報告:第26回寒地技術シンポジウム ・トークセッション ― 2010/12/15 21:37
今回のシンポジウムの始まりは,防災科学技術研究所雪氷防災研究センターの佐藤篤司氏の特別講演と中村一樹氏(北大大学院 地球環境科学研究院)がコーディネーターとなってのトークセッションであった.このトークセッションが,これまでにない内容であったのが印象的であった.
トークセッションのテーマは「ひとを動かす科学・くらしの中で防災情報が活かされるためにー雪氷に関わる教育のヒントー」である.
話題提供は,日本気象協会北海道支社気象キャスターの大久保智子氏,札幌市立宮の森中学校教諭の森山正樹氏,北翔大学准教授の中山雅茂氏の3人である.
大久保氏は気象キャスターとして,テレビで市民に分かりやすい気象情報を伝えることに心血を注いでいる.氏の気象情報は,まず自分で予報を立てることから始まる.このことが,気象情報に迫力を与えている.情報を一般的に伝えるだけでなく,身近なところで,どういうことに注意しなければならないかを伝えているのがもう一つの工夫である.例えば,雨が降って翌日気温が下がると路面が凍結して非常に危険な道路状況になるが,特にトンネルの出口,橋の上,建物の影の日当たりの悪い部分などでの車の運転に注意を呼びかけると言ったことである.
情報を伝える側として,受け取る側の立場になって工夫を凝らしているのが大きな特徴で,「くらしの中で防災情報が活かされる』端緒となる.
森山氏は中学校の授業で逆断層がどうしてできるのかを実験で理解させる授業を例に話をした.透明な箱に堆積物を模したものをつくり,どうしたら逆断層ができるかを実験させるという授業である.試行錯誤をしながらヘラで横から堆積物を押すと逆断層ができるという結果へ導いてゆくというものである.
ここで大事なことは,予想を立ててもらい(モデル化),その予想で逆断層ができるか実際に模型の堆積物で実験し,失敗を繰り返しながら正解に至ると言うことである.ここで分からなかったのが「イメージ化」と言うことである.地球規模の現象を模型という身近なスケールで実験することによって地球の動きをイメージすると言うことだろうか.
このような授業は非常に興味深いもので,まずやってみるという精神を養うだけでも「ひとを動かす科学」の萌芽となり得る.
中山氏は釧路市こども遊学館での経験と現在北翔大学で教えている経験を話した.韓国から来ている学生によると,韓国の教科書には問題の正解が書いてないのだそうである.大事なのはプロセスであるという考えに基づいているからである.教える側が実験が楽しいと言うことを感じて行わないと工夫も生まれないと言うことであろう.
ここでも,自分でやってみて楽しいと感じることの大切さが強調されていた.
寒地技術シンポジウムとしては画期的な催しであった.
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