本の紹介:太平洋 ― 2018/11/15 11:47

蒲生俊敬(がもう・としたか),太平洋 その深層で起こっていること.2018年8月,講談社ブルーバックス.
北太平洋に天皇海山列があることは,知っている人は多いと思います.では,何故これらの海山に天皇の名前が付いたのか?
1952年9月の明神礁の噴火では,海上保安庁の第五海洋丸が噴火に巻き込まれ31名の乗船者が殉職しました.この噴火の時間を捉えていた記録がありました.その記録を持って来日した人は誰だったのでしょうか?
そして,何よりも6,000mより深い超深海で何が起きているのかが次第に明らかになりつつあります.しかし,超深海まで潜った人は,現在まで3人です.宇宙に飛び出した人が500人を超えていることを考えると,超深海が地球に残されたフロンティアであることが分かります.
超深海の調査が進んで,そこに棲むカイコウオオソコエビが高濃度の PCBs (ポリ塩化ビフェニル群)に汚染されていることが明らかになっています.何故,このようなことが起こるのか?
海は,人間が到達することが非常に困難な超深海までつながっていることが分かります.
話は分かりやすく,非常に興味深い内容です.多くの人に読んで欲しい本です.
セミナー「鉄道遺産・鉄道資産を生かしたまちづくり」 ― 2018/11/12 13:39
日本都市計画学会 北海道支部主催の表記セミナーが開かれました.基調講演とパネルディスカッションです.
2018年11月10日午前10時から12時半まで,場所は道庁赤レンガ庁舎の2階会議室です.
10日と11日は北海道鉄道観光資源研究会のイベントが赤レンガ庁舎で行われていて多くの人で賑わっていました.
写真1 道庁赤レンガ正門の看板
手前右は,「北海道の鉄道 過去、現在、未来」展示博覧会の看板です.赤レンガの2階にある二つの会議室を借り切っての催しでした.子供たちも多く来ていました.
この時,赤レンガ庁舎には正面から入れず,向かって右側が入口となっていました.
基調講演は釧路市立博物館の石川孝織(たかおり)さんで,パネルディスカッションのコーディネーターは,寒地土木研究所の松田康明さん(都市計画学会 北海道支部幹事),パネリストは増毛町長の堀 雅志さんと陸別商工会事務局長の杉本武勝さんでした.

写真2 講演する石川孝織さん
東京に生まれ,1998年には JR全線完乗を果たしました.2006年から釧路市立博物館に勤務しています.自宅に実物の簡易軌道の線路を作っています.
北海道の鉄道は,石炭・硫黄や木材など産業の必要から作られました.
道東では,跡佐登(あとさぬぷり)硫黄鉱山のために,跡佐登鉱山から標茶まで鉄道が敷かれ,釧路炭田の石炭を使って硫黄の精錬が行われました.1887(明治二十)年のことです.
その後,木材の輸送のために池北線(当初は網走線)が北に向かって延びていきます.また,釧路の雄別炭鉱や太平洋炭鉱の開発が進み,1921年には根室まで鉄道が延びます.
この当時,道路の状態は最悪で,鉄道の果たした役割は非常に大きかったのです.線路を敷いて馬車で貨物車両を曳くという馬車鉄道も1961(昭和三十六)年まで残っていました.
現在,北海道の鉄道網は大正期の規模に戻っています.地形に沿って走る簡易鉄道は,その地域に住む人々のほぼ唯一の交通手段でした.
残された鉄道の遺構は大きな役割を演じることが出来ます.
(1)鉄道は,その地域の歴史そのものです.
(2)特に北海道は鉄道遺産の宝庫です.
(3)鉄道遺構は文化資源として活用できます.
(4)鉄道遺産によって交流できる人々が増えると同時に,交流に携わる人たちも増えていきます.

写真3 パネルディスカッションの様子
壇上左から,コーディネーターの松田康明さん(都市計画学会北海道支部幹事:寒地土木研究所),石川孝織さん,杉本武勝さん(陸別商工会),堀 雅志さん(増毛町長)です.
パネルディスカッションでは,廃線になった留萌本線・増毛駅を中心に観光客を呼び込む新しい試みが始まり好調であることやふるさと銀河線・陸別鉄道での気動車運転体験などが紹介されました.
鉄道遺産を上手に利用して町を活性化させている貴重な事例です.
生命の星・地球博物館から石垣山へ ― 2018/11/08 13:15
箱根の入口,小田原市入生田(いりゅうだ)にある県立・生命の星・地球博物館へ行って恐竜の骨を見学した後,早川を渡ってアスファルト道を登って石垣山へ行きました.途中から山道になり,再び舗装道路をしばらく歩くと石垣山です.ヨロイヅカファームマルシェでアイスクリームを食べ,帰りは JR 東海道線の早川駅に降りてきました.
「箱根ジオパーク ガイド1」は,このコースの案内です.地球博物館から石垣山までと JR 早川駅までは,それぞれ2.5km です.さすがに下りは早く歩けます.
箱根外輪山の溶岩や火砕岩類の東端が早川河口付近です.石垣山は,この外輪山溶岩の安山岩です.石垣山のある尾根は北東-南西方向に延びています.その北西斜面は急傾斜であるのに対し,南東斜面は緩やかになっていてミカン畑が広がっています.
江戸城の石垣用の大石が,この山から切り出されました.
それと何と言っても,秀吉が小田原攻めの時に,この石垣山に城を築いたことが有名です.城の建設には80日かかったのですが,城が完成した時に周りの木を切って1日で城が出来たように見せたので一夜城と呼ばれています.ここから小田原城までは直線距離で3km ほどです.
図1 地球博物館から早川駅までのコース
ほとんどが舗装道路で,ダンプカーが頻繁に通ります.歩道が整備されているので危険はありません.へピンカーブを過ぎたところから旧道がしばらく続き,箱根ターンパイクと交差する手前で再び舗装道路に出ます.石垣山の向かいにヨロイズカファームマルシェがあります.
石垣山から早川駅への下りは,途中からほとんど車の通らない舗装道路となり,転げるように下っていけます.(Trailnoteで作成.赤が登り,青が下りです.)
写真1 地球博物館のティラノサウルスの骨格標本
大きな広間に恐竜,翼竜,マンモスなどが展示されています.今回の主な目的はこれでした,
写真2 石垣山への途中にある大石
石垣用に切り出されたものの運び出されずに放置された安山岩です.節理の間隔が広いことが分かります.
写真3 ハリガネムシ
屋根の雨を貯める小さな水槽の中にいました.ハリガネムシを見るのは70年ぶりくらいです.昔は水田の用水路に普通にいました.
写真4 旧道への階段
ヘアピンの手前から旧道を歩くことが出来ます.いきなり階段になります.
写真5 刻印・銘文のある石垣用石材
説明版に色々書いてありますが,良く分からなかったです.この左手下に「早川石丁場群」の一つがあります.
写真6 石垣山
建物はヨロイヅカファームマルシェで,その向こうの森が石垣山の頂上です.
写真7 早川駅への下り道
コンクリート舗装の急な坂が,ずっと続きます.通る人や車が少ないのでクモが至る所に巣を張っています.周りは全てミカン畑で,道路にミカンや夏ミカンが転がっています.
平成30年北海道胆振東部地震・地理空間情報活用懇談会 ― 2018/11/07 18:31
平成30年北海道胆振東部地震・地理空間情報活用懇談会
2018年11月6日(火)に札幌市の「かでる2・7」で表記懇談会が開かれました.
Digital 北海道研究会が主体となって開かれた懇談会です. 四人の方が話題提供した後,参加者全員が一言ずつ意見などを述べるという形で行われました.
胆振東部地震の発生後,関係機関で調査が行われた中で地理空間情報を用いた情報がどのように活用されたのか,問題点は何かなどについて話題提供と意見交換を行うというのが開催の趣旨です.

話題提供する喜多耕一氏
開会のあいさつの後,四つの話題提供がありました.
15:10~15:40 話題提供1
「平成30年北海道胆振東部地震における国土地理院の取組み」
国土地理院北海道地方測量部次長 清水乙彦氏
15:40~16:10 話題提供2
「平成30年北海道胆振東部地震における斜面崩壊のトレースと現地での利用」
北海道総合政策部情報統計局情報政策課 喜多耕一氏
16:10~16:35 話題提供3
「 平成30年北海道胆振東部地震における 当社の取組み」
日本写真測量学会会員(株式会社シン技術コンサル) 齋藤健一氏
16:40~17:10 話題提供4
「平成30年北海道胆振東部地震におけるEMTの活動について」
酪農学園大学教授 金子正美氏・他
この後,円卓(角卓)式に机を並べ替えて意見交換を行いました.
以下,感想です.
☆国土地理院の空中写真の撮影と公開が非常に早かったので,初動調査ではずいぶん助けられたと思います.
私は,9月9日に現地を見に行きましたが,事前に空中写真を見ることが出来たので,何処に行けば良いのか,ある程度判断することが出来ました.
☆北海道庁の喜多耕一氏が,地理院の公表した正斜空中写真を用いて崩壊地をトレースしたことが,全体の被災状況を把握する上で非常に役に立ったようです.
☆懇談の中で,地理空間情報を含めた色々な技術を習得するかが重要であるとの発言がありました.情報提供側の進歩は著しいものがありますが,それをどう活用し防災・減災に生かしていくかを考える必要があると思いました.
なお,この懇談会の様子は,すでに Digital 北海道研究会のウェブサイトに載っています.当日の各話題提供者のスライドも見ることが出来ます.
( https://dghok.com/c/news/info の下の方です.)
本の紹介:経済史 ― 2018/10/29 17:36

小野塚 知二,経済史 いまを知り,未来に生きるために.2018年2月,有斐閣
非常に面白い本です.著者の博覧強記ぶりは驚異的です.
前近代の共同体と生産様式から始まって,ネオ・リベラリズムが台頭する現在までを述べています.このように長い目で歴史を見ることで,現在の社会が抱えている問題が浮き彫りになります.そして,未来をどう考えるべきかについて終章で述べています.
前近代,近世,近代,現代という時代の移り変わりがどのように進んだのか,説得力のある内容です.エンゲルスの「家族・私有財産・国家の起源」を思い起こさせる内容です.当然ですが,ずっと精緻で具体的です.
「本書の第三の使い道として、著者が密かに重視しているのは、学校教育をすでに一旦は終えて、現在は社会人として生きている方々に、現在を知り、未来を拓くために、本書を読んでもらうことです。」(本書、iX)
とあります.
グローバリズムとネオ・リベラリズムが世界を席巻している今,多くの社会人に読んで欲しい本です.
「よりよい社会とは何か」と言うことも含めて,よりよい社会を築くために何をしたら良いのかを考える材料を提供してくれます.








