初冬のモエレ沼 ― 2015/11/21 13:54
2015年11月5日のことです。
このところ,札幌はよい天気が続いています。今朝は霜が降りましたが,風はなくそれほど寒さを感じません。久しぶりに朝のモエレ沼へ行ってみました。
写真1 南西から見たモエレ山
南西から入る道路の先です。右はテニスコートの建物です。まだ,雪は全くありません。
写真2 モエレ山から見た手稲山
左に緩く傾斜する山頂の溶岩が印象的です。低地側から見るとなだらかな尾根ですが,こちら側の斜面は大規模地すべりですし,反対側の斜面は現在も崩壊が続いていて断崖になっています。
写真3 霧に覆われる低地
この日は,急に寒くなったので霧が発生しました。モエレ山から南東を見た状態ですので,この方向には豊平川捷水路,野津幌川,千歳川などがあります。
写真4 ガラスのピラミッド
11月20日(金)に,ここで大友良英氏らの演奏会がありました。
写真5 「海の噴水」を取り巻くカラマツ林
大分,葉は落ちてしまいましたが,まだ,それなりにきれいです。
写真6 プレイマウンテンから北東を見る。
風がほとんどありませんでした。地を這うような霧が出ています。
写真7 プレイマウンテンからモエレ山を見る
右遠くに藻岩山が見えます。
中垣俊之氏講演「粘菌−偉大なる単細胞が人類を救う−」 ― 2015/11/21 19:24
2015年10月16日(金)午後3時から午後5時まで,表記講演会が,ホテル札幌ガーデンパレスで開かれました。日本技術死刑北海道本部の主催でした。
中垣氏は現在,北大電子科学研究所の教授です。2008年に粘菌(モジホコリ)の情報処理機能についての研究でイグノーベル賞の認知科学賞を受賞したことで有名です。
粘菌の研究をするには,粘菌を育てなければなりません。そのためには,毎日世話をする必要があります。世話をしながら観察していると,今日は元気がないなと言うようなことが分かるようになります。
粘菌の特徴は,中枢がなく自律分散方式で生活していることです。餌を探す場合もネットワークを作って探し,餌のあるところが分かると,そこへ向かう管が太くなります。
このような性質をつかって「粘菌カーナビゲーション」を作ることも考えました。
イグノーベル賞は,「人々を笑わせ,しかる後に考えさせる」というのが趣旨です。授賞式は,ハーバード大学で行われ,自費での参加だそうです。式を含めた行事の世話をしている人の中には,ノーベル賞を貰った人たちもいるそうです。
講演では,随所にシャレが出てきました。日本ではあまり聞けない講演でした。
参考となる本
中垣俊之,粘菌−その驚くべき知性−。2010,PHPサイエンスワールド新書。
中垣俊之,粘菌 偉大なる単細胞が世界を救う。2014,文春新書。
中垣俊之 文,斎藤俊行 絵,かしこい単細胞 粘菌。(絵本),2015,福音館書店。
本の紹介:時を刻む湖 ― 2015/11/23 18:05

中川 毅(なかがわ・たけし),時を刻む湖 7万年の地層に挑んだ科学者たち。2015年9月,岩波科学ライブラリー。
福井県の敦賀市と小浜市の間にある水月湖(すいげつこ)の堆積物のボーリングコアが,年輪年代が適用できない約12,000年前より古い時代の年代目盛となるまでの話です。
水月湖の東には,三方斷層があり西側が沈降しています。これが水月湖で約7万年にわたる年縞(ねんこう)が形成された条件の一つです。そのほかに,この湖は,水深が34mと深いこと,気候変化がはっきりしているために1年のサイクルが記録されやすいことなど,「奇跡の湖」と呼ばれるのにふさわしい,いろいろな条件を備えています。
最初に水月湖の年縞を時間目盛として確立させたのは,現在,名古屋大学教授の北川浩之氏です。北川氏は,日本国際文化センターの助手として就職してすぐに,水月湖の年縞を数える仕事に取り組みました。前半はこの話を中心に進みます。
後半は,2006年に再度,水月湖でボーリングを行い,約7万年分の年縞を得て年代目盛を作った著者自身の話です。国際チームを組んで取り組んだ成果について述べています。完全に連続したボーリングコアを得るために払われた努力も,いろいろな意味で興味深いものです。
全体で122ページの本ですが,内容は非常に豊富でかつ面白く,引きつけられるように読み進めます。表紙帯に「若き挑戦者たちの二十数年にわたる物語」とあるように,特に,これから地球科学を志す人にぜひ読んで欲しい本であると同時に,炭素14による年代測定に興味のある人に読んで欲しい本です。
なお,Radiocarbon 誌のVol55, No4 (2013) は IntCal13 Special Issue でオープンアクセスとなっています。このいきさつについても,この本で述べられています。
下のウェブサイトの Arcives からダウンロードできます。
( https://journals.uair.arizona.edu/index.php/radiocarbon/index )
本の紹介:宇沢弘文のメッセージ ― 2015/11/26 14:25

「大塚信一,宇沢弘文のメッセージ」(集英社新書,2015年9月)と「宇沢弘文,社会的共通資本」(岩波新書,2000年11月)
宇沢弘文(うざわ・ひろふみ)氏は,2014年に86才で亡くなられました。本の帯にあるように「社会を本当によくするために何が必要か?」を考え,実践してきた経済学者です。
大塚氏は岩波書店で編集者として,宇沢氏の著書を多く手がけてきました。
宇沢氏は,東京府立一中から一高に入学しました。医者になるつもりでしたが,東大の数学科ヘ進みました。大学院の特別研究生の時に,数学をやめて経済学へ進むことにします。
その時,宇沢氏は「日本の社会がこれだけ混乱しているときに,一人数学を勉強しているのは人間として苦痛です」と言って,数学科の彌永,末綱両先生を納得させたのだそうです。1950年代前半のことです。
ここに,宇沢氏の真骨頂があります。同じような選択は,これらの本に出てくるだけで二度あります。
あみんの歌「待つわ」に「青く広いこの空 誰のものでもないわ」という歌詞があります。「この空」は,社会的共通資本の重要な要素です。
「社会的共通資本は,一つの国あるいは特定の地域に住むすべての人々が,ゆたかな経済生活を営み,すぐれた文化を展開し,人間的にも魅力のある社会を持続的,安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する。」
その中には,「大気,森林,河川,水,土壌などの自然環境・・・」が,社会的共通資本の重要な構成要素として含まれるとしています。(引用は,いずれも「社会的共通資本,はしがき」より)
このような考えは,現在の社会を覆っている市場原理主義の風潮とは,はっきりと違います。
大塚氏の本の中に,宇沢氏が語ったエピソードして次のようなことが書かれています。
平価切り下げの情報を得たミルトン・フリードマンが,銀行で1万ポンドの空売りを申し込んだところ,銀行のデスクは「それはできません。私たちは紳士ですから。」といって断りました。それに対してフリードマンは「資本主義の世界では,儲けを得る機会のあるときに儲けるのが紳士の定義だ。」と怒っていたと言います。
弱い者いじめがはやる今の世の中で,読む価値が非常に高い本です。






