国道274号沿いの露頭(その1)2015/08/10 20:14

 国道274号は,札幌市の北を東西に通る札幌新道と創成川道路の交点を起点として,釧網本線の標茶駅付近で国道391号と交差する道路である。
 途中,士幌町と本別町の間,茶路川と阿寒川の間が未完成である。延長は約366kmで北海道では最も長い国道であり,全国でも11位の長さである(以上,ウィキペディアと地理院地図による)。

 札幌新道の脇を通っている道は,札幌南インターチェンジの手前で東南東へ向かう。この付近からは,支笏火砕流堆積物の台地の上を走る。直線道路が続く。
 北広島市西の里の住宅街を過ぎた辺りから中期更新世野幌層群の野幌砂礫層の分布域となる。野幌丘陵の南端付近である。

 多少カーブしながら千歳川,旧夕張川の低地へと降りていく。千歳川を渡った辺りから長沼町「マオイの丘公園」のやや先まで,約13kmの直線道路となる。一部泥炭地を含む「沖積層」の分布域である。

 マオイの丘公園付近は中期更新世の広島砂礫層で,馬追丘陵は背斜構造となっているので,東に行くにしたがって古い地層が分布している。丘陵の中心部は,前期中新世の川端層である。


北海道長沼町泉郷断層
写真1 馬追丘陵の泉郷断層
 中央の深鉢を伏せたような丘の右側を泉郷断層が通っている。丘の麓には鉱泉がある。この場所は,国道274号から南に下がった国道337号沿いである。

 坂を下って夕張川流域に入る。JR室蘭線の跨線橋を渡り,夕張川を渡ると川端層の分布域となる。ここでは,千鳥ヶ滝の露頭が見ものである。滝の上公園の信号を左に曲がって駐車場に入り,少し歩くと吊り橋から露頭を見ることができる。

 滝の上公園は,よく整備された公園で,園内を散策すると気持ちが落ち着く。
 なお,滝の上公園の手前に「夕張市農協銘産センター」の駐車場があるが,ここのトイレは使用できない状態となっている。


千鳥ヶ滝
写真2 千鳥ヶ滝の川端層
 砂岩泥岩互層で,地層の底面には流れの痕跡であるソールマークが見られる。現在は,露頭に近づくことはできない。


滝の上公園
写真3 滝の上公園の散策路
 散策路には夕張川を跨ぐ二つの橋がある。この林床は,苔が一面に生えている。


滝之上発電所
写真4 滝之上発電所
 滝の上公園入口付近にある発電所で,1924(大正14)年に北海道炭礦汽船株式会社の自家発電所として建設された。現在は,北海道企業局が運営・管理している。

 千鳥ヶ滝を過ぎた辺りから,「紅葉山図幅」の範囲になる。この付近は新第三紀中新世最下部の滝の上層とされている。そして,道東自動車道・夕張IC付近から古第三紀層となり,紅葉山層,幌内層,石狩層群が出てくる。夕張IC のやや先で夕張川の対岸に見える崖は,滝の上層あるいは紅葉山層である。

 登川トンネルを過ぎて,むかわ町に入る。この付近から稲里トンネル付近までは後期白亜紀の砂岩泥岩互層(上部蝦夷層群)が広く分布していて,地すべりの宝庫となっている。道路は地すべり地を縫うように通っているが,『地理院地図』で「サヌシュベ川」と書かれた付近の,東に凸の緩いカーブは,地すべりの押え盛土工によってできたカーブである。道路沿いに目立った露頭はない。

 稲里トンネルは長さ約1.4kmで,西側から上部蝦夷層群の泥岩類,前期中新世滝の上層の泥岩・砂岩,神居古潭変成帯の泥質片岩(ハッタオマナイ層)と蛇紋岩が分布している。このトンネルは,1979(昭和54)年に導坑でNATM工法の試験施工を行い,その後,本格的なトンネル掘削を行った。

 穂別福山で鵡川を渡る。この先,占冠へ向かう道々占冠穂別線の交点付近まで,神居古潭変成帯で泥質片岩と蛇紋岩が広く分布している。
 国道から外れるが,穂別福山から鵡川沿いに南へ延びる道々占冠穂別線の「八幡の大崩れ」は一見の価値がある。
( http://www.geosites-hokkaido.org/geosites/site0402.html 参照)。
 道々は「大崩れ」のすぐ先で通行止めとなっている。
 遠望するだけであれば,274号の最初のヘアピンカーブの手前から見ることができる。


八幡の大崩れ
写真5 八幡の大崩れ遠望
 左端の尾根の先端に崩壊地が見える。国道274号福山大橋先のヘアピンカーブ手前から見たものである。この崩壊地は,蛇紋岩体の中心付近に位置する。一番右の尖った山頂は,坊主山で蛇紋岩体中の緑色岩である。


夕張岳遠望
写真6 オコタン橋手前から見た夕張岳
 オコタン橋手前に小さな駐車帯がある。ここに車を駐めて,やや札幌側に戻って北を見ると夕張岳が見える。夕張岳の山頂は蛇紋岩メランジュ中の高圧変成岩のブロックである。

 穂高トンネルを過ぎ,ヘアピンカーブを曲がった先に道々占冠穂別線がある。この道々の赤岩橋からの赤岩青巌峡の眺めもよい。赤岩橋を渡ったトンネル入口のすぐ右に小さな露頭がある。おそらくハッタオマナイ層中の凝灰岩のブロックと考えられる。非常に硬質で赤岩トンネル掘削時には,赤岩青巌峡崖面の落石を懸念して割岩(かつがん)工法で施工した。


赤岩青巌峡
写真7 赤岩青巌峡
 勝手に解釈すれば,赤岩というのは赤色チャートのブロックで,青巌というのは緑色岩類のブロックである。南に流れてきた鵡川が赤岩橋のところで西に流路を変える。赤岩青巌峡の南側にはチャートの転石が多く,北側は緑色岩のブロックが多い。赤岩橋から下流を見る。


粘土状蛇紋岩
写真8 粘土状蛇紋岩
 赤岩橋の上流側左岸の崩壊状況である。道東自動車道の穂別トンネル,占冠トンネル,道々占冠穂別線の赤岩トンネルなどは難工事であった。これらのトンネルと違い,この粘土状蛇紋岩の地山を掘削したのが,タンネナイトンネルである。一時は,トンネルが掘れるのかという声も出たと聞いているが,無事貫通した。

 日高町の手前の最後のトンネルが,日高トンネルである。このトンネルの完成は1974(昭和49)年である。おそらく樹海ロードで最初に完成したトンネルである。断面が小さく走行には注意が必要である。

 日高町の道の駅「樹海ロード日高」には,日高山脈博物館がある。地質を専門とする学芸員がいるし,登山情報を得ることができるので立ち寄ってみるのがよい。
( http://www.town.hidaka.hokkaido.jp/hmc/ )

(その2へ続く)


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