 敬(元陸将)
日本が最初に参加したカンボジアのPKOに関与しました.日本は自己防衛のための武器使用と妨害排除のための武器使用を分けていますが,PKOではこのような区別はありません.国連の交戦規定と日本の交戦規定が違っているというのが大きな問題です.安保法制によって,ある地域の治安を維持し安定させるための普通科部隊(歩兵部隊)を派遣できるようになりました.
南スーダン:国際協力NGOの立場から問題を考える;谷山博史(日本国際ボランティアセンター代表)
谷山氏達は2005年に包括的平和協定が結ばれた後に,スーダン南部に入りました.しかし,2011年の南スーダン独立後にスーダンで内戦が起こり,事務所にいた駐在代表の今井高樹氏が孤立してしまいました.この時は政府軍も反政府軍も民兵を動員し,正規兵・非正規兵の区別もありませんでした.事務所は荒らされましたが,今井氏は息を潜めていました.そのうちに兵士達は去って行き,今井氏は国連の非武装の民政機関の人に助け出されました.
今の南スーダンは自衛隊のPKO 派遣原則が満たされていない状況です.
その他にも,現在の国際情勢を考える上で参考になる記事が満載です.上に上げた以外の執筆者と表題を示します.
石山永一郎氏(共同通信編集委員):東南アジアの視点から問題を捉える;南シナ海
太田文雄氏(元陸将・情報本部長):自衛隊は警戒監視に関与すべきである;南シナ海
加藤 朗氏(桜美林大学教授):安全保障の観点から問題を捉える;南シナ海
津上俊哉氏(元通産省北東アジア局長):中国専門家の立場から問題を見る;南シナ海
泥 憲和氏(元陸自三曹):派遣される自衛隊員の立場で訴える;南スーダン
蓮池 透氏(元拉致被害者家族会事務局長):安倍内閣に拉致問題の解決を期待できるのか;北朝鮮
モハメッド・オマル・アブディン氏(東京外国語大学特任助教):戦争現場の人は日本に何を期待するか;南スーダン